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開店前の下準備②

あ、どうも。商業ギルドに店の登録をして来たテイルだ。


 第2の人生も色々と有りそうで、スローライフとはいかないまでも楽しくやれそうな今日この頃……。


 今ニーニャと商業ギルドでギルド証を受け取り、外に出た所だ。


 しかし、驚いた!ニーニャがそんな凄い人物?ニャン物?だったとは……私も世間知らずもいいところだな。


 いや、言い訳がましいが、ずっとダンジョンと鑑定に追われてマトモに世間の時勢を知らないままで過ごして来た……これからは世界情勢、ま、まあ身近な時勢から知識を得なければならないな。後々商売にも繋がっていくだろうし。


 


「さて、冒険者ギルドにも寄って行こう。一応店を構える事を話しておかないとね。」


 


「分かったニャ、テイルの言う通りにするニャ♪」


 


 あはは、腕に抱きついて来た。私もそのまま手を繋いで、冒険者ギルドへと向かった。


 だが1つ気がかりな事もあった……あのパーティーにだけは会わなければいいなぁ、と思いながら……。


 商業ギルドから冒険者ギルド迄は7~8百メートル位の位置にある。間には一般住宅や店が並んでいる、勿論武具屋もだ。


 


「ニャ~ん、うちの店とは雰囲気が違うニャ。」


 


 気にはなるのだろう。外観や窓から見える中の様子は、飾り気も無く物静かさを漂わせている。まあ、元々武器や防具を売っている店はこんな雰囲気が多い。当たり前なと言えばそうなるだろう、うちが違うのかも知れない。


 更に歩いて行くと、露店があり飾り物が並んでいた。


 


「いらっしゃい。」


 


 女店主で、1人椅子に座っていた。色んな綺麗で可愛らしい飾り物が並べられている。


 


「ニャァ、綺麗なのがあるニャ♪う~んこんニャ堀込が出来ればニャ……。」


 


 さっすが職人魂と言った所か、普通の女の子とは違うのかな?捉えるところが違っている。


 その中で私は首飾りを見つけた。


 4種類あったが、その中で猫の立ち上がった姿形に前足に宝玉を持った飾りを見つけた。決して高価な宝玉では無いが、気に入ったので買う事にする。


 


「これをください。」


 


「ニャ!?」


 


「まいど、銀貨二枚になります。」


 


 なかなかの値段だが、出せない程じゃない。もっと儲かった時には良いものをプレゼントしたい……。


 


「ニーニャ、これを…。」


 


「ニャ!?あたいに?」


 


「うん、今はこれが限界だけどね。」


 


 そう言って私はニーニャの首の後ろに手を回し、首飾りをを着けた。


 


「ニャァ、可愛いニャァ、ありがとうニャ、嬉しいニャ……♪」


 


 ニーニャが私の胸に顔をうずめて来る。私もそっと抱き締めた。


 


「あらあら、良いわねぇw」


 


 女店主が、ニヤニヤとぼやいてきたので道端だったと気付いた。2人とも赤面して慌てて離れる。周りの目がこっちに注目だったのは言うまでもなく……。


 


 と、取り敢えず冒険者ギルドには辿り着いた。


 相変わらず、ニーニャは嬉しいらしくネックレスを眺めている。


 


「さ、入ろう。素材なんかも売りたいしね。」


 


「ニャ、そうしようニャ。あたいはダーリンに付いていくニャ。」


 


「あ?は!?あはは、分かったよ“愛しの奥様”」


 


「ニャァ、テイルニャァ♪」


 


 済まない、おのろけだらけだ。気を取り直してと……。


 私達はギルドの扉を開けて、中へと進んでいく。


 正面奥が受付カウンターがあり、受付嬢が3人並びその後ろを2人往き来している。


 入って右側にはクエストボードがあって、色んなランクのクエストが貼り出され冒険者達が行こうと思うクエストを品定めしている。中はテーブルや椅子も多数あり、酒場としても機能している。そこで出会いがあればパーティーを組んだりと、縁が出来る事も度々……私には縁があったり切れたりと、複雑な気分だ……。まあ、誰もがそうなのかも知れないが……。


 


