表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

実験開始

 商業ギルドにもらった地図を頼りにパレカーブの村が在った場所に着いた。見事に冷えて固まった溶岩に覆われた大地が広がっている。


それは独特の形状の岩石が散らばり、さまざまなギザギザ紋様がどこまでも続く。初めて見るのであれば死の地と思うのも無理はない。


かつて木々に覆われていた山も、溶岩が流れ固まった場所を除き火山岩によって埋め尽くされ神殿など何処にも見えなかった。


「この辺の全てがパレカーブの村だったところだ」


とは言っても元の世界のように正確に測量されて、面積などは決まってなどいなかっただろうが。


「も、元に戻るのですか」

「時間はかかると思うが大丈夫だよ」


自然に任せれば早くても100年以上はかかるだろうが、この世界には魔法があるのが強みだ。


もともと溶岩は地の底の栄養を持って上がって来る。そして溶岩で埋まった土地はかつて木々や草花、苔などが生えていたので混ざった物だ。この状態の土壌を利用しない手は無い。



「先ずは土に戻さなくてはいけないが、何をしているのか見られたくないので土魔法で壁を造るよ」


「解りました」

「壁を造るだけでも何日もかかりそうだけどね」

「頑張ります」




土の精霊達の力を借りてサユリアが厚さ1m、高さ10mで上部に通気用の窓口の有る壁を造っていく。取り敢えず一辺が1kmの正方形にする事にして、2日に一辺を造るのを目標とした。



サユリアの頑張りのお陰で9日間で造る事が出来た。


「お疲れさん」

「い、いいえ……」


かなり疲れただろうな。


「明日はゆっくり休もう」

「ありがとう御座います」




今度は俺が頑張る番だ。サユリアにはゆっくり休んでもらって、俺はモリブデン製のドリル弾とエクスプロージョンの巻物を大量に作成に取り掛かる。


草木が早く根付ける事が出来る環境にする為に、土壌が作られるのを促進させなければいけないので、固まった溶岩を大雑把でよいので壊すかヒビを入れたいからだ。


今回は深くまでドリル弾を溶岩に食い込ませたい。風の精霊の魔法力では効率が悪いのに気が付いたので、サユリアと協力してゴーレムを造る事にした。


あとは温泉を掘るようにボーリングマシンの鉄柱で掘った穴にエクスプロージョンの巻物を落とせばいい。



ゴーレムが鉄柱を溶岩に突き刺し、自らサイドステップで回り鉄柱を回転させて行く。鉄柱の先には改良したモリブデン鋼で造ったドリルがついている。少しずつだが確実にそれは食い込んでいった。


土壁が壊れないように距離をとって、深さ5mで直径5cmの穴をおよそ50mの間隔で土壁で囲った1キロ平方メートルの溶岩の大地に空けていく。


気の遠くなる様な地道な作業だがゴーレム達は黙々とこなしていく。等間隔で綺麗に穴が空け終わったのは15日後になった。





「この穴に巻物を落として、一斉に爆発させる」

「はい」



魔力を流す為のカシュミュルダットスパイダーの糸を付けた巻物を全ての穴に入れていく。


使うのはプラチナゴーレムを破壊する事が出来たオーガファイターの魔石で作った巻物だ。



「準備OKだ」

「オッケーです」


つい癖で出てしまうので、サユリアにも元の世界の言葉が伝染ったようだ。


目の前におよそ260本の魔力を伝える糸の束があるのだが、一遍に爆破させてはかなりの衝撃になるだろう。街からは遠く離れているので問題は無いと思うが、ここは噴火したシャレイド山の麓で大地をあまり刺激したくはない。なので1列ずつにする。


この世界では地震も噴火も初めてという事なので、今度起こるのは遥か先の事になると俺は思うのだが……。



「やるぞ」

「はい」


土壁の外に出て1列目の糸に魔力を流す。


[ボガッ][ドゴッ][バーン]…………[ガガーン]


こもった爆発音が次々と起こっていった。音がおさまったところで土壁の中を見に行く。



場所によって厚さや硬度が違うのだろう、掘り起こされた所もあれば表面だけが飛び散り亀裂が入っただけなどさまざまだ。


「いい感じだ」

「そうなんですね?」

「ああ、これで良い」


残りの糸にも順番に魔力を流し爆破していった。かなりの良い結果だ。


次は土になるのを促進させ質の良い土壌にする為に一工夫だ。


溶岩には養素がふんだんに有るといったが、窒素だけは無いので大気中の空気から取るしかないのだ。それをやってくれるのが苔と土の中にいる菌だ。


そこでここに来る前にエルフの森から大量にアイテムBOXに入れて持ってきた物だ。


「ユタカ様、この生き物は何ですか?ちょっと気持ち悪いですね」


「ランブリだよ」

「ランブリ?」


「こいつが栄養の有る土を作ってくれる」


ようは元の世界のミミズみたいな虫だ。土をまいたところからランブリの群れは土の中に直ぐに潜っていった。



エルフの森から持ってきた土をまんべんなく薄く敷き詰め、持ってきた落ち葉を上に重ねる。本当にアイテムBOXは便利だ。


「結構しんどいな」

「ホントですね」


「これもゴーレムにやらせよう」


これには2日かかった。



厳しい環境でも育つというクースーの木の種をまいて精霊達に祈ってもらう事にして、予め造っておいた定期的に水を噴出する魔道具を所々に置いて終了だ。



立入り禁止の看板を付け、今までの出入口を閉じて専用の転移魔法陣を造る。



「これでよし。あとは木の精霊にお願いして様子を見よう」


「楽しみですね」




次は火山灰の処理方法だが……。パッと思いついたのは火山灰シラスを使った石鹸の製造だが、シラスは長い年月をかけて堆積し、出来た物だ。火山灰とは違うが……待てよ日本の某有名な島の火山灰は成分が火山灰シラスとそんなには違わなかったな。


ここの粗く角の有る火山灰を錬金術と俺のスキルでなんとか丸く微細化して滑らかな微粒子に出来ないものか?研究の価値有りだ。



お楽しみという事で2週間は中を覗かない事にした。その間に火山灰の処理方法を考える事にした。高熱を加えながら俺の精のスキルで精製処理をしていくと真っ白なパウダー状の粉が出来た。


「これなら使えたそうだ」

「やりましたねユタカ様」


「うん、じゃ行こうか」

「えっ、何処にです?」


「今日は土壁の中を見に行く日だよ」

「そうでした、早く行きましょう」



さて、中はどうなっている?



いつも読んでくださりありがとう御座います。


面白いと感じられましたら、下段に有ります評価の☆星やブックマークを付けて貰えると嬉しいです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