87.襲いかかる敵
アレルに付いていた頭の装置を破壊し、その反動で後ろにドサッと倒れ込む。
「アレル!」
フリージアが急いで彼のもとに駆け寄る。
「…………」
体を起こしたが彼は目をつむり黙ったままだ。
「アレル!大丈夫!?アレル!?」
揺らす手をアクエリアスが止めに入る。
「……命に別状はないよ、いまは気を失ってるだけ…ただ…」
先の言葉を濁らせる。異変に気付いたルークスは尋ねる。
「まだなにか問題があるのか?」
そうするとアクエリアスは自身の頭に指で突きながら言う。
「頭の装置だよ」
「あれならもう外したんじゃねえのか?」
ミルキーが溜息をこぼし話す。
「外した後も肝心なの。あの装置アンタも見たでしょ?あれだけ改造された星導光を無茶苦茶に使っていたんだから、相当脳にダメージを負ってるはずよ」
本来であれば星導光から生成される光星エネルギーを体内に取り込まないように作られているが、この星導光からはそういった安全性を無視し、効率だけを求めた装置となっていた。
最悪、拒絶反応を起こし死に至る可能性もある状況だ。
「だったら早いとこ回復してやんねえと…!」
焦るルークスだが、残念ながら彼にはどうしようもなかった。
「わたしがやるよ!」
「ステラ!?」
彼女がアレルの側まで近付いていた。
「ちょっとアンタ大丈夫なの?!前みたいにチカラを無理に使ったら倒れるわよ!?」
彼女の治癒術なら治すことができる。
だがそれは彼女自身の生命を大きく消耗する行為でもあった。
小さな傷ならともかく、直接脳にダメージを負っている彼を治すには、それなりに覚悟が必要だ。
「それでも助けたいの!倒れちゃってもいい、苦しいことが起きても助けたいの!」
フリージアが心配そうな表情でステラを見る。
「ステラ…」
船内のどこからか妙な金属音が耳に入ってきた。
まるで銃をリロードした時の音が……
「へっ!」
星導光惑星の下っ端が銃口をこちらに向けて発射させていた。
いち早くアクエリアスは敵の存在に気付き、水でできた短剣で飛んできた銃弾を弾き返す。
「全く…話している間に攻撃をしてくるとはね…」
周りを見てみると下っ端の数は一人だけでは無かった。
船内や階段からぞろぞろと武装した下っ端達が出てきた。
「コイツら…どこから出てきたの!?」
「詮索は後だ!ステラ、アレルのことを頼んだぜ!」
「うん、まかせて!」
「二人には指一本触れさせねえ!」
剣を構え下っ端達に迎撃の用意する。
「白髪の女を狙え!」
銃口をステラに向ける。
「させるか!」
撃つ直前、ルークスが斬りかかることにより攻撃を阻止した。
「ちっ!邪魔をするな!」
男の周りには炎の壁を作り出しルークスを追い出す。
「ルークス!どいて!」
ミルキーの声に従って後ろに下がる。
すると、男の目の前に炎の纏ったデコイが発生し爆発を起こす。
「ぐわっ!」
一人の下っ端が海へ吹き飛ばされることを確認する。
だが、すぐに別の男が槍を突き立て刺そうとしていた。
「もらったー!」
「ストーンジェム!」
ルークスを横切るように巨大な岩が飛んでいき男を直撃する。
「ごふっ?!」
岩がバラバラに砕け散り男は気絶する。
「叩き潰せ!」
杖を持った下っ端が上空に氷の塊を生成し、ルークス達をまとめて潰そうとしていた。
「水影・斬!」
水で作り出した影を飛ばし素早く斬り刻み破壊する。
細かく刻まれた氷は雪のようにパラパラと降り注ぐ。
「なっ!?」
「がら空きだよ!」
下っ端との距離を詰めて腹部にパンチを入れ込む。
「がはっ!」
「何なんだコイツら!倒してもキリがねえ!」
どこから湧いて出てるのか分からないが、下っ端達を倒しても数が減らない。
隙を出してしまったルークスに背後から下っ端の剣が振り落とされる。
「遅いな」
「アイスニードル!」
斬られる寸前、何本か氷柱が下っ端に当たる。
「ボサッとしない!」
「悪い、助かった」
辺りを見渡すと、敵の数は減ってるのか分からなかった。
「面倒くさいわね…一気に蹴散らしてやるわ!」
魔導書をパラパラと開く。
「アンタ達!ステラのとこに集まってちょうだい!今からどデカい一撃をくれてやるわ!」
ミルキーを中心に静電気が帯び始める。
「雷電を落とし天からの一撃を受けよ!ライトニングロッド!」
下っ端達の床から複数の避雷針が飛び出してきた。