「あ、テイルさん。いらっしゃい、茸クエストがまた有りますよ。どうですか?あら?」


 


 私のルーティンが分かっているだけに、気を回してくれたのだろう。だが、今日は違っている事に気付いた様だ。


 


「あ、はい。今日はクエストを探しに来たのではなく、素材を引き取ってもらいたいのと別の話があって。」


 


 そう聞いて、いつもの受付嬢が横から声を掛けて来た。


 


「テイルさん、そのお連れの方は?」


 


 私にべったりとくっつき、ニコニコ微笑んでいる獣人が1人……。


 


「ああ、すいません。家内のニーニャです。」


 


 それを聞いた途端、受付嬢はおろかそこに来ていた冒険者全員が、首の骨大丈夫?とばかりに勢いよくこちらに振り向く!


 


「「「「「な、ナニィッ!!」」」」」


 


 ギルドの外まで聞こえる程の絶叫が響いていた……。


 


「き、奇跡だ……。」


 


「なんでアイツなんだ……。」


 


「あたしも彼氏欲しい……。」


 


「この世の終わりだ……。」


 


 悪かったな!そこまで言うかっ!確かに奇跡には近いかも知れないが…。


 い、いや、それは置いといてっ!


 


「きょ、今日は、素材を引き取って欲しいんです。」


 


 私はマジックバッグからボス猪の肉と、ジャックウルフの肉や牙や刃、シールドジャックウルフの甲殻や肉等をカウンターに出した。


 


「え!?これを全部、テイルさんが?」


 


「あ、いえ、ほとんどが妻のニーニャが倒しました。」


 


「テイルニャは、シールドジャックウルフと一騎討ちで倒したニャ。惚れ惚れしたニャ。」


 


「いやいや、周りのジャックウルフを抑えてくれてなかったら大変だったよ。」


 


「そ、そんな事はないニャ……(照)」


 


 あ~、余りのおのろけで周りの視線が物凄く痛い……。


 


「ウ、ウフフ……では、確認しますのでお待ち下さい。」


 


 奥へ素材が運ばれていく。


 


「Dランクとは言えどシールドジャックウルフを討伐出来たんですね?でも何故そんな状況に?」


 


 それはそう思うよな、事の次第を話す事にした。


 ニーニャに助けられ、一緒に店を構える事になり、ケットシーが助けて欲しいと飛び込んで来て……シールドジャックウルフの群れと対峙し、ボスを討伐してケットシーの村を救い、店の裏に村を移動して、さっき商業ギルドで登録を済ませて来たと……。


 


「え!?じゃあ、あのクエストが解決したんじゃ……?」


 


「あのクエスト?」


 


 クエストボードから張り紙を1枚、受付嬢が剥がして来る。それにはケットシーの村からのジャックウルフの討伐依頼が書かれてあった。


 


「あ、でも、ジャックウルフの群れになってるから、Eランクの依頼になってます。ボスのシールドジャックウルフが居たなんて、Dランククエストに格上げしますね。それを達成したと。」


 


「あ、はいそうです。受注する前にクリアしちゃいましたね。」


 


「いえ、緊急の事でしたし、Eランククエストでしたのでほとんど誰も受注する冒険者が居なかったのも事実です。ですので、テイルさん達の受注として報酬も受け取って下さい。当然の事ですから。」


 


 シールドジャックウルフの分も含めて、報酬をもらう。素材の分も、買い取り金が出た。ほぉ~~~なかなかの額じゃないか!


 


「ニーニャ凄いぞ、捌いてくれたお陰で売値が上がったよ。」


 


「ニャるほど、良かったニャ。」


 


 ニーニャも感心していた。実は、自分の食いぶち分にしていただけで売った事はないらしい。なので、ここまで値段が付くとは思わなかったのだろう。


 それをバッグにしまい、聞いてみたい事を話してみた。


 


「ギルマスは居ますか?前の事で聞きたいのですが……。」


 


「あ、あの件ですね。ちょっとお待ち下さい。」


 


 受付嬢が奥へ呼びに行こうとした時だった。


 


「よう、テイル。生きてたか?」


 


 後ろから声を掛けられ振り向くと、ギルマスである


“リューク”がいた。


 


