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醜女のヒモは土地を買う

 部屋の中にはクマ族の大男が居た。


「お待たせ致しました。どうぞこちらにお座りください」


えっ?ギルド長がCクラスの俺達に敬語って?わけが解らず言われるがままにソファーに座る。


「どのような御相談でしょうか?」

「え~と、魔物を買い取って欲しいのですが」


「魔物の買い取りですか?それでしたら、わざわざルグロウリィの銀貨をお使いにならなくても良かったですのに」



あの銀貨、ルグロウリィの銀貨って言うのか。


「失礼致します」


ネコミミの受付嬢がハーブティーとお茶菓子の栗のシュガー漬けを持って来た。やっぱり、なんか怖い。



「そのぅ、魔物の種類が問題でして」

「ちなみに何です?」


「ミノタウロスとかキマイラとかプラチナゴーレムだったりします」


「ん~、ミノタウロス……確かユタカ様はCクラスでしたよね?」


「ですので、ご相談を……」


「あっ、あ~、なるほど……。あの~、よかったら教えていただきたいのですが、ルグロウリィの銀貨はどなた様から頂ましたかね?」



「それはラウダさんからです」


「ラウダ……様……。解りました、私が責任を持って処理させて頂ます」



「ど、どうもです」



ギルド長に連れられて建物裏にある解体場にやって来た。これでなんとかなりそうだ。


問題は金をどれだけ用意すれば良いかだが。



「ではユタカ様、ここに魔物を出してください」

「えっ、は、はい」



勢いでミノタウロスとキマイラを10頭ずつ、プラチナゴーレムを2頭出した。


「なっ!」


解体場にいた職員のおっさんが口を開けて呆けている。


「……時間停止付きのアイテムBOXですか、さすがはラウダ様がお認めになられた御方だ」


俺達に対するギルド長の評価のしかたが気になるが、それは後で考えよう。



「全て買い取りで良いのですか?」

「え~と」


ミノタウロスの肉は高級食材だったよな。


「ミノタウロスの肉は3頭分ください。後は買い取りでお願いします」


「解りました」



呆けていたおっさんも正気に戻り、各部位を調べながら鮮やかな手さばきでミノタウロスやキマイラを解体していく。




「お待たせしました。ミノタウロスは肉の破損が結構ありますが、それでも今まで持ち込まれた中では状態が良いです。ミノタウロスは強敵ですからね。キマイラとプラチナゴーレムは素材として問題が無いので、全部で金貨990枚になります。よろしいですか?」



金貨990枚というと金貨1枚がだいたい10万だから9900万か。足りるよね、きっと。


「お願いします。ちなみにヒュドラだったら、いくらになります」


「ヒュドラですか……まさか?」

「いえいえ、参考までにです」


「そうですね、金貨100枚以上でしょうか」

「解りました、ありがとう御座います」





無事に受付で金貨と明細をもらう事が出来た。ギルドの外までギルド長が見送ってくれる。なんか申し訳ないが、貴重な素材がたくさん手に入ったと喜んでいたので良しとしよう。



「お世話になりました」

「いいえ、何かあったらまた来てください」





「ラウダさんて何者なのでしょうか?」


これは盗賊に襲われた人を助けたら、王女様だった。というパターンに違いない。


「たぶん王族じゃないかな」

「そうなりますよね」


「とするとラウダさん達が捜している子供も王族という事になるね」


「大変な話しですね」

「うん、無事に見つかる事を祈ろう」





ーーーー





ディライト王国へ行くルートに戻って5日後にモンドラーンというディライト王国領の街に着いた。この街は獣王国との国境に在り、シャレイド山から離れているせいか噴火の影響は無いようにみえるが街の人達の表情は暗かった。あっちこっちに座り込んでる人達がたくさんいる。