その直後、轟音と共に雷が落ちていき下っ端達に雷撃を喰らわす。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バチバチっと痛々しく音が周りに響き渡る。
「はぁ……はぁ……」
息を荒げながらルークス達に歩き寄る。
「す、すげえ…あれだけの数を一瞬で…!」
魔術を連続に放ちさらに生命エネルギーを大きく使用したため疲れていた。
「ミルキー!大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょ。手を貸してちょうだい」
さっきよりか呼吸が和らいでいた。
爽やかな表情を崩さずにアクエリアスが安心したかのように近付く。
「君のお陰で助かったよ、ありがとう」
「アタシに掛かれば…こんなもんよ」
フリージアが空いている床に軽く手を叩き促す。
「横になる?」
「心配してくれてありがと、ちょっと休憩したら大丈夫よ」
すると、通信越しから男の関心した声が聞こえてきた。
「はえ〜、すげえ威力だな」
ジジジ…とノイズが入れまじりながらリタースを映し出す。
「どうだったかな?俺からのプレゼントは?」
ふざけた態度だが、それに乱されず静かに話す。
「貴方の仲間は全員倒したわ、そろそろ出てきたらどうなの?」
「くくく…お前らにいい忘れてたことがあるんだが…」
ゴゴゴ…と船全体が大きく揺れ始める。
「な、なに?!地震?!」
壁や床に頼らなくても立ち上がれる揺れだが、収まる気配がない。
「俺が用意した物はひとつじゃねえ」
船の揺れが収まると次は青白く長い触手が船の至る場所に這いずり回っていた。
「ま、魔物!?」
「さーて、どうする?」
こうなることも想定内なのか余裕を見せていた。
「……!」
触手は手当たり次第、近くに居た星導光惑星の人間を襲い始めた。
触手に掴まれ海に投げ出される者や、思いっ切り船に叩きつけられたりと、めちゃくちゃに蹂躙されていた。
一人の下っ端がホログラムに向かって怒りと焦りに混じった顔で尋ねる。
「説明しろリタース!」
面倒くさそうに返事をする。
「あ?」
「俺達が時間稼ぎをしてる間にユーピテル様が十二星宮のやつらを殺すんじゃ無かったのか?!」
はぁ…と分かりやすく溜息を出すと、静かに答え始めた。
「あのさ、クズがなに甘えた事いってんだ?」
は?と口をこぼし呆然とする。
「お前らは最初から死ぬためにここへ越させられたんだろ?だったら自分の使命に全うしな!」
「ふざけるなよ…!俺達を駒のように扱いやがって…!テメェだけは」
ドゴォ!
男の話が終わる前に触手によって薙ぎ払われていた。
「………!」
「ま、まて!お前の敵は俺じゃ」
下っ端の命乞いも魔物には通用するばずもなく容赦なく叩きつけられる。
あまりにも悲惨な光景にルークスはどうすればわからなくなっていた。
「なんなんだよ…こりゃ…!」
はははっとリタースの甲高い笑い声が響き渡る。
「全く…どうしようもねえなぁ~、ろくに仕事もできねえのか?コイツらは…まあいい、こんなどうしようもねえ奴らの」
彼が喋り終わる前にフリージアが小さな魚の形をした水を飛ばし機械を攻撃していた。
ジジジと火花を散らしリタースの姿を映し出せなくなっていた。
ボソッとフリージアは怒りの声を漏らす。
「耳障りだよ…」
すっと立ち上がりアクエリアスの隣に進む。
「ルークス、ミルキー!ステラとアレルのことお願い。この魔物は…私とアクエリアスでやるよ!」
触手がどんどんと船の上へ登ってきた。
そして触手の本体と見える魔物の姿が現してきた。
それは巨大な海月の見た目をしていて、鼻をつんざくような腐敗臭を身にまとわせていた。
触手は青白いに対して本体は黒くヘドロがこびり付いていた。
ステラは気分が悪いのかうずくまる。
彼女がこの反応を示す場合は大抵は黒い魔物が原因だ。
「無茶だ!俺も戦うぞ!」
「あまり体力を使っちゃだめ、相手の狙いは恐らく私達の体力を削り切った所で攻撃をしてくると思う。だから、ここは私達に任せて」
「そうそう、どんな魔物が相手でも僕達は負けないさ。僕の実力は君達がよく知ってるだろ?」
気が付けば星導光惑星の下っ端達の姿が消えていた。
全員この魔物にやられたのか?
黒い魔物は次の獲物を発見し攻撃に移る。
「わかった…すぐに終わらせてくれよ!」




