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人ならぬ猫助け?と人生初の討伐!

やあ、鑑定スキルしかない“テイル”だ。


 人生何がどうなっていくのか分からない、SS冒険者パーティーには追い出されるし、次に組んだパーティーには迷惑が掛かってしまったし……いや、このパーティーだけは今でも仲良くしてもらっている。有り難い事だ。そして、チートだろ!とは言わずにはいられないホワイトパンサー種獣人の武具職人でAランク冒険者の“ニーニャ”と出会うなんて……。


 更には一緒に店を開きたいと来たもんだ!


 ん?……キャラが変わったか?その辺は気にしないでくれ、本人すら分かってないからな。


 で、彼女の何がチートかって………全部だ。どうしてって、私に勝てる所が1つもない……。ボスモンスターは一撃だし、木はバタバタ切り倒してしまうし、日数が掛かる筈の店舗が数時間で出来上がるし……冒険者ギルドでランク交換が出来るか聞いてみようと思う。彼女の方がよっぽどSSランクに相応しいと思うのだが……。


 まあ、ここで文句を言っても始まらない。店の準備の続きをしよう。


 あ、そう言えばいくら街の外でも商業ギルドに登録しないと店を開く訳にはいかないな。準備が出来たら、ニーニャと一緒にギルドへ行こう。店を開く前に営業を止められたら叶わないしな、登録しておけば良いこともあるだろう。情報収集も出来そうだし、悪いことはない。


 よし、後で街に出掛けるとしよう。


 後は……開店前なんだが、緊急事態がやって来た……。


 


「ニャ~~ッ!た、助けて欲しいニャ!」


 


 と思い切り勢いよく扉を開けて入り込んできたのは、小人?いや、身長は確かに膝より上だが体型や姿は猫!?しかし、二足歩行?服も着ていて言語を話す種族“ケットシー”だ。


 ま、まずは椅子に座らせ落ち着かせる事にした。


 でないと、慌てていてまともに話を聞く事が出来ない。


 


「一体どうしたんだ?」


 


「む、村が襲われてるニャ!助けて欲しいニャ!」


 


 頭をテーブルに擦り付ける程切迫して頼み込んでくるこの猫族は雄の“ナクト”、200m程森の奥に村を構えていたらしい。ジャックウルフとボスのシールドジャックウルフが集団で襲っているらしい。


 さすがに私もそれを聞いては捨て置けない、ニーニャを呼びに工房へ。


 


「ニーニャ!作業中にゴメン!緊急事態だ、猫助けに行きたいんだが手伝ってくれるかい?」


 


「ニャ?ニャんて?」


 


 何事かと刃物を研いでいる手を休めて話を聞いてくれるニーニャ。


 


「それは大変ニャ!すぐに行こうニャ!」


 


 ニーニャはハンマーを手に取り扉へと向かう。私もと思うが……勢いは良いものの、私は戦えるのか……?


 武器どころか殴り合いすらない。自分が惨めになる、こう言うときになんの役にたてない自分が。


 握った拳に力を込める……だけど……武器の使い方は素人だが、何も無いよりはましだ、鎧は鉄又は鋼……といきたい所だが重すぎて動けなかったら困るか…ここは自分の革の鎧で……と、今並べていた剣と盾を借りて行こう。


 私は店内に飾った武具を見回す。


 


「ニーニャ、剣と盾を借りていいかい?」


 


 ニーニャの顔を見ると頷いて同意してくれた。


 


「勿論ニャ、テイルも戦える事を示してやるニャ!」


 


「は…ははは…大丈夫かな?」


 


「大丈夫ニャ、あたいは意外とテイルは動きが良いと思うニャ。」


 


 その言葉に私の方が驚いた。1度も戦闘なんてしたことの無い私が?


 


「い、いや、戦った事なんて無いんだけど?」


 


「あたいはそうは思わないニャw」


 


 ニヤリ顔で応えるニーニャに不思議に思う私……が、まずはそんな話をしている場合じゃないな、盾は丸く腕に装着出来るサイズを選び、剣はどうするか……。


 私が選ぶのに躊躇しているとニーニャがひと振りの剣を出して来た。


 


「これニャらどうニャ。」


 


 私は受け取ると、鞘から剣を抜いてみる。刀身は細身で片刃だが、鏡の様に綺麗に研ぎ澄まされている……太刀と言う武器だ。ショートソードやロングソードの様に両刃で刀身が幅広く、叩き斬る感じと違い振り抜いて切り裂く感じで切れ味に着目している武器である。その刀身に見惚れてしまった。


 


「す、凄いな…ニーニャ、これ良いのかい?」


 


「良いニャ、テイルニャら使いこなせるニャ。」


 


「あ、ありがとう。でも気に入ったのは確かだけど使いこなせるかはちょっと……。」


 


 確かに1発で気に入ってしまったが、かといって使いこなせるかは別問題だと思うが……と言っても今はそんなことは言っていられないか。


 


「よし、行こう!ナクト、案内してくれ。」


 


「こっちニャ!」


 


 ケットシーのナクトが先頭になって森の中を進んで行く。その後を私達は離れないように森の中を走って進んで行った……。


 


