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ホモ・ノウム  作者: Aju
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1 ルール違反 ーマナハー

 マナハは「外」でその少年を見つけた。

 いつもの「秘密の草原」の中ほどに、その黒い小さな少年は立っていた。


  *   *   *


 いつの時代も、子どもにとってちょっとしたルール違反はワクワクする大冒険だ。

 大人たちは「危険なこと」としてそれを禁じるが、ダメと言われればやってみたくなるのが子どもというものだろう。

 そうして新しい好奇心は、時に社会に変革をもたらすような何かにつながることもあれば、時に大人たちが心配したように子ども自身を危険に晒すこともある。

 12歳の少女マナハにとって、それはこっそりと「外」へ出ることだった。


 メガシェルターの外には、むき出しの自然がある。過酷なその環境の中では、人間は長くは生きられない。

 それは学校で教えられているから、マナハだってちゃんとわかってはいるのだ。12歳なんだもの。

 大人たちはその過酷な自然の中に出てゆき、危険を冒しながら「資源」を確保してくる仕事もしているが、子どもはそういう自然の中に出ることは禁じられていた。


 自然は今や、人間にその中で生きることを許していない。それはかつて、人間が犯した罪のためである。マナハは学校でそうに教えられていた。


 しかし、マナハは知っているのだ。

 シェルターの最外縁の窓から眺めていると、時によって「自然」は穏やかな表情を見せることがある——と。

 大人たちはそういう天候を見計らって、資源の確保などの「外仕事」に出てゆくのだ——ということを。

 マナハはそんな大人たちの行動を見ているうちに、「子どもは入ってはいけない」と言われているいくつかの扉のうちの1つを開けた先に、外に出られる出入り口があることに気がついたのだった。


  *   *   *


 少年・・・・だろう。

 2〜3歳くらいの背丈だけど、その筋肉質の身体や顔つきは、マナハより少し年下程度にも見える。

 粗末な粗い織り目の「服」らしいものを着ている。マナハの感覚では、それは「服」というよりはただの布だった。

 肌の色は墨みたいに黒い。シェルターの中にも肌の黒い人は大勢いるけど、こんなに真っ黒な子は初めて見る。瞳は猫みたいに黄金きん色だった。


 少年は好奇心いっぱいの目でマナハを見ている。まるで初めて「人間」を見たみたいな顔だ。

 その表情は・・・、どちらかといえば、かわいらしい。

 髪は長めで、ややくせっ毛。よく見れば、肌にもうぶ毛というには長い柔らかそうな毛が生えていて、ふわっふわだ。


 まるで・・・・。そう、まるで小さな頃チャイルドビューで見た昔話の中のトロルみたいだ。


 この子はどうしてここにいるんだろう?

 わたしと同じように「冒険」に来たのかな? それとも、たまたま外に出ちゃった「迷子」だろうか?


「あなたはだあれ? どこから来たの?」

 マナハは少年と目線が同じ高さになるように腰をかがめて、訊いてみた。



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