「ああ、死にきれずに地味に生きてるよ。それより、何か進展はあったかい?」


 


「いや、奴さん達もなかなかでな。証拠品も出て来ないし、尻尾も掴ませてくれん。他に被害にあった冒険者はなん組か居るんだが……。」


 


 リュークも、焦れったく頭を掻いていた。リューク程の人間でも証拠が掴めないなんて……それだけ用意周到……と言う事か……。


 他にも被害者が居るなんて……。だが、アイツらだけは許せん……然るべき処罰を受けさせないと……。


 


「なあ、それよりテイル。お前にべったりくっついている女はもしかしてホワイトパンサー種か?」


 


「あ、ああ、そうだが?」


 


「…なあ、まさかとは思うが……名前をニーニャとか言うんじゃ……。」


 


 リュークが額に汗をかきながら恐る恐る名前を確認してくる。別に隠すつもりはないので、しれっと返事を返す。


 


「そうだよ、武具職人のニーニャだ。」


 


「な!?…あ、あの……伝説級の“流浪の武具職人ニーニャ”か!?!?」


 


 ギルマスの開いた口が塞がらない、目もだが。受付嬢もやっと気付いた様だ、滅茶苦茶驚いている……仕方がないか、来る事がない者がしれっと現れるんだから気付く訳がない。


 


「お、おい、あそこに居るのが伝説の武具職人だってよ!」


 


「ま、まじかよ、その武具を装備すればランクが上がる程強くなれるらしいぞ!」


 


「あ、あたしも武具を売って貰えるかな?」


 


「馬鹿、相当の値段が張るらしいぞ!でも、1度で良いから装備してみたいよなぁ。」


 


「で、なんでそんな凄い人がアイツにべったりなんだ?」


 


 あ~そこを突かれると、ちょっと自信がない。


 


「フンッ、ニャ。あたいはテイルの凄さに気付いたニャ、ニャからダーリンと一緒に武具屋を開く事にしたニャ。開店したら見に来てニャ!」


 


「ホントに夫婦らしいぞ……マジか。」


 


「なんて羨ましいヤツだ。」


 


「風上にも風下にも置けんヤツだ。」


 


 私は一体どこに居ろと?


 


「ね、ねぇ、そのお店は何処にあるの?」


 


 女性の魔道師が場所を聞いてきた。


 


「街の外になります。森の手前ですが、お時間があったら寄ってみて下さい。」


 


 私は丁寧に返事をした。後々お客さんになってくれるかも知れないし。


 


「お、おい、今度行って見ようぜ。」


 


「そうだな、見るだけでも価値はあるよな。」


 


「もし、予算が合えば欲しい武器があるんだよなぁ……。」


 


 周りがざわついている。いい反応の様だ、これなら生活費は稼げるか……。


 


「な、なあ、いつ開店なんだ?」


 


「あ、ああ、ええっと、明後日位には。」


 


 ギルド中に歓声が起こった。ニーニャ効果が凄すぎだよ、私の立場なんてぽっちも無い。元々そうであった事ではあるが、少し寂しい気がした。


 


「…テイルニャ、あたいはテイルが頼りニャ、素敵なダーリンニャ…テイルのいニャい生活はもう考えられないニャ……ニャから自信持ってニャ……。」


 


 ニーニャ……。私が寂しげな表情をしていたのを気付いたのだろう、慰めてくれた。


 


「ありがとうニーニャ。私には出来すぎた奥さんだよ。」


 


「テイルニャ……。」


 


 お互いに抱き締めていた。周りは、私達の店が出来る事を喜んでいたようだが……私達は……。


 


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 


 


 私達は街から戻って来た。結局あのパーティーに遭遇する事は無かった。何故かホッとしている自分が居た。店に入ると、変わった事が起きていた。


 


「「「「お帰りなさいニャ~。」」」」


 


「へっ!?」


 


「ニャ!?」


 


 私達は同時に驚いた。接客係のケットシー達が、雄2匹がスーツ姿で雌2匹がメイド姿でお出迎えしてくれたのだ!マジカッコ可愛いっ!


 これにはさすがのニーニャも撃沈した。両目が完全にハートマークになっている!


