間者
「お鏡さまはどこ?」
星花が尋ねると、間者は島の北を指差した。
あんなに星史郎そっくりだと思っていたのに、幻惑を打ち砕いた今では全くの別人だった。
「なぜ時間稼ぎするの?」
明らかに遠回りの小径。
「巫女たちに星史郎を捕らえさせるためさ」
「何ですって?!」
「お鏡さまはなんでもお見通しだ」
間者は貼られていたお札を引きちぎると、星花と相対した。
星史郎さんのお札が効かないのなら、私のお札なんて足元にも及ばない。
「鳥よ、拓に知らせて!」
黄色い鳥は素早く空に舞った。
「まあいい」
間者は星花の腹を殴って気絶させると、肩に担いで脇道に入って行った。
間者の背中に人型の式神が貼りついていて、今の会話を星史郎に伝えた。
☆
「なぜ、クルーザーを出さないのですか?」
巫女が尋ねた。
「どこまで覚醒してるのかわからんからさ」
星史郎は式神たちに巫女を縛り付ける術を使った。
「あああ」
大抵の巫女たちはその力に屈したが、3人の巫女が式神をねじ伏せた。
「お鏡さまの元へ連れて参ります」
「よかろう」
星史郎は慌てず騒がず、巫女に案内させてお鏡さまを目指した。
☆
ザン。
拓の神器が風を纏って間者の今いた場所を切った。
「星花を返せ」
「すぐそこにお鏡さまはいらっしゃる。邪魔するな」
暗くてよく見えないが、近くに池があり、水音がしていた。
ぴしゃん。
水の跳ねる音。
池の主が変化して拓に襲いかかった。
「くそう」
神器が重たく感じられた。大物だ。
拓と池の主が戦っている間に、間者は星花を運んで姿を消した。