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第1話 あんたに八雲さんって呼ばれるのは何か違和感しかないから昔みたいに真里奈で良いわ

 俺の幼馴染である八雲真里奈(やくもまりな)はめちゃくちゃモテる。とにかく色々な男子から告白されまくっており学校の中で一番モテる女子と噂されるほどだ。

 日本人とドイツ人のクォーターであり、茶髪碧眼という容姿をしている点も真里奈がモテる要因かもしれない。そんな彼女とは幼稚園から今までずっと一緒だったわけだが、今では完全に疎遠になってしまっている。

 思春期に入ってから話すのが恥ずかしくなってしまい中学生くらいから避けるようになってしまったのだ。だから俺と彼女は同じクラスでありながら話す事は一切ない。


「やっぱり八雲さんはいつ見ても美人だよな」


「ああ、昔からめちゃくちゃ顔が整ってたから絶対美人に成長するって思ってたけど予想通りだったわ」


 帰りのホームルームが終わった後、俺は中学時代から腐れ縁の仲である相模航輝(さがみこうき)と教室でそんな会話をしていた。教室の端で友達と楽しそうに話している真里奈は本当に美人だ。


「彼氏になる人が羨ましいぜ。なあ才人(さいと)、お前もそう思わないか?」


「いやいや、お前は彼女いるだろ。今の発言を彼女に聞かれたら多分ぶん殴られるぞ」


「うっ、今のは聞かなかったって事で」


「じゃあ貸しって事にしておいてやるよ」


 ちなみにバスケ部に所属している航輝は平均身長の俺より十センチ以上身長が高いため普通にモテる。年齢イコール彼女いない歴童貞の俺からしたら羨ましい限りだ。


「じゃあ俺はそろそろ部活に行ってくるわ、またな才人」


「ああ、また明日」


 航輝と別れた俺は教室を出て靴箱へと向かい始める。俺は部活に所属していない帰宅部のため後は家に帰るだけだ。

 うちの父親は単身赴任で県外にいて母親も仕事をしていて昼間は家にいない関係で家事などは基本的に俺と妹が分担して担当している。そのため部活に所属していないのだ。


「……ん? 靴箱に何か入ってる」


 上履きから靴に履き替えるために靴箱に手を突っ込んだ俺だったが、靴の上に何か手紙のようなものが置かれていた事に気付く。とりあえず手紙を読んでみる事にする。


「霧島才人さんへ、大切な話があるのでこの手紙を見たらすぐに高等部校舎の屋上まで来てください……か」


 差出人の名前が無かったので誰からの手紙なのかは分からないが、どうやら俺は屋上に呼び出されたらしい。

 どこかで見た事があるような筆跡な気はしたが、正体が分からない相手からの手紙に従う気になんてなれなかった。だから無視して帰ろうとする俺だったが突然後ろから誰かに話しかけられる。


「お兄ちゃん、その手に持ってる手紙みたいなやつはどうしたの?」


「誰かと思ったら歩美じゃん。どうして高等部の校舎なんかにいるんだ?」


 俺に話しかけてきたのは中等部に所属する妹の霧島歩美(きりしまあゆみ)だった。中高一貫校のため中学生の歩美も同じ学校だが、中等部と高等部は校舎が離れているため基本的に行き来する事はまずない。


「……ちょっと高等部校舎に用事があってさ。それよりその手紙がめちゃくちゃ気になるんだけど」


「これが俺の靴箱に入ってたんだけどさ、歩美的には何だと思う?」


 俺は歩美に手紙を見せた。すると歩美はニヤニヤとした表情で口を開く。


「これってお兄ちゃん宛のラブレターじゃない?」


「いやいや、俺にラブレター書く物好きがいると思うか?」


「もしかしたらいるかもしれないじゃん」


「絶対イタズラだと思うから無視して帰ろうと思ってるんだけど」


「それは絶対ダメだよ、もし無視して帰ったらお兄ちゃんだけ今日の晩御飯抜きにするからね」


 表情的にどうやら歩美は本気で言っているらしい。晩御飯抜きは流石にキツいため大人しく行くしか無いようだ。


「分かったよ、行けば良いんだろ」


「うんうん、素直でよろしい。お兄ちゃんが帰ってくるまでここで待っててあげるから結果の報告よろしくね」


 それから俺は高等部校舎の屋上に向かって歩き始める。放課後という事もあって校舎の中は人が少なくなり始めていた。

 しばらくして屋上の入り口前に着いた俺はゆっくりと扉を開ける。そこには茶髪でツーサイドアップの髪型をしたよく見慣れた人物が立っていた。


「やっと来たわね、待ってたわよ」


「ひょっとして俺を呼んだのは八雲さんか?」


 そう、屋上の扉の先にいたのは疎遠になった幼馴染である八雲真里奈だったのだ。


「あんたに八雲さんって呼ばれるのは何か違和感しかないから昔みたいに真里奈で良いわ。私も今まで通り才人って呼ぶから」


「でもいきなり名前で呼び始めたらクラスメイト達から勘違いされるんじゃないか?」


「勘違いっていうのは具体的に何かしら?」


「ほら俺と八雲さん……じゃなかった真里奈が付き合ってるんじゃないかってさ」


 学校のアイドル的存在である真里奈と平凡が俺が付き合っていると勘違いされたら絶対面倒な事になってしまうに違いない。


「ああ、それなら大丈夫よ。今日から才人はこの私の彼氏になるんだから」


「……えっ!?」


 真里奈はニヤッとした表情で口にした言葉は俺にとってあまりにも衝撃的過ぎて何を言っているのか理解出来なかった。

【読者の皆様へ】


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