「やっぱり活気が無いですね」

「うん、物の値段も高いし難民の人達も多そうだ」


「……」


こんな状況じゃサユリアが落ち込むのは無理はないな。


「俺達は、ここから西北に在る王都には行かないで真っ直ぐ神殿に近い街を目指すよ」


「そうなんですか。でも神殿付近はドロドロに燃えた土が固まり、灰色の粉も積もってしまって死の地になってしまったそうですよ」


「そこを少しずつ戻そうというのさ」

「えっ、そのような事が出来るのですか?」

「たぶんね。そうそう途中でエルフの森に寄って行くよ」

「解りました」






ーーーー




シャレイド山に近づくにつれ、火山灰による被害は酷くなって行くのが判る。取り除かれた火山灰の山が至る所にある。処理に困っているのだろう。


国王、領主はさぞ困っているだろうな。話を聞くと噴火前の揺れの時に神の怒りとして人びとは、村や街から逃げ出したのでケガや死んだ人はほとんどいないらしい。信じる者は救われる、とはこういう事だね。


一月かけて溶岩に呑み込まれずに残った神殿に一番近い街オウロイに着いた。



「先ずは商業ギルドからだね」


宿の亭主に場所を聞いて向かう途中に、掘っ立て小屋が並んでいる。難民の人達が住んでいるそうだ。亭主が言うには表通りに面している所はいいが、奥には行かない方が良いと言っていた。スラム化しているそうで、かなり怖いらしい。



「ユタカ様、ここです」

「ホントだ。買えると良いけど」



商業ギルドの中も閑散としている。無理もないか。暇そうに髪の毛をいじっていた受付嬢が俺達に気が付いてニコニコして声をかけて来た。



「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」

「え~と、神殿の近くで買える土地ってありますか?」


「えっ?」

「えっ」


「シャレイド山が爆発したの知らないのですか?」

「知ってますけど」


「死の地と呼ばれてますけど?」

「知ってます」


「……少々お待ちください」


何を言っているんだこの人は、という顔をして奥に行ってしまった。



待つこと10分。中年の紳士とやって来た。


「君かね、死の地を買いたいとかいう者は?」

「ええ、是非」


「……ふむ、頭がおかしいというわけではないようだ。そこで何をする気だね?」


「農業でもしようかと」

「馬鹿な、どうやら私の目が曇っていたようだ」


「食料に困っているのではありませんか?」

「くっ、……」


「ダメ元で良いと思いますが、商業ギルドが損をするわけでもないし。よかったら、そこらじゅうに積んで有る灰も引き取りますよ」


「若僧がデカい口をききおって。よかろう、麓に在ったパレカーブの村の場所をそっくり売ってやろう」


上手く挑発にのってくれた。


「有り難い、いくらです?」

「金貨100枚だ」


「ギルド長……」


ギルド長だったのか。


「解りました」


金貨100枚を机の上に並べる。


「……」「た、確かに金貨100枚有りますね」



契約書を受け取って、ついでに商業ギルドに登録する。



「火山灰を引き取って、今度は冒険者ギルドに行こう」

「はい」





「ギルド長らしくありませんね、あんな安い挑発にのるなんて」


「ふふ。天才詐欺師か、ただの阿呆か、はたまた計り知れない大物か、ちょっと見たくなったのだよ」



ーー




「ユタカと言いますが、俺に手紙が来てませんか?」

「え~と、……"醜女のヒモ"のユタカさん?」


とうとうここまで知れ渡ったか。


「そうです」

「2通来てます。後、これがお金よ、どうぞ」


「ありがとう御座います。あっ、これシャンプーとクリームの試供品です。皆さんで使ってみてください」


「いいの?ありがとう」



手紙はダノンの街のカーラさんとプロメードのパメラさんからだった。


シャンプーとクリームのセットを100個ずつと書いてある。今夜は徹夜になりそうだ。



いつも読んでくださりありがとう御座います。


面白いと感じられましたら、下段に有ります評価の☆星やブックマークを付けて貰えると嬉しいです。



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