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盗賊団とサユリア

 次の街はプロメードで、移動日数は5日程度になる。ほとんどアイテムBOXに荷物は入れるので、買った馬車は馬一頭引きの物にした。


鋼で板バネを造り、足回りをちょっとばかり改造したので、なかなかの乗りごごちだ。


街道に出ると直ぐに微妙な雰囲気の集団とすれ違った。馬車は綺麗な模様が施された豪華なものだった。取り囲むように護衛の冒険者らしき者が10人の一行だ。


「かなりの手練れ揃いですね」

「……そうだね」


持っているスキルが盗賊系や暗殺者の使う様なスキルばかりの連中だ。馬車に乗っているのは何者だろう?



冒険者風の男達は、サユリアを一瞥すると僅かに口の端を吊り上げたが、直ぐに俺達など眼中にないと言わんばかりに元の能面の様な顔に戻り通り過ぎって行った。


奇妙な連中の他は特に問題なく、たまに襲って来るグレートウルフなどを狩って予定通り5日後にプロメードの街に着いた。



宿の亭主に馬車と馬を預かってもらう所を紹介してもらい、ギルドに狩った魔物を売りに行く。


「解体場は裏に回った所に有りますので、そちらにお願いします」


「解りました」


「あのう……もしかして"醜女のヒモ"のユタカさんですか?」


なんでその呼び名を知っているのでせうか?


「何処でその呼び名を?」


チラッとサユリアを見て。


「あっ、ダイモのギルドからお手紙が来ています」


差し出された封書には、"醜女のヒモ"のユタカ君へと書かれていた。


カーラさんだ。俺達より早く着くとは……さてはギルドの従魔を使ったな。全く、職権乱用だろ。


内容は化粧品の注文だった。クリームとシャンプーのセットを50組と書いてある。毎度ありがとう御座います。


ついでに営業をしておこう。


「よかったらこれを、クリームとシャンプーの試供品です。皆さんで、お試しを」


「えっ、そうなの。じゃあ、試して見るわ」

「宜しくです」



ーー


お金には余裕があるので、この街に長くいるつもりは無い。ダイヴェル王国領からは早く出たいので、1つぐらい依頼をこなしてから移動しよう。



宿に戻り、夕食を食べるつもりだったのだが食堂は満席だった。直ぐ隣が酒場だったのを思い出したので行くことにする。


中に入ると直ぐに声をかけられた。


「よお!"醜女のヒモ"の兄ちゃん」


誰だよ、全く。声がした方を見るとオーク討伐の時にいたパーティ"七転び八起き"の人達だ。


「なんでここにいるんです?」


「商人の護衛でここまでは来たんだよ。そんな事よりこっちで飲めよ」


「いえ、迷惑でしょうから」


「そんなこたぁねえぞ坊主。今、丁度そこの姉ちゃんの武勇談を、こいつらから聞いていたところだ」


「強いんだってな」

「そんでもって坊主はヒモなんだろ?」


「ふ~ん、そうなんだ。結構いい男だし、アタイのヒモにならないかい。面倒見てあげるわよ」


「おっと、羨ましいぜ。この店でNo.1のマリーにそこまで言わせるとは、男冥利に尽きるな、面倒見てもらっちゃえよ」


この店は娼館も兼ねているらしく、綺麗な女の人がたくさんいた。その中でもマリーさんは確かに抜け出た存在だ。


大胆にVの字にカットされたドレスから、「こんな狭い所は嫌よ」と強く主張している豊満な胸と大人の女性の香りは、俺にとっては凶悪な精神攻撃系のスキルに等しい。


俺、的場豊は16歳。もちろん女性経験は無い。全てに興味が持てなくなって何もしてこなかったわけだが、さすがに目の前に生身でこんな物が有ったら、フラフラとついていって溺れてしまった事だろう。


なぜ踏みとどまれたか?って言うと、気配察知や危険察知の能力の乏しい俺でも判る様な、ピリピリとした空気が後ろから伝わって来るからだ。


「ユタカ様、あちらに席が空いています」

「そ、そうだね。では皆さんご機嫌よう」


「なんだよ、付き合い悪いな」



ふぅ、危なかった。



「お腹が空いたね、お腹いっぱい食べよう」

「はい」





ーー



翌日ギルドに顔を出して依頼掲示板に直行する。大した依頼が無ければ直ぐに次の街に行っても良い。




先に入ったサユリアが掲示板を見入っている。気になる依頼でもあったのかな?



「どうした?」


「ユタカ様、お願いが有ります。この依頼を受けて頂けませんか?」


サユリアが言った依頼は"ポイズンファング"という盗賊団の討伐依頼だった。


……サユリアと関わり合いがあるって事だよな。


「分かった受けよう」

「ありがとう御座います」


無理に理由は聞かないで、サユリアが話してくれるのを待つ事にした。


討伐に参加するのはギルド長をはじめ、俺達以外にDクラス以上のパーティ7組で、今日は会議室でギルド長から討伐の説明受ている。 


"ポイズンファング"は全国を股にかける盗賊団で、3番目に大きな盗賊団らしい。今回はここ、プロメードを含む西方に2つの街を領地としてるパルシモン伯爵の肝いりで、この地域のアジトが見つかったので潰すという事だ。



「現在、北の山の洞窟は"ホークアイ"のパーティが監視している。決行は明日の朝1番に行う各自準備を怠らないように」



「「「おう」」」「「分かった」」



「君が"醜女のヒモ"か、噂は聞いている。明日は頼りにしているぞ」


「は、はい」


ギルド長に呼び止められるから何かと思えば、すっかり変な呼び名が定着してしまった。


「ユタカ様、事情はあるかと思いますが、そろそろ前面に出てはいかがでしょう?」


「大丈夫だよ、気にしないから」


「そうですか、解りました。……ユタカ様、何も聞かず私の我が儘を聞いてくださり本当にありがとう御座います。ポイズンファングは私の両親を、いえ村の仲間全員を殺した盗賊団なのです」



そういう事だよな、やっぱり。


「両親を手にかけた男は、魔道師の格好をして左手の甲に変った魔法陣の紋が有る男でした。あの日、あんな事が無ければ私は両親と一緒にシャレイド山の神殿に行く事になっていたのです。ユタカ様がこの様な姿の私を買ってくださった時から、こんな日が来るのではないかと……」


それであの時……。


「でも、その魔道師の男がいるとは限らないのだろう?」

「そうですね……」


「それでも、手がかりは有るかもしれないさ。気を落とすなよ」


「はい」



なんとかサユリアには仇討ちをさせてやりたいな。




いつも読んでくださりありがとう御座います。


面白いと感じられましたら、下段に有ります評価の☆星やブックマークを付けて貰えると嬉しいです。



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