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第10話 道端に落ちてる石ころと宝石くらい違うわ

「……全く酷い目に遭ったわ」


「全部真里奈の自業自得だろ」


「あっ、せっかく才人に恋人気分を味合わせようと思ってわざわざカップル限定ランチを頼んであげたのに、私にそういう事を言うんだ」


 俺が仕返しの意味を込めて嫌味を言うと、なんと真里奈はそう言葉を返してきたのだ。


「いやいや、真里奈が食べたいから注文したってさっき言ってただろ」


「才人の馬鹿、そこは聞いてなかった事にするのが正しい対応でしょ。だからモテないのよ」


「言ってる事が無茶苦茶すぎる……」


「それより才人には私の大切にとっておいたファーストキスをあげたんだから、その対価はいつか払って貰うわよ」


「俺も真里奈ファーストキスを奪われたんだからおあいこだろ、いわゆる等価交換って奴だ」


 俺がそう口にすると真里奈は馬鹿にしたような目になってこちらを見つめてくる。


「何言ってるのよ、才人と私のファーストキスの価値が同じなわけないじゃない。道端に落ちてる石ころと宝石くらい違うわ」


「容赦無い事言うな、まあ真里奈くらい美人だったら大金を払ってでもファーストキスが欲しいって奴はいそうだけど」


「分かれば良いのよ、じゃあショッピングを続けましょうか」


 真里奈は少し嬉しそうな顔を浮かべ俺の手を引いて歩き始めた。それからしばらく色々と買い物を続ける俺達だったが問題が発生する。

 一瞬トイレに行っていた俺が戻ると真里奈が大学生くらいの二人組からナンパをされていたのだ。


「ごめんなさい、今日は彼氏と来てるので」


「えー、別に良いじゃん。彼氏なんか放っておいて俺達と遊ぼうよ」


「そうそう、きっと楽しいからさ」


 表面上はお淑やかに振る舞っている真里奈だが内心はかなりイライラしているに違いない。このままにはしておけないため真里奈とナンパ男達の間に割って入る。


「あのー、すみません。俺の彼女をナンパするのは辞めて貰っていいですか?」


「あっ、なんだお前?」


「今俺の彼女とかって言ってたけど、もしかしてこいつが彼氏? でもそれにしては顔が平凡過ぎる気が……」


「あっ、ひょっとして正義の味方気取りで出しゃばってきた関係ない奴じゃね?」


「なるほど、こんな冴えない奴が彼氏なわけないもんな。ヒーローごっこするのはお前の自由だけどさ、どこか行った方が身のためだぞ」


 二人組は俺に対して言いたい放題だ。言われっぱなしでだんだん腹が立ってきた俺は煽り返す。


「お前らこそ全く釣り合ってないと思うけど。あっ、ひょっとして鏡で自分の顔を見たこと無いのか?」


「調子に乗るな、そんなに痛い目に合いたいなら望み通りにしてやるよ」


 俺の言葉を聞いて顔を真っ赤にしたナンパ男の片割れは殴りかかってくる。

 だが興奮して頭に血が上っている相手の動きを予測する事など非常に容易い。俺は拳を避けつつそのまま腕と胸ぐらを掴んで背負い投げで床に叩きつけてやった。


「ぐわっ!?」


「お、おい大丈夫か」


 もう一人のナンパ男は慌てて駆け寄っているが、受け身も取れず床に激突したため相当痛かったに違いない。


「まだやるか?」


「く、くそ覚えてろ」


 予想外に俺が強かった事に驚いたナンパ男達はまるでアニメに出てくる悪役の捨て台詞のようなものを吐いてどこかへと行こうとする。

 だが騒ぎを聞きつけてやってきた警備員にナンパ男達は取り押さえられたため、残念ながらそれは叶わなかったようだ。


「才人は見かけによらず相変わらず強いわね」


「まあ、昔みたいな無茶はもう流石に出来ないけど」


 今は落ち着いているが昔はいじめっ子達としょっちゅう殴り合いの喧嘩をしていたため腕っぷしはそれなりに強い自信がある。


「……助けてくれて嬉しかったわ、ありがとう」


「ん? 今何か言ったか?」


 麻里奈はボソッと何かを呟いたらしいが声が小さ過ぎてよく聞こえなかった。


「な、何でもないわよ」


「そうか、それでこの後はどうする?」


「うーん、そうね。ちょっとゲームセンターに寄っていかない?」


「オッケー」


 俺達は二人でゲームセンターへと向かい始める。そしてゲームセンター内をぶらぶらしていると真里奈はUFOキャッチーの前で足を止めた。


「これ欲しいわね」


「つばめの鍵閉めの置き時計か」


「ちょっと両替してくるから台を押さえておきなさい」


 そう言い残すと真里奈は両替機の方へと歩いていった。そして真里奈はUFOキャッチーを始めるわけだが全く景品が取れそうな気配はない。


「どうなってんのよ、全然取れないじゃ無い」


「これを取るのは結構難しそうだな、そろそろ諦めないか?」


「嫌よ、絶対取るんだから」


 実は取れない設定になっているんじゃないかと疑い始める俺だったが、近くの台で同じタイプの景品を取ろうとしている親子連れがいる事に気付く。

 多分真里奈と同じように苦戦するに違いないと思いながら見ていたが、なんと五百円程で取ってしまった。


「なるほど、そうやって取ればいいのか。おい真里奈、取り方が分かったぞ」


「どうやればいいのよ?」


「持ち上げるんじゃ無くてアームを使って景品を少しずつバーの上からずらすんだよ。まあ、見とけって」


「ち、ちょっと!?」


 俺は真里奈がボタン操作しようとしていた手の上に自分の手を重ねて先程の親子連れがやっていたのと全く同じようにアームを操作する。

 何度かアームを操作して景品が二本あるバーの間に半分落ちるような位置まで移動させ、上から押さえつける事によって無事落下させる事に成功した。


「よっしゃ取れた」


「い、いつまで私の手を握ってんのよ」


「……あ、ごめん」


 俺は顔を真っ赤にした真里奈に指摘されて慌てて手を離す。手を離す時真里奈がちょっと残念そうに見えたのは多分気のせいだろう。

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