 


「ニャァ!可愛いニャァ~~!!」


 


 思わずケットシー達に抱きつくニーニャ。


 


「ニャ、ニーニャ様苦しいニャ~。」


 


「凄いじゃないか、よく思い付いたね。」


 


「武具屋のイメージを変えてみようと思いましたニャ。楽しんで、武具を選んで貰えると良いニャと思ってニャ。」


 


 雌のミリスが答えてくれた、ナイスなアイデアだ!


 


「良いアイデアだね、これでいこう。お客さんも楽しんで貰えると思うよ。」


 


「ニャった~!」


 


 採用されたのが嬉しかった様だ、2匹で両前足の肉球を合わせて喜んでいる。


 


「ああっと、ゴメン。悪いがナクトとニャースに手伝って欲しいんだ。」


 


「ニャ!?」


 


「どうしましたニャ?」


 


「うん、店内側の武具を並べ替えようと思うんだ。」


 


「ニャ!?今からですニャか?」


 


「そ、私も勿論手伝うよ。武器側、防具側、それぞれランク毎に分けたいんだ。」


 


「ニャんと!?」


 


「そんな事が出来ますニャか?」


 


「ああ、それにはニーニャの力も借りたい。どうかな?」


 


「当然ニャ!あたいの武具はランクがあるニャ。何故なら、冒険者のランクに合わせた武具を作るからニャ。ある程度は汎用性があるニャが、あたいの力作は一点物ニャ。ニャから、ランク分けしてあればお客さんが選びやすいニャ。」


 


「「「「ニャる程……。」」」」


 


 4匹とも感心してしまった。


 


「分かりましたニャ!全員でやりましょうニャ!」


 


「そうニャ!工房の仲間にも手伝って貰うニャ!」


 


 雌のセルカが呼びに向かった。


 


「じゃあ始めようか!」


 


「「「「「はいニャ!」」」」」


 


 ニーニャの指示で並べ替えが始まった、順番にやろうとなり、まずは武器からとなった。協力して並べ替えていく。店の入り口側にEランクの武器、防具を。


 そこから順にD・C・B・A・S・SSと並べていく。


 SとSSランクの品物だけはカウンターの後ろ側に展示している。更にはニーニャの力作もだ。この辺の武具は時価になるだけに、高価と言う噂が広まったのだろう。価値が価値だけに仕方がない部分だろう。ちなみにE~A迄のランクのダンジョンで、ゲットして彼等に取られずに済んだ武具もあったので、カウンターの後ろ側に展示する。これで更に映えるだろう。


 


「終わったニャ~!」


 


 丁度夜になっていた。皆が腹ペコだ。


 


「今日はみんなでここで食事しよう。発表したいこともあるしね。」


 


「!?」


 


 ニーニャ以外の全員が首を同時に傾げて、?マークを浮かべていた。それでも腹ペコには勝てない、みんなで食事の準備をした。


 


「いただきます!」


 


「いただきますニャ~!」


 


 全員、食事にありつく。焼き魚とスープ、猪肉のソテーが並んでいた。


 


「ス、スゴイ……美味しいですニャ!」


 


「こんなの初めてニャ!」


 


「喜んでもらえて良かったたよ。」


 


 全員がほぼ無言で食べている、いや食べる事に集中している。


 見ていて楽しい……。


 


「さて、みんなに発表があります。」


 


全員の顔がこちらに振り向いたところで、話を切り出す。


 


「店名が決まったので、発表します。」


 


 全員が唾を呑み込む音を響かせる。私に注目が集中する。


 


「店の名は、“マリアージュ”冒険者にあった武具を作りたい想いを込めて、この名前にしました。どうかな?」


 


「良いですニャ。」


 


「この店らしい名前ニャ。」


 


「お似合いニャ。」


 


「この店以外には合わないと思うニャ。」


 


 気に入ってもらえた様で何よりだ。


 


「じゃあ、明日には看板を上げよう。」


 


 みんなで頷きあって、その日は解散した。


 私とニーニャは、2階でラブラブと夜を過ごした……明日も準備に忙しいというのに……と思われても、気持ちに勝てない私である………………。

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