92.引き寄せられる残骸
七星人の一人ユーピテルとの戦いを終えた後、無事に診療所へ着き二人は戦いの傷を癒えていた。
特に問題はなく、あれから数日後が経った。
「うーん…」
簡素な部屋に綺麗なベットが一つ、椅子とテーブルが窓際に置かれている。
腕や肩、足を軽めに動かし、異常がないか確認していた。
「大体は動けるようになったかな?」
初日は少し動きだけでも痛みがあったが、適切な処置のおかげか日が経つ事に和らいでいた。
「さて……」
窓際の近くに移動して、そこから外の景色を眺める。
相変わらずサングレーザーに行き交う人々達は今日も平和に過ごしていた。
ルークス達が関わった星導光惑星など、最初から居なかったみたいに何も変化は無かった。
窓際から見える四季蓮花も黒く変色をしたままだった。
人々は何も疑問に思わないのだろうか?
ボケーっと外を眺めていたが、ふと彼女の事が気になりだす。
「ミルキーの方はどうなっかな…?」
彼女も同様、それなりにダメージを負っていた。
それに魔術を多く使用したため、普段よりも生命エネルギーを消耗をしていた。
少なくとも、ルークスよりかは彼女の方がより身体的ダメージはおおきかった。
「アイツの様子でも見に行くか」
ポツリと呟き部屋を後にした。
彼女がいる部屋の前に移動して扉に数回ノックをする。
すると、中から「いいわよ~」と元気そうな声が返ってきた。
ガラガラと扉をスライドさせて部屋の中に入る。
「よぉ、調子はどうだ?」
そこにはベットの上に起き上がっていたミルキーの姿だった。
「ボチボチよ。アンタの方はどうなの?」
「俺もボチボチってとこかな」
「ふーん」
ひと回りルークスを見てから寝転がる。
彼女の事を心配していたが、この様子を見る限り元気そうだった。
少し安心感を覚えて肩の力が抜ける。
「興味無しってやつか?」
「治ってるならそれでいいでしょ。アンタもウロウロしないでベットに戻って寝てきたら?」
「そーだな…そうするわー」
そう言うと彼はすぐに自分の病室へ戻っていった。
(珍しく戻ったわね…いつもなら雑談の一つや2つしてから戻ってたのに…)
この数日間、1日事に互いの状況を共有するために会って適当な雑談をしていた。
しかし、今日に限って、それが無かったのでミルキーは引っ掛かりを覚えた。
部屋に戻りベットの上に仰向けに寝転がる。あれからルークスはミルキーとアクエリアスの言葉に引っかかっていた
「人間…じゃねえのかな?」
ぐるぐると思考を巡らせるが、すぐにやめた。
(考えた所でアイツから聞かねえことにはならねえし、今は1日でも早く治すことが先決だな)
まぶたを閉じて静かに眠る。
(ステラのやつ、大丈夫かな。ちゃんとしてるといいんだが…)
★
サングレーザーの端にある、目立たない場所の家に少しだけ活気づいていた。
「調子はどうですか?痛みはないですか?」
一階の広いリビングにメリーの心配そうに声をかけていた。
ソファに座った状態で体をくねらしたり、腕を軽く動かしたりと、一つ一つの部位に確認をしていた。
上半身に包帯を巻かれている所為か、多少動きづらくしていた。
「ああ、問題ないよ。すまない…心配かけたね」
ルークス達を送った後、拠点へと戻り引き続きフリージアから治癒術を受けていた。
そのおかげか、痛みと傷口はほとんど治っていた。
「アクエリアスさん達が無事ならいいですよ。それにアレルさんも戻ってきましたし」
太ももまで丈のある大きめのパーカを着た黒髪の少年、アレルは申し訳無さそうに暗くなる。
「ごめん皆んな…僕のせいで迷惑かけて…」
フリージアは優しく笑みを返す。
「ううん。そんなことないよ。元より私の油断が招いた所為だから気にしないで」
「も〜三人とも気にし過ぎですよ~?さっきから謝ってばっかりじゃないですか〜」
「だって」
彼女の声を遮るようにスピカが大袈裟な態度をとる。
「みーんな無事に帰ってきたんだからそれで良いじゃないですか〜。ね、レグレス☆」
