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婚約者が浮気相手のリストを見せて、相談したいそうです。

作者: Ash

「エリーーー!」


 そう言って走り寄って来るのは、私の婚約者のサミュエル。手には何か紙を持っています。


「どうかしたの、サミュエル?」


 サミュエルが騎士科二年に在籍しているように、私も淑女科二年に在籍しています。科は違っても、同じ学園なので、会うことには不便はありません。

 地方では騎士学校と女学校が別々にありますが、王都の学校は文官科を中心として、王都に住む者向けの学校――学園(庶子も入学可)だけです。文官科は貴族当主の推薦(次期当主)か実力がなければ入れない超エリートだけが集まり、淑女科は他の科の男子生徒のエスコートやダンスなどの授業の相手を集めた授業料無料の学科。婚約者が文官科や騎士科に在籍する女子生徒以外は、高位貴族や文官の妾目当てです。

 婚約者のいない高位貴族の令嬢は家庭教師を雇うか、伝統ある女学校に通って、間違いのないように過ごしています。庶子の場合は使用人学校に通います。

 おかげで、宮廷も、どの高位貴族の家も貴族の使用人がいます。ただし、大半は庶子ですが。

 横道に逸れましたね。

 私の婚約者が通う騎士科は王都にある騎士学校という立場で、王都に住む貴族で文官科に入れなかった者が入る科です。

 その為、玉石混淆なのですが――


「これを見てくれ! 恋愛ゴッコが好きな令嬢のリストだそうだ!」

「え? それって、浮気相手のリストってこと? それを婚約者である私に見ろと?」


 予想外の物を持ってきました。浮気相手リストなんて・・・。


「折角、手に入れたんだよ。後腐れなく遊べるそうだから、エリーにも見せたくて」


 投げたボールを取ってきた犬のような表情で言われました。

 恋愛ゴッコをおままごとだと思っているのでしょうか?

 でも、後腐れなく遊べるって言っていますし、おままごとじゃないはず。

 なんで、婚約者である私が浮気相手の相談されなきゃいけないのよ?


「私、あなたの婚約者なのよ?」

「そうだけど?」

「・・・」


 わかっていない可能性が高い気がします。肉体言語に特化したサミュエルの中で、おままごとを後腐れなくできるって、ことなんでしょう。

 渋々、差し出された紙を受け取って目を通しました。

 そこに書かれている名前は、お母様と参加したお茶会だけでなく、淑女科のお茶会でも取り上げられている名前でした。


「サミュエル! これのどこが後腐れなく遊べるっていうのよ」

「え? だって、そう聞いたよ」

「後腐れ有りまくりのリストよ。これに比べたら、淑女科の妾目当てなんてまだ可愛いものよ」

「ええ?!」

「これ、婚約者のいる高位貴族に妻狙いで近付いて、愛人になった令嬢のリストよ」

「えええー?!! 嘘だろ――?!」


 お茶会では非常に有名な噂ばかりで、淑女科のお茶会でも見習ったら妾どころか、興味が無くなれば年金(たった1年の妾でも家+家政婦と侍女が死ぬまで雇える額は貰える)もなく捨てられる、と情報共有されていました。

 殿方同士ではあまり共有されない尻軽令嬢の情報ですが、夜会や街中での同行者のことをお茶会では面白おかしく囀られます。一人と親密すぎると思われても、複数と親密すぎると思われても、話のネタにと、鵜の目鷹の目で同行者はチェックされているのです。

 獲物にされた家は否定していても、婚約が破綻したり、色々とわかるものです。

 人の噂は良くないと言いますが、自分の息子や兄弟が尻軽令嬢に引っ掛かる可能性を避けられるのなら、ここだけの話は必要な情報です。


「それに、低位貴族の跡取りでもない、騎士科のあなたなんか、はなも引っ掛けられないわ」

「じゃあ、これって役に立たないのか?」

「モテ期も何もないわよ」

「婚約者なのに酷い!」

「酷いのは、婚約者に浮気相手のリストを見せるあなたでしょ。――でも、これは問題ね」

「え?」

「あなたみたいに、このリストを鵜呑みにした人が被害に遭うっていうこと」

「俺は相手にされないんだろ? なら、被害も出ないじゃないか。驚かすなよ、エリー」

「文官科の学生や騎士科の高位貴族以外でも、結婚に焦った女性は誰でも罠に掛けるわよ」

「そりゃあ、大変だ!!」

「急いで職員室行くわよ、サミュエル」

「いいけど、これはエリーが持ってよ」

「? どうして?」

「怖くて持っていられない」

「・・・」


 私に浮気相手リストを見せておいて、怖いって・・・。




◇◆◇




 職員室でサミュエルはリストを貰った経緯やクラス内に流れるリストの噂を先生たちに説明しました。

 先生たちは真っ青になって、その後の授業は取り止め。急遽、HRの時間になり、リストに関する聞き出しと注意喚起がおこなわれました。




◇◇◆




 職員室から淑女科の教室に戻る途中、サミュエルに尋ねました。「どうして、あんなリストを欲しがったの?」と。

「だって、俺は女慣れしていないだろ? エリーのことも、他の男友達と同じ扱いしてるし。文官科みたいにできないし」

「でも、教室まで送ってくれているじゃない」

「だって、それは婚約者だし、当然のことだろ」

「あなたが何を基準にしているのか、わからないけど、こうやって送ってくれるだけで、良いと思う。これ以上、やったら、逆に女性にだらしないって思われるし、騎士としてどうかと思う」

「え? そうなの?」


 今日も私の婚約者は脳筋ポンコツでバ可愛い。


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