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ホモ・ノウム  作者: Aju


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49 ホモ・ノウム ーマナハ+アトレイアー

「マナハちゃんはまだジュニアだから『ホモ・ノウム』については何も教えてもらってないと思うけど、ミドルに進めば学校でも教えてもらえるよ。

でも、今から私が話すのは、もっと詳しい話。研究者の論文に書いてあるようなことを、マナハちゃんにも分かるように分かりやすく話すから聞いてね。——だってあなたはもう、ギダに会っちゃってるんだもんね。」


 そう言ってアトレイアさんが話してくれたのは、400年に及ぶ壮大な人類の歴史の話だった。




 私たちはずっと、400年以上前から自分たちのことを『ホモ・サピエンス』と呼んでいたの。『サピエンス』とは「賢い」と言う意味の古い言葉。

 全然、賢くなかったよね。少しばかり複雑に考えられて、少しばかり技術が使えるからといって思い上がっていたんでしょう。

 その「技術」は環境資源を食いつぶすことで成り立っていた。このあたりは少し、ジュニアでも習うでしょ?


 賢いはずの『サピエンス』は、もっと多く、もっと速く、もっと、もっと——という欲望を止めることができず、環境資源を食いつぶしてしまった。

 その結果、気象災害がたくさん起こるようになり、「外」は人間の暮らせる環境じゃなくなっちゃったの。


 人類サピエンスはシェルターの中に避難することにした。シェルターっていうのは、「隠れ場所」とか「逃げ場所」という意味を持った言葉だったんだ。ところが・・・。

 全ての人が入るほど、シェルターを作ることができなかった。

 食べるものが作れなかったし、資源もエネルギーも足りなかった。分かるかな? マナハちゃんには難しい?

 へえ、そうか。頭いいんだね。じゃあ続けるよ。


 外には大勢の人が取り残された。

 外の人たちは、自分たちも中に入れろ、と言って何度もシェルターを襲うような事件があちこちで起こったの。

 そしてとうとう、シェルター同士の核戦争まで起こった。たくさんのシェルターが破壊され、そして今ではよく知られている放射能も地球全体に広がって・・・。

 外に残された人たちは、その影響をまともに受けたの。


 そんな顔しないで、マナハちゃん。今から300年も前の話だよ。


 今はもう薄まったから、それほど人体にも影響はないけど、でも300年前のそれで外の人のほとんどは数十年のうちに死んでしまったの。生態系も大きく変わった。


 そうして、残ったシェルターの中の人だけはなんとか生き延びたのだけど、外はもうシェルターの中の人が生きていけるような環境ではなくなってしまったわけ。


 ところが、少数だけど外でも生き延びた人たちがいたんだ。

 ほとんどは放射能の影響と食べるものがないことで病気になって死んでしまったんだけど、放射能の影響で遺伝子が変わってかえって外の環境に適応できる人たちが現れたの。

 難しい? 大丈夫?


 300年前、そうやって私たち『ホモ・サピエンス』から枝分かれした『ホモ・ノウム』という新しい人類が現れた。

 ということになってるんだ。今の学説では——ね。


 でもね。私は、それほど大きな差はないんじゃないか——って思ってるの。

 だってまだ300年だよ?

 そんな大きな遺伝子の差なんてないと思うんだよ。きっと中の人の肌の色や髪の色が違うくらいの差なんじゃないかって。


 たしかに、外で暮らしている人たちは私たちよりも環境に適応できる身体を持っているように見える。実際そうだから、外で暮らしてゆけるんだろう。でもね。研究者によれば、寿命は短いっていうんだよ。

 本当にそうだろうか?

 過酷な環境にいるから、早く死んでしまうだけなんじゃないだろうか?


 私は今、こんなふうに思ってるの。

 実は「人類だけど別の種」じゃなくて、私たちとはちょっとだけ違う「同じ人間」なんじゃないかって——。

 たしかに50年くらい前まで、『ノウム』がシェルターを襲う事件はあった。だから、みんな外にいる『ノウム』を必要以上に恐れる気分があるけど、それは、私たちシェルターの人間が外の人たちを締め出したからで、それをずっと200年以上にわたって恨んできたからなんじゃないか——って。


   *   *   *


 マナハは今聞いた話をどんなふうに受け止めていいのか、戸惑っていた。


 わたしたちって、そんな酷いことをギダたちにしてきたの?


 なのに、どうしてギダはあんなに優しいの?

 あんなにいい笑顔を見せてくれるの?


「マナハちゃん。」

とアトレイアさんがマナハに呼びかけた。


「私は、あなたのしたことに期待してるの。」

 意外な言葉にマナハが顔を上げる。

「あなたはきっと、300年の分断を溶かす架け橋になれる。ギダは頭のいい子なんでしょ?」


 マナハは顔を輝かせた。

「はい! お菓子という言葉も覚えてくれました。ギダたちの言葉では、『寒い』は『∇@^z。』っていうんですよ!」


「ああ!」

とアトレイアは言って、なんだか泣きそうなような笑顔になった。


「マナハちゃんはきっと、ナオミ・クルーエの生まれ変わりに違いない。」



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