最終話 敗将が死んだ
いよいよ完結です!彼女たちの英雄譚を最後までお楽しみください!
傘をずらすとそこにはミディアムヘア…ではなく伸びたロングの白髪でタレ目の少女が立っていた。
黒を基調とした服によく映える美しい髪質が風で踊る。
「お前は……」
「久しぶり、シュヴァルツ」
そこに立っていたのはクチンスカヤだった。キラキラと日光に光って反射する髪を持っている彼女はまるで女神のようにさえ見えた。
「なんでお前がここにいるんだ」
「うーんとね、ここにくれば会えるかなぁって思って…」
「会えたな」
「うん」
握手をかわすとシュヴァルツは手を離す。
「楽しいか?戦後は」
「俗世から離れて今は友達と暮らしてるよ、時々取材が来る程度で平穏無事」
「そっか、同じ戦地を生きた仲だ、つらくなったら相談してくれ」
「ありがとう、本当世話焼きね」
「それが取り柄だからな」
二人は笑い合う。そこには過去の因縁や怨念などというものは全く感じなかった。なんの後腐れもなく、彼女は新しい人生を送っていた。
「…クチンスカヤだっけ?共謀者の…」
「戦友のバウムガルトナーね、この節はどうも」
軽い会釈を挟むとシュヴァルツは笑いながら手を振った。
「じゃ、行くわ。オイラー、ハーン、シントラーって名前があったら花をやってくれ」
「うん、じゃまたどこかで」
シュヴァルツたちは歩み出す。
「ねぇ!」
振り返ると彼女はこちらを見つめていた。
「ありがとう、名無しの英雄。戦争が終わってみんなあなたの名前を忘れかけているけど、私は忘れないよ」
「忘れてくれよ、敗将も死んで、怪物も今死んだ」
「…死んでばっかりね」
「殺してばっかりだったからな」
立ち去るために歩みを進める。後ろめたさと、新時代への希望を背負いながら。
その背中は、とても大きく見えた。
「……さよなら、私の怪物」
風が吹く。枯れ木から舞い落ちた葉が地面に落ちる前に空へと消えた。
「(本当にいろんなことがあった、辛いことも悲しいこともあった。でも今こうして生きている、それだけで幸せだ)」
青空に視線を移す。羽ばたいていくのは鳩だ。羽を落としながら4羽、大空へと無謀にも羽ばたいていく。
立ち止まって見つめていると背後から不意に手に暖かな触感が当たった。
「行こう!シュヴァルツ!」
太陽にも負けない眩しい笑顔で手を引きながら引導してくれる。引っ張られる形で足を未来へ向け進めた。
「ほらリーブフントも!」
無言の彼女の手を引いて三人はならんで走り出す。
「(願わくば、この空がいつまでも続くように)」
この世界は終わらないし、終わるはずがない。
「(だってまだ、第二の人生はこれからで何も成し遂げていないのだから)」
笑顔で応酬しながら三人は行く。
これは、とある英雄の物語ではない。名もなき兵士の話でもない。
これは、どこにでもありふれた、一人のミリオタの話である。
第六章 完
敗将が死んだ日 ~帝国最悪の愚将に転生したミリオタ、地獄の戦場で成り上がれ~ 完結
最後までお読みいただきありがとうございます(人*´∀`)。*゜+評価、ブクマ、感想をくださった読者様、本当に感謝です。ありがとうございました。次回作もぜひ…!
【補足】
この物語は史実である第二次世界大戦時の独ソ戦(1941〜1945)辺りの時代背景を下敷きの異世界でドイツ国とソ連がモチーフの国との戦争を生き抜く物語です。
登場する兵器や軍服などは名前が出ているものは実際に大戦で使われた物であり、調べていただきながらお読みいただくとより一層楽しめるかと思います୧( ˵ ° ~ ° ˵ )୨