 村は話の通り、大変な事になっていた。ジャックウルフの集団に柵を破壊され、建物を壊し逃げ惑うケットシー達を追いかけ回している。何匹かは武器を手に対抗してはいたが、多勢に無勢で追い払う迄には至らない。しかも、村の外側にボスのシールドジャックウルフが仁王立ちで様子を見ている。


 この魔獣達は、森に住む一角でジャックウルフは牙も鋭いが、両前足の左右に上に湾曲したナイフの様な刃がある狼だ。ボスのシールドジャックウルフは、そのジャックウルフに頭、両肩、背中、後ろ足のつけね部分に堅い甲殻を装備しているように外皮が生えている魔獣である。


 


「ガァッ!」


 


「イ゛ニ゛ャ~~~!」


 


 その中で2匹の雌と子供が、ジャックウルフに刃の餌食になりかけていた!親子だろう、懸命に子供を抱いて守ろうとしている。


 ジャックウルフが、右前足を振りかぶった時だった……。


 


「ニャストォォォォッ!」


 


「!?…ギャワッ!」


 


 そのジャックウルフは何が起きたのか理解できずに、強烈な痛みと共に村の外の木に激突していた。


 


「ははは……相変わらずの威力ですな…。」


 


 私は思わず苦笑いする。強いわ…マジ強いわ……ニーニャがハンマーを振りかざし、ジャンプして横殴りにウルフを殴り跳ばしたのだ。


 


「怪我は無いニャか?」


 


 仁王立ちで周りのウルフ達を睨みながら、親子に声を掛ける。


 


「あ、ありがとうございますニャ!」


 


「あたい達が惹き付けるから、建物に隠れるニャ。」


 


「ニャ、はいニャ!」


 


 親のケットシーは急いで仔猫の襟首を咥えて4本脚で走って行く。それを他のジャックウルフが襲い掛かろうとする。


 


「そうはさせないニャッ!」


 


 ニーニャは間髪入れずにハンマーをそのウルフに叩き込む!


 


「ギャフッ!」


 


 またもやホームランッ!てなもんで、村の外に吹き飛んでいた。


 


「あたいは雑魚を片付けるからテイルはボスを頼むニャ!」


 


「は?…え!?…ええっ!」


 


 な、ナニィッ!!わ、私がボスと!?……む、ムリムリムリッ!確かにDランクのモンスターなんですけど、戦った事なんてありません!まあ、戦ってる所は何度も目の当たりにしてるけど……。私に出来るか……と言って嫌とも言える訳が無いし……。


 


「わ、分かった、やってみる。」


 


 私は太刀を抜いて構えながら、ボスのシールドジャックウルフに近付いて行く。それに呼応して、ウルフも前に出てきた……。


 周りも戦いを辞めて、私とシールドジャックウルフを見つめている……何か一騎討ちになってしまった……双方とも見守るように全員こちらを見ている……照れるじゃないか……し、失礼。


 


 ここまで来たらやるしかないか……シールドを前に出し、攻撃を受け流しながら太刀を振るうつもりで身を低くして構える。まあ、太刀はこんな使い方はしないだろうが、なにぶん戦闘は素人もいいところだ。片手剣の使い方をしても許してほしい……。


 ボスウルフも姿勢を低くして力を溜める、飛び掛かる気が満々である。


 しばし、にらみ合いが続いた…どこか弱点は無いのか?……う~ん見る限り見当たらないのは私だけ?


 そしてウルフの方が先に動いた!私に突進してきて目の前で飛び上がり前足の刃で切りつけて来た!私は辛うじてシールドで攻撃を受け流す。やはり強い!


 ボスウルフは一旦着地して身を翻し、続けてジャンプして飛び掛かって来た。連続攻撃だ!私もウルフが着地した所を狙い、太刀を振るうが盾の様な甲殻に阻まれダメージを与える事が出来ない!


 ウルフはスタミナがあるようで、ジャンプを繰り返しながら襲い掛かって来る。くっ、盾でかわすのが手一杯で攻撃に転じる事が出来ない!段々とかわしきれずに腕や足に切り傷が出来ていく……このままじゃ……!?ま、まて、思い出したぞ!最初のメンバーと森中のクエストで遭遇していた事が。


 と、それに気付いたときボスウルフが一際高いジャンプで、襲い掛かって来る所だった!咄嗟に体が動いた!


 


「くっ……お前の…弱点は……ここだあぁっ!」


 


 私は太刀の剣先を真上に垂直に向けて腕を突き上げる!


 


「ギャハァッ!」


 


 私の剣先は腹部から背中へと突き抜けていた。シールドジャックウルフはしまった!とばかりにもがくが、四肢は宙を舞いそのまま力尽きていた。


 私は太刀を地面に降ろすと、ウルフから太刀を引き抜いていた。私も急に力が抜けてその場に座り込んでしまった。


 しかし……勝った……倒した……例えDランクのモンスターだとしても私にとっては紛れもなく初戦闘で初勝利なのだ。何か…達成感と言うか…充実感と言うか…私でも戦う事が出来た……そして……。


 


「か、勝った……勝ったぞォォッ!」


 


「「「「「「ニャ~~~~ッ!」」」」」


 


 私が座ったままで空に向かって叫ぶと、周りのケットシー達が両前足を高らかに上げて勝利の歓声を上げる!


