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第34話 うん、本気で悩んでるお兄ちゃんに嘘なんてつかないよ

今話を書いているうちに若干整合性が取れなくなりそうだったので、第33話の後半部分を少し修正しました。

 あの日以降真里奈からよそよそしい態度を取られ続けた俺は嫌われてしまったのではないかと思い始めていた。LIMEも既読スルーされ続けていたのだからきっとそうに違いない。

 あまりに気まず過ぎて俺もどこか他人行儀な態度を取ってしまっており状況は最悪だ。だから楽しい夏休み期間だというのに陰鬱とした気分になっている。


「……やっぱり手を出したのが不味かったのかな」


 どう考えてもそれが原因としか思えない。航輝は多分一時的なものだろうと言って励ましてくれたが、俺はその言葉を信じられなかった。

 こんな事になるならあの時寝たふりをして何もしなければ良かったとすら思い始めている。


「お兄ちゃん、まだめそめそしてるの?」


「……ノックもせずに入ってくるなよ」


「さっきから何回もノックしたのに反応しなかったのはお兄ちゃんだよ」


「えっ、マジか」


 俺は悩み過ぎて周りの音すら聞こえなくなっていたらしい。


「何回も言ってると思うけど真里奈さんがお兄ちゃんの事を嫌うとかあり得ないから」


「それなら何であんなよそよそしい態度を取ってるんだよ」


「お兄ちゃんと初体験して話したりするのが恥ずかしくなってるだけだって」


「本当にそうか?」


 歩美から何度もそう言われていたが俺は信じられなかった。


「実は今日真里奈さんと会って話してきたけどお兄ちゃんの事は全然嫌ってなかったよ」


「えっ、真里奈と会ったのか?」


「うん、お兄ちゃんの事で相談があるって言われて呼び出されたんだ」


 昼間どこかに出掛けていると思ったら真里奈に会っていたらしい。


「お兄ちゃんが真里奈さんに嫌われたかもしれないって話してた事を伝えたら驚いてたよ、私は全然そんなつもりじゃなかったって」


「真里奈は本当にそう言ったのか?」


「うん、本気で悩んでるお兄ちゃんに嘘なんてつかないよ」


 そう口にした歩美の表情が真剣そのものである事を考えると恐らく嘘は付いていないはずだ。


「そっか、嫌われてなかったんだな」


「だから何回もそう言ってたじゃん、真里奈さんもだけどお兄ちゃんも本当に手がかかるんだから」


 俺の安堵のつぶやきを聞いた歩美は完全に呆れ顔だ。


「って訳でお兄ちゃんには明日真里奈さんを誘って仲直りがてら板橋区の花火大会に行ってもらうからね」


「えっ、明日か!? そ、それはちょっといくら何でも急過ぎないか……?」


「……真里奈さんと全く同じ事言ってるよ」


 歩美は再び呆れた表情を浮かべている。


「とにかく明日花火大会で仲直りすれば今回の誤解は完全に解けるからつべこべ言わずに行く事。それと真里奈さんも流石にもう既読スルーはしないと思うし、ちゃんと連絡してあげてよ」


「わ、分かった」


 歩美の勢いに圧倒された俺は反射的にそう答えた。それから俺はLIMEを開いて真里奈にメッセージを考え始める。


「最近よそよそしい態度になっちゃってごめん……これで送ってみるか」


 長い間メッセージを考えていた俺だったが中々良い内容が思いつかなかったため短くてシンプルなものにした。送信ボタンを押してメッセージを送ると一瞬で既読になる。

 もしかしたら俺のトーク画面を開いていたのかもしれない。そんな事を思っているとスマホが激しく振動し始める。どうやら真里奈から電話がかかってきたようだ。


「も、もしもし?」


「今時間大丈夫かしら?」


 電話口から聞こえる真里奈の声を聞いて俺は嬉しい気持ちになっていた。たった一週間程度まともに声を聞いていなかっただけなのにこんなにも嬉しくなるなんて俺は単純な男なのかもしれない。


「大丈夫だけど」


「……ここ最近の間ずっとそっけない態度を取っちゃって本当にごめんなさい」


「俺の方こそごめん」


 真里奈から謝罪された俺は同じように謝った。その後しばらく無言になる俺達だったが花火大会に誘えと言われていた事を思い出して俺から口火を切る。


「……なあ、明日板橋区で花火大会があるんだけどせっかくだから一緒に行かないか?」


「勿論行くわ、今回の仲直りもしたいと思ってたから」


「よし、決まりだな」


 万が一断られたらどうしようと心配する俺だったが杞憂だったようだ。


「じゃあ明日は俺が真里奈を家まで迎えに行くから」


「迎えにきてくれるなんて珍しいわね、いつもは私が才人の家に行ってるのに」


「そういう気分なんだよ」


「分かったわ、明日はよろしくね」


「ああ、また明日」


 俺はそう言い残して電話を切る。真里奈から嫌われてなかった事が分かって俺は一気にテンションが高くなった。思わず部屋の中を飛び跳ねて喜んでしまったほどだ。


「お兄ちゃん、良かったね」


「い、いつから見てた……?」


「真里奈さんと電話してるところからだけど」


 歩美はニヤニヤしながらそう口にした。


「いやいや、最初から全部見られてるじゃん」


「それより私のおかげで誤解が解けたんだから何かご褒美が欲しいな」


「何が欲しいんだ?」


「今回はコンビニのケーキで手を打ってあげるよ」


「分かったよ、今から買いに行くから待ってろ」


 コンビニのケーキって地味に高いんだよなと思いつつ外出の準備をする。まあ、誤解が解けたのだからそのくらい安いものだ。

 ちなみに家の近くのコンビニにケーキが無かったせいで無駄に歩き回る羽目になる事を今の俺はまだ知らない。

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