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星の願い  作者: ミケ
第三章 這い寄る星々
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88.策略

ドシンっと船体を揺らしながら巨大な触手を動かす。

海月クラゲは身を乗り出して辺りの様子を伺っていた。

隙を逃さずにアクエリアスが先手を打つ。

「これはどうかな!」

指先を立たせ水鉄砲を放つ、触手に当たりバシャと弾けた水音が鳴る

「……!」

だが、魔物は怯まずに巨大な触手を叩きつける。

「甘いよ!」


魚の形をした水塊が触手の動きを止めるように噛みつく

その間にアクエリアスは手を広げ水槍を生み出す。

生成された水槍を片手でクルリと回して持つ。

「水槍・爆撃!」

投げ出された槍が手前の触手に突き刺さり、轟音と共に水爆を引き起こす。

バランスを崩した魔物は倒れないように何本かの触手を使い態勢を整える。

「まだまだ!」

手のひらに水を生成し床へと叩きつける。

「水影・千鳥足!」

すると、叩きつけた場所から勢いよく噴出した水柱がジグザグと交互に発生させ、触手を水圧で押し切る。


体を支えていた触手が力が抜けたようにふにゃふにゃになり、とうとう船体へ持たれつく形に倒れ込む。

「今だよ!」

彼が合図を出すとフリージアが高く飛び跳ねる

「思いっ切り殴る!」

海月の柔らかそうな体へと拳を入れ込む。

ドゴォ!

