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星花

拓は襲いくる魚の化物に悪戦苦闘していた。

一枚一枚のウロコが大きく、分厚い。なかなか切り込めない。

しかも、拓からの攻撃をぬるりとかわし、強烈な水鉄砲で辺り一帯足場を悪くして、ジワジワと池の方へ拓を追いやっていた。

拓は何度か攻撃して、ウロコの薄いところを探した。

「腹だ!」

真下に入り込み、神器を振り翳す。

しゅあああああ。

魚はどんどん小さくなって、黒い鯉になった。びちゃびちゃ跳ねているところを、のどもとのウロコ一枚だけ切り取って、池へ返す。

「くそう、手間取った。星花」

走って間者たちを追いかけた。

間者に殴られた腹の痛みにうめいて星花は目覚めた。

「お前、弱いなー」

間者が濡らして絞った手ぬぐいを星花の額に置いてやりながら言った。

「そうよ。私が一番弱いのよ!」

星花は腹立たしい思いで吐き捨てるように言った。

いつも周りの足を引っ張るのを気にしていたのだ。

「お前、生娘か?」

「えっ?」

「あの拓とかいうのとできてるのか?それとも星史郎とか?」

「なんでそんなこと……」

「生娘でないのならお鏡さまの神事はつとまらないぜ。そんなら、俺に味見させろ」

「じょ、冗談じゃない!拓ー、助けてー」

星花は叫んだ。

くっくっく、あっはっは!

間者が大笑いしている。

「からかったのね!」

「そうですが」

食えない相手だと星花は思った。

「お鏡さまにお尋ね申す。本土へ打って出られるとはまことか?」

星史郎が念話で尋ねた。

古い、丸い鏡。ぼんやりとしか回りを写しださない。

しかしそれは、意志を持ち、欲を持っている。

両脇に巫女たちが控えて、有事に備えている。

「私も永く存在しているが、まだまだ力を持てばなんだってできようぞ」

「悪いことはいいません。おやめください」

「お前の配下の者、特に星花という娘、巨大な力を秘めておる。私はあれがほしい」

「星花はあなたを受け付けないと思います」

「やってみなければわからん」

星花本人は自覚していないが、裏世界では、最近彼女に関するうわさが流れていて、利用を目論む者達が増えていた。

これも、星花の経験となるだろう。星史郎は仕方なく口をつぐんだ。

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