急に呼ばれて面倒だと思ったのか、淡々と言う。
「なぜ俺に振るう」
「寂しそうにしてたからかな☆」
意地悪そうにニヤニヤする彼女とは対称的にレグレスは少しだけ苛立った雰囲気だった。
「………」
「わわっ、喧嘩はメッ!だよ!」
静かに聞いていたステラがジャンプしてレグレスの頭にチョップを入れ込む。
「あはは〜ステラちゃんに怒られてる~☆」
指をさしながらケラケラと笑っている。
「だ、駄目だよスピカ。彼にそんな挑発しちゃ」
急いでアレルはスピカの腕を押さえて大人しくさせようとする。
そんな事を気にせずに、お構いなしに話す。
「楽しければいいんですよ。アレルも一緒にどう?」
「僕を巻き込まないでほしいけど…」
「付き合いきれん」
そう言い捨てると家から出て行ってしまった。
アクエリアスはどこか楽しげにいた。
「いつもの騒がしい日常に戻ったね」
「あはは……」
メリーの困ったような笑顔を見せる。
「ステラちゃん。体調はどう?おかしなところはない?」
フリージアにそう尋ねられると、素直に答える。
「うん、大丈夫だよ」
「それなら良かった。ステラちゃんに何かあったら……」
「ねえ、フリージアちゃん」
「うん?」
「私のこと知ってるの?」
「…………」
ほんわかな雰囲気が一転し黙り込む。
そのかわりアクエリアスが答える。
「ああ」
視線をステラに合わせて続ける。
「知ってるよ。彼女だけじゃない。僕達全員ね…」
「!」
それはステラにとっては衝撃的な内容だった。
何故、自分は記憶喪失なのか、何故、フェーベ村の近くの森に居たのか…そもそも自分は何者なのか、様々な考えが過る。
「お願い教えて!私は……一体何者なの?」
彼女は懇願するように上目遣いで聞く。
ステラの正体を知ること…それは旅の目的に大きく近付ける情報……
だが、アクエリアスから返ってきた言葉は彼女の求めるものでは無かった。
「それは……二人が戻ってきてからだね」
「うう……」
分かりやすく落胆するステラ。
「ごめんね。意地悪してる訳じゃないの。これはステラちゃんも、あの二人にとっても大切な事だから…」
ルークス達と分かれる前に話していたことを思い出す。
そういえば皆んなが集まってから話すって言ってた…
彼女は渋々と納得をする。
「うん…ルークスとミルキーが帰ってるまで待つよ」
「おお〜!ステラちゃんは偉いね~☆」
ステラに抱きつき頬を寄せる。
「えへへ……」
恥ずかしいのか、それとも褒められて嬉しいのかニヤついてしまう。
「…………」
アクエリアスか上の空にメリーが気付く。
「どうしましたか?」
彼女の声に反応したが、どことなく集中しているように見えた。
「いや、なんでもない」
一言だけいうと彼は立ち上がり、玄関の方へ向かう。
「出掛けるんですか?」
「ああ、少し気になる事があってね…すぐ戻るよ」
アクエリアスは少し急いだ様子で外へ出て行った。
「メリー、アイツ今どうしてるの?」
フリージアの言うアイツとは…彼女のことだろう。
「七星人の方…ですね」
星導光惑星との戦闘の果てに七星人の一人ユーピテルを生け捕りに成功した。
「あの人はまだ目を覚ましていません。命に別状はないはずですが…」
生け捕りにしたのはいいが、数日間経った今でも意識が戻ってきてなかった。
「……」
彼女が目覚めない限り尋問どころの話ではない。
「フリージアさんの所為じゃありませんよ!」
「うん、大丈夫。せっかく生け捕りが出来たんだ。情報を得るまで死なせる訳には行かない」
そうは言ってるものの彼女は内心かなり焦っていた。
打ちどころが悪く、もしも、このまま目覚めなかったらどうしようと…
だが、そんな不安を皆んなの前で出すわけにもいかなかった。
自身の感情を打ち明けることによって、みんなを不安にさせるわけにはいかないと
「フリージアさん」
皆んなが心配そうに見つめる。
「大丈夫、治癒術は使わないから…様子を見てくるよ」
そう言い彼女はユーピテルのいる二階の部屋へと向かって行った。




