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仇の正体

 ポイズンファング盗賊団に気付かれないように通常のルートではなく、遠回りになるが西側から森に回り込むように進み、監視をしているパーティと合流した。


「奴らの動きに変わりはないか?」

「ああ、ちょこちょこ出入りが有るだけだ」


「よし、手筈通り入口の見張りを"赤い風車"と"醜女のヒモ"の兄さん達に任せて、全員で突入する」


「「「おう」」」「「「了解」」」



「逃げ出した奴らは頼むぞ」

「解りました」



静かに皆は洞窟の中に入って行った。



「あのギルド長が一緒なんだ、うち漏らしなんて無いから安心しな、"醜女のヒモ"の兄ちゃん」


「そうですね」



ギルド長達が突入して25分が経った。



「皆さん、かなりの数の気配がこっちに向かって来ます」


「ほんとか?」


「ポイズンファングの仲間かな?」

「それは判りませんが、魔物ではないようです。来ます」




「お前達、ここで何をしている?」

「ん~、冒険者か……討伐にでも来たか?」



現れたのはアニメで見たことのある、一般的な盗賊のファッションで身を包んだ人達だ。ざっと50人はいる。


「やれやれ、俺達を捜し出す事に躍起になっている伯爵から大金をせしめる為に、娘を拐うのを手伝いに来てみたらこの有り様かよ」


ギルド長達が出て来るまではもう少しかかるか?時間稼ぎに、かるくハッタリをかましてみるかな。


「俺達はここの監視役だ、もうすぐギルドからたくさんの討伐隊が来る。諦めた方がいいよ」


『醜女のヒモの兄ちゃん、なかなか言うね』という顔で"赤い風車"のウィークスさんが俺を見て唇の端をつりあげた。


「はっ、この人数に勝てると思っているのかよ?応援が来る前に片付けてやるよ」


「醜女のヒモの兄ちゃん、ここは死ぬ気で頑張るしかねぇ」

「はい、頑張ります。サユリア行くぞ」



盗賊達と話している間にサユリアには地と風の精霊を付け、俺はカシュミュルダットスパイダーの卵から造った特製の糸を取り付けたドリル弾を10個出しておいたので、準備はバッチリだ。


「野郎ども、伯爵様の御令嬢を拐う小手調べだ。かるくやっちまおうぜ」


「ヒャッハー!」「女はブスだが、俺は下がありゃ良い」

「俺は袋をかぶせる」



オーク顔とオーガ顔の男達が勝手な事を言っている。そんな事をやらせるかよ。



サユリアがわざと大袈裟な魔法詠唱をすると、土埃が舞い上がって盗賊達に降りかかる。


「うわ」「ペッペッ」「クソ」「うざったい」


俺とサユリアは普段から色んな状況を想定して、どう動くか決めて有る。俺のサインを見たサユリアは忠実に実行する。


盗賊達が土埃に気をとられている隙に、俺の後ろから静かにドリル弾が低空飛行で盗賊共の脚に襲いかかった。


「ぐぎゃ」「痛てぇ」「あ、足が」「なんだ?」

「どうなっている?」



ドリル弾が盗賊の脚に食い込み突き抜け、次の奴の脚にと食い込んで行く。俺が放った10個の糸付きのドリル弾は5人一組にして糸で繋いでいく。


10束の盗賊巻き巻きが地面に転がった。サユリアが土魔法で作った手枷を一人一人に嵌めていく。


「さ、さっすが~。ホントの事を言うと、もうダメかと思ったぜ。ブスの姉ちゃん、助かった、ありがとよ。噂通り、いや、噂以上だぜ」


盗賊どもが「痛い痛い」と喚きちらして煩いので、ついでにゴルフボールくらいの球を作ってもらい口の中に押し込んでやる。


それでも「う~ん、う~ん」と煩いので殴って気絶させようとした時、後ろから声がかかった。



「いったいなんの騒ぎだ?」


振り返ると、洞窟の中にいたポイズンファングの連中を捕まえて来たギルド長達がいた。



「あっ、ギルド長。こいつら、そこの連中の仲間で合流して伯爵のお嬢さんを拐かすつもりだったみたいですぜ」


「何だと、ふざけおって。きつく取り調べてやらねばいかんな。ところでウィークス、これはお前がやったのか?」


「とんでもねぇ、そこのブスの姉ちゃんでさぁ……おっと、姉ちゃん、ゴメンよ」


「いいえ」


「そうか、実力は本物か。お手柄だ」


ギルド長は俺にウインクをしてニャっと笑った。なんか見透かされているような……。




洞窟内にいた連中と合わせると全部でポイズンファングを80人捕まえる事が出来た。


街にポイズンファングを護送する時、ギルド長に許可を貰って、ちょっと偉そうな奴に聞いてみた。教えてくれるとは思えないが。


「左手の甲に魔法陣のある魔道師だぁ?」

「そうです」


「知らねえなあ、そんな奴。……お前、その顔からするとグロリア族だろう?オレは子供の頃は山に住んでたんだ。グロリア族の子供達ともよく遊んだんだぜ」


「そうでしたか」


「懐かしいなぁ……醜女の姉ちゃんよ、手に負えないヤマや特別な仕事の時は助っ人を頼む事が有る」


「えっ?」


「暗殺組織、ドゥ・イットの連中だと思うぜ」

「あ、ありがとう御座います」


「ふん、柄にもねえ事をしちまった」


伯爵の娘を狙おうとしてたんだ。死罪か鉱山送りだろう。サユリアに何があったか想像が出来た男の罪滅ぼしか?



自分の娘を拐う計画が有ったと知ったパルシモン伯爵は、案の定キツい裁断を下し、そして領内にいる盗賊は虱潰しに捜しだし殲滅せよとの命が下った。



ポイズンファングの討伐に対してパルシモン伯爵から特別報酬が出され、俺達は金貨15枚を受け取る事が出来た。


「もう行くのか?」

「はい、シャレイド山の神殿に行きたいので」


「そうか、またな」


「ユタカ君、化粧品を忘れないでよ」


「分ってますよパメラさん、次の街に着いたら必ず送ります」





プロメードの次の街はライデリードだ。ダイヴェル王国領を出るには、あと4つ経由しなくてはならない。


「サユリアの仇がどんな奴かは判ったが、暗殺組織では真っ当な俺達とは接点が無さそうだな」


「確かにそうです」


「しかし運とか縁という物は不思議な物なんだ。何処でどう繋がっているか判らない」


「はい、ユタカ様に買って頂いたから盗賊討伐に参加できたのですから」


「ゆっくり聖地を目指そう」

「はい」




そうさ、運命なんてどう転ぶか判らない。俺が勇者召喚されたのだって……。



いつも読んでくださりありがとう御座います。


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