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心の声を聞きたい。

作者: 田中 優

人の心が読めたら良いのに。


一葉(カズハ)はとなりで静かに横たわる姉を見つめながらこう思った。


姉が働かなくなってもう1年以上が経つ。


一葉の姉、美琴(ミコト)は一葉より3つ年上で、大学を卒業してから就職した職場でずっと働いていた。


内気な一葉とは対照的に美琴は社交的で誰にでも平等に優しく、周りから愛される存在だった。



それが一葉と同居して1年を過ぎた頃に精神を壊し、3年勤めた会社へ行けなくなってしまったのだ。


それからというものあまり外には出ず、部屋から一度も出てこない日なんてザラにあった。


一葉はそんな姉を見て何故姉が何も出来なくなってしまったのか日々思いを巡らせていた。


姉は自分のことをあまり話さない。


何故か会社に行くと体が震えていうことを聞かず病院へ行けば精神病だったということだった。


両親も私も姉を見守るしか出来ない。


姉は何を思ってるんだろう、いつも周りに迷惑をかけまいとニコニコしているが、顔はこけて目の下の隈がひどい。


私は1年以上も働かないのに、友達と遊びに行けるまで元気になった姉を見兼ねてとうとう伝えた。


「もう働いたら?」


姉は


「そうだね」


とニコッと笑ってすぐに部屋に戻ってしまった。


姉も分かってるんだ、私は姉の言葉を信じてそれから姉の様子を見ることにしたが、それから1ヶ月経っても働こうとしなかった。


「???」


「お姉ちゃん、仕事はどうなったの?」


たまらなくなって聞いてみると


「ほっとけよ!!!」


今まで見たことない姉の怒った顔だった。


「手が震えるんだよ!何も出来ないんだよ!こんなの、誰にもわからないし言えない!!」


その後姉は肩を震わせながら大声で泣いた。


「お姉ちゃんごめん、私こんなに苦しんでるんなんて知らなかった、気づかなくてごめん、ごめん」



肩を震わす姉に寄り添いながら私も一緒に泣いた。



心の病気って他のどんな病気よりも怖いのかも知れない。


一葉はそう思いながら、泣き疲れて静かに横になった姉を見つめこう思った


人(姉)の心が読めたら良いのに。



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