その魔物の体は見た目よりも硬く驚きを隠せなかった。鈍い音が周りに溶け込んだ。

「やったの?」

魔物からは特に反応はない


なんの予兆も無くゴミを払うように触手を動かす。

「おっと」

間一髪に避け、アクエリアスの元に着地する。

「……!」

体は船体にめり込んだままだが、攻撃を受けていない複数の触手が二人に向けて叩きつける。

「ミルフィッシュ!」

フリージアの前に術式を発生させて、そこから無数の小魚達が噴水のように出てくる。

一匹一匹よく見ると、それは魚の形をした小さな水塊だった。


小魚達は振り下ろそうとしてる触手に噛みつき動きを鈍化させる。

「…!」

先程の傷ついた触手を動かし抵抗しようとする。

触手の動きよりも早くアクエリアスは手に水を纏わせ魔物の体に殴りつける。

アクエリアスも相手の硬さに驚いたのか攻撃した直後に距離を取る。

「気を付けて、コイツ見た目よりも硬いよ!」


触手に対しては攻撃が通じるが、浮袋のような体の部分には見た目よりも遥かに硬く中途半端な攻撃では通用しない

「生半可な攻撃は通じない…か」

何か策を考えついたのか、彼女に声を掛ける。

「フリージア、あれで行こうか」

言葉の意図を理解したのか、コクリと頷く

「あれだね。わかった準備して!」

そう言うとフリージアは手を前に掲げ大量の水をぶっかける。 


多量の水を掛けられて魔物の動きが鈍る

視界も奪われているのか、触手の動きもクネクネとさせる

その隙にアクエリアスは詠唱を始める。

「沈黙の雨よ、愚者に悪しき罰を与えよ!サイレントレイン!」

魔物を中心に雨が降り出す、だが、魔物自体が巨大なため触手が術の範囲外となってしまった。

ポタっポタっと雨粒が当たると、焦げた音を出し体の表面を溶かし始める。


異変に気付き触手を使い暴れようとする。

「生命を司りし水よ…ここに凍てつけ封ずる災厄を!水霖氷霧すいりんひょうむ!」

先程発動させた雨が霧状に変化する

わけもわからず魔物はその場から逃れようとするが、霧となった水蒸気が壁となり上手く体を動かせないでいた。

それだけではない、霧になってもサイレントレインの効果は消えず、魔物の体中を徐々に溶かしていった。


トドメと言わんばかりにフリージアが術式を組み込み発動させる。

「美しく飾って上げる!スピリットコフィン!」

霧がたちまち魔物を包み込み完全に姿が見えなくなってしまった。

しばらくすると、霧が晴れ魔物の姿が確認できるようになった。

だが、そこにはゼリー状となってた魔物の姿だった。

すぐにゼリーは崩れ跡形もなく消えていった。


「おぉ…」

ルークスは口をポカンと開け二人を見ていた

「強そうな魔物をこうも簡単に倒すとは…」

ゆっくりと歩きながらルークス達に近付き、爽やかな声で掛ける。

「や、ゲガはないかい?」

「おかげさまでね。アンタ達も大丈夫なの?」

強力な術を使えば使うほど、術者に多大な負担をかける。ミルキーはその事が気掛かりなのだろう。

「心配してくれてありがとね。多少手こずったけど長引かなかったから大丈夫だよ」


元気よく返事をしたが、何処となく暗い感じだった。

「アレル…」

彼の側に寄るが、目を閉じたままピクリとも動いていない。

すると、ステラが安堵を込めた声色で話し掛ける。

「この子なら大丈夫だよ。今は寝てるだけ、時間が経ったら起きるよ」

それを聞いて安心したのか柔らかな表情になる。

「ありがと。ステラもゆっくり休んでね」


「………」

アクエリアスが落ち着きなく辺りを見渡している様子が気になり、声を掛ける。

「アクエリアス?どうしたの?」

「いや、あの女が来ないと思ってね…」

彼の言う女とはユーピテルの事だろう

「来ないことには良いことじゃねえのか?」

「確かにそうだけど…」

腑に落ちない態度にアクエリアスは続ける。

「彼らはアレルを使ってそのうえで下っ端と魔物を用意してたんだ。ここまで手のこんだことをして僕達の体力を最大限削った所を狙ってくると思ってたんだが…」


確かに妙である。

アレルを人質として雑に扱い、潜伏させてた下っ端達にも戦わさせ、さらに黒い魔物を利用し、あらゆる手を尽くしてきた

しかし、その割にはあまりにも呆気なく終わっていた。

そもそも彼女自身が姿を現さないのがおかしな話である。

ミルキーが手のひらをひらつかせて適当に言う。

「考えすぎじゃない?」

「そうだといいんだけど…」


少し前へ歩きフリージアが尋ねる。

「とりあえず戻る?」

考えたところでわかることではない

取り敢えずこの一件は留めておこうと思い帰ることにした。

「アレルのことも心配だし帰ろうか」

フリージアが満面の笑みを見せて返事をする。

「うん」




グサッ!



それはあまりにも突然で理解が出来なかった。

アクエリアスの胸から鋭利な刃物が飛び出ていた。

太陽の光により刃物は眩しく光っていた、だが、その光も彼の鮮血によって紅く染め上がる。

血が滴のようにポタポタと鉄臭い音を床に落下する。

「なっ!?」

「アイツ…!峡谷にいた…!」

彼の背後からナイフを突き立てたのはユーピテルだった。


目を半開きさせ邪悪な笑みを浮かせる。

「待ってたわ。貴方達が油断するこの時を…!」

胸に刺さったナイフを引き抜かずに胸から下半身にかけて斬り刻む。

生々しく肉を斬った音が耳に残る。

「っ!」

フリージアが召喚した水塊がユーピテルへ突進する

彼女はひらりと身をかわし後退する。

「くっ…!」

意識が朦朧とし体からはドクドクと血が流れていた。

限界なのかうつ伏せに倒れる。

急いでアクエリアスの元へ駆け寄る。

「アクエリアス!すぐ治すから待ってて!」


血濡れたナイフを優雅に回して、うっすらと口元が緩む

「あらあら…今ので殺したつもりだったけど…鈍ったかしら?」

駆け寄ったフリージアはうつ伏せになってる彼に両手を前に出して暖かな光が発生させる。

「傷はそこまでだね…これなら私でも治せそう…!」

光がさらに強くなりアクエリアスの傷がほんの僅かだが塞がっていく。

「す、すまない。フリージア…僕が油断したばかり…君に迷惑をかけて…」

無理に口を開いたせいか血反吐がでる。

「喋らないで!今治してるから!」


ステラも走り寄り治癒の準備に取り掛かる。

「私も手伝うよ!」

すると、フリージアは意外な言葉が返ってきた。

「ありがとステラちゃん。でも、大丈夫だよ」

「で、でも!」

「ふふふ、実はね。私もステラちゃんと同じ治癒術を使えるの。貴方と比べたら大した事は出来ないけど、最低限の応急処置ぐらいは出来るよ。それに貴方もアレルの治癒で体力を消耗してるでしょ。だから、ここは私に任せて、貴方はルークス達のサポートに回って」

彼女の言う通りで今のステラはアレルの治癒により、体力を消耗していた。

アクエリアスの傷を治せるのは簡単だがその分、ステラの体力を大幅に負担を掛けることになる。


治癒術はこの世界において珍しい術である。

星導光エーテルの力を借りても出来ないのが現状、それ故に謎の多い術で判明していないことばかり。

「………うん。わかった」

ぐっと堪えてルークス達のサポートに行った。

一方ルークスとミルキーは七星人の一人、ユーピテルと対峙していた。

緊迫した空気の中、ルークスは剣を構えながら尋ねる。

「テメェ…どこから出てきやがった?」


「ふふふ…怖いわね~、少し刺したぐらいでギャーギャー騒ぎすぎよ」

べっとりと血がへばり付いた刃物を片付けながら、心底残念そうにする。

「本当なら、さっきので十二星宮の一人を殺りたかったけど…寸前で守りに入られたおかげで仕留めそこねたわ」

「アンタの目的はなに!」

今にも魔術をぶっ飛ばしそうな勢いだが、彼女は変わらず言葉を返す。

「目的?もちろん天核てんかくよ。強力な星導光エーテルを作るには強力な魔核コアが必要なのよ」


天核……クラフト峡谷でもそれを要求していたことを思い出す。

「天核だと?そんなもん、こっちは持ってねーよ」

「別に貴方には聞いてないけど…まあいいわ」

ドレスを手で払いホコリを落とす。

「退きなさい。今なら命だけは見逃してあげる」

彼女の言葉に耳を貸さず、剣先を相手へとむける。

「どかねえよ。お前からは色々と聞きてえことがあるからな」

「そう…せっかく私が忠告してあげてるのに……残念ね」

殺気を放ち一言放つ。

「なら、死になさい」






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