 


「やったニャ、テイル。あたいの言った通りニャ!」


 


「はは……かなりヤバかったけどね…。」


 


 私は完全に力が抜けていて、ニーニャに抱えられて立ち上がった。


 残っていたウルフ達は、ボスが倒された事が分かると、森の奥へとバラバラに散って行った。


 


「でも……参ったな……。」


 


「しょうがないニャ、怪我猫は居ても死んだ猫は居ないニャ。それだけでもラッキーニャ。」


 


 確かに……村は滅茶苦茶だが、全員を助けられたのは運が良かったと言わざるを得ない。私が倒された時の事を……考えたくないな。


 だが村を建て直すと言っても………いや、まて……。


 


「なあ、ニーニャ。」


 


「なんニャ?」


 


 怪訝に私の顔を覗き込むニーニャ。


 


「私達の店の傍に引っ越せないかな?」


 


「ニャ!?ニャんて?」


 


 私もニーニャの顔を見る。


 


「どうせ村を建て直すのなら、まだ危険度が少ない私達の所が良いんじゃないかなと思ってさ。」


 


「ニャるほど……。」


 


 ニーニャもケットシー達を見ながら考えている。


 と、三匹ほどこちらに歩いて来た。


 真ん中に威厳があって白髭が長めで皺が多い猫族が。両側には槍と剣をそれぞれ持った若い男性猫族がいた。その後ろに助けを求めて来たナクトがいた。


 


「この度はありがとうございますニャ。一族を代表してお礼を言いますニャ。」


 


 見た目から長老さんだなとは思っていたので驚きはなかった。


 


「いえ、ナクト君が来なかったら私達も助けに来ることは無かったです。皆さんが助かって良かった。」


 


「救ってくれてありがとうございますニャ!」


 


 ナクトも横からお辞儀してくる。ほんとの貢献者は彼だと言うのに……。


 


「でも、村事態は……。」


 


 私が問い掛けると、長老も周りを見回してため息をついた。


 


「確かにニャ。しかし何とかなるニャろうて。」


 


 村長も分かっているのだろう、どうしようもない事を……。両側の2匹もうつ向いていた。


 


「村長、村を引っ越したら駄目でしょうか?」


 


 駄目元で話してみるしかない。私は場所を変えることが出来ないか誘ってみた。


 


「む、村を引っ越すニャと?」


 


「そうです、私達は森の外に店を構えるつもりです。裏側に泉があり、工房があります。その間の土地に村を建て直したらどうでしょう?お互いに利があると思うのですが?」


 


 私のこの誘いには想定外だった様だ。3匹は顔を見合せて驚いている。


 


「私達も村の再建を手伝いますし、今お話しした様に店を開く予定です。何匹か雇いたいとも思っています、一緒ならば危険なモンスターに一緒に立ち向かう事も出来るでしょう。どうでしょうか?」


 


「ニャ!それいいニャ!ケットシー達が手伝ってくれるニャら助かるニャ!」


 


 ははは、ニーニャは話しに食いついたな。でも、お互い助かる事だけは間違いない。


 それを聞いてか、3匹は顔を見合せて頷きあった。


 


「その申し出、お受けするニャ。宜しく頼みますニャ。」


 


「決まりだね、テイルと言います。宜しくお願いします。」


 


「村長のリカルドですニャ、宜しくですニャ。こちらはラームとルドーですニャ。」


 


 私は握手して、仲間?が出来た事が嬉しかった。いやあ、仲間は沢山いる方が安心する。繋がりが多いほど良いものだ……あくどい奴と繋がるのはご免だがね……。


 一度、村長達も他の猫族達に話をしに戻って行った……。説得するのは大変だろうな……反対する者も出てきそうだし今の場所に思い入れがあるかも知れないし……。


 


「テイル殿!引っ越しの準備を始めますニャ!」


 


 え、ええっ!!最早っ!?は?なに?即答で決まった?みんなが考えてた?マジで?タイミングが良かっただけ?


 ……面白い種族だな……。私もナデナデ、モフモフしたいところは抑えてはいるが……。


 だがこれで良かったのだ、ここに村を再建しても単体になったジャックウルフが個々に襲って来るとも限らない。危険を承知で村を作るなんて愚の骨頂だ。それなら、私たちと一緒に仲良くやった方が良い。その方がみんなも安心だし、落ち着くだろう。不安なままで生活なんて続かないからな……。


 お、みんな手押しの4輪の荷車に荷物をまとめたようだな。


 


「準備が整いましたニャ。」


 


「じゃあ、行きましょうか。」


 


「出発ニャ!」


 


 全員が雄叫びをあげて並んで歩き出す。私たちは先頭になって森を歩いて行く。さあて、戻ったら忙しくなりそうだ。やる事を色々考えながら楽しんでいる自分が居た……こんな気持ちになったのは初めてだな……第2?第3?の人生楽しまなくてはな………………。

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