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星の願い  作者: ミケ
第三章 這い寄る星々
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86.敵地

スピカの乗り物は水陸両用のため、汎用性が高く基本的にどこへでも行ける。

相変わらずのスピードで海を渡りマースデン海峡に近付いていた。

「………」

室内に緊張が走る…戦闘前の静けさだ。

耳に入ってくるのは乗り物の排気音と海をかき分ける音だけ…


ステラが窓の外を覗き込むように見る。

「………なにか見えてきたよ?」

すると彼女達の進路方向に一隻の船が停まっていた。

その船はどこにでもある鉄製でスピカの乗り物よりも何倍かデカかった。

「あれは……船?」

「停めて中を見てみようか」

停められそうな場所を見つけ中へ侵入する。

船内はガラリとしており、何も置かれて無かった。


追跡を頼りに先を進んでいると外へ出ていた。

「フリージア、追跡の術式はこの船からかい?」

彼女は立ち止まり答える。

「うん。ここだよ、でも……」

フリージアが仕掛けたはずの術式はこの辺りから反応を示している。

しかし、周りには誰の姿もなく閑散としていた。

「術式を仕掛けた人がいない…やはりバレてたの?」


「…………妙だね」

アクエリアスは辺りを観察しながら様子を伺っていた。

「人の気配がない。誰もいないのか?」

人の気配や物音など、何もなかった。

そもそも物自体どこにも置かれてない。

これでは隠れて奇襲…という可能性も消えていた。

だが、あれほどの結界を発動させてまで、この船を隠そうとしたのには理由があるはず、彼女達は警戒を緩めることなく引き続き調べ始める。

「警戒したほうがいいわね。ステラ、アタシ達から離れないでよね」


周りの異様な静けさに不安を覚え皆から離れないようについて行く。

「うん…」

テーベにもステラの不安が伝わっているのか小さく震えている。

「はぁ〜い、こんにちは、クソ野郎ども。元気にしてたかぁ~?」

唐突に床から気だるそうな男の声が響き出す。

「うおっ!?」

あまりにも急だったので、ルークスは間抜けな声が出てしまった。


すると、床に転がっていた小さな機械から音を発し、男の姿を現す。

その姿は生身の体ではなくノイズの入れ混じった感じに揺れていた。

アクエリアスは水剣を作り出し構える。

「……ホログラムか」

ホログラムだということに気付かれて残念そうにする。

「ありゃりゃ…もう見抜いてきたか。くくく…」

「………」

フリージアは一言も話さずにリタースを睨む。


「そんなに怖い顔をするなよ、せっかく人様がプレゼントを用意してやったというのに」

「そんなことどうでもいいよ!アレルを返して!」

「くくく…返すさ」

彼の言葉と共に船のどこからか音が響き出す。

重そうな扉が開いているのか船全体が揺れていた。

「返してやるが……」

しばらくすると扉が開ききったのか揺れが収まる。

しかし、揺れが収まった瞬間に猛烈な風が襲いかかる。


「ちゃ〜んと、躾が出来ればの話だがな!」

リタースが話終えると、先程まで誰も居なかった場所に黒髪の少年の姿が現れていた。

彼の姿はクラフト峡谷の時と同じ格好をしていた。

だが、あの時と違って黒い鎖は付いてるが拘束はされていなかった。

頭にややこしそうな機械を取り付けられている。

「アレル!」

フリージアが彼を呼び掛けるが反応はない。


様子をうかがいながらアクエリアスは何かに気付く。

「待て、様子がおかしい」

「…ぐ………が………」

船の中に閉じ込めるように半透明の結界が構築される。

「結界!?」

ニヤニヤとしながらリタースは一言だけ言って通信を切る。

「じゃ、あとはがんばれよ〜」


辺りの風がさらに強くなっていく。

恐らくだが、この強風を出しているのはアレルで間違いないだろう。

「うぐぅ……」

なにかに取り憑かれたように苦しみだす。

ジャラジャラと鎖を引きずりながらルークス達へ近付き始めた。

「うがぁ!」

次の瞬間、彼はフリージアの目の前まで接近し、腕に絡まった鎖を薙ぎ払うように振り落としていた。

アレルの動きを見ていたか彼女は軽く避ける。

「まってアレル、わたしだよ。フリージアだよ」


フリージアの声に彼は立ち止まる。

「ぐぐぐ」

立ち止まったまま彼を中心に強風が吹き出す。

「水影・斬!」

隙をつきアクエリアスの攻撃がはいる。

「ぐぎ!」

痛かったのか後ろに飛んで距離を取る。

「アクエリアス!」

「今の彼に言葉を掛けても無駄だよ。彼の頭に付いている装置…」


彼の頭にガッチリと妙な機械が取り付いていた。

「あれが原因でアレルがおかしくなっているようだね」

その機械をよく見てみると、星導光エーテルらしきものだった。

「あれって星導光エーテルなの?!人の頭に直接って…!どういう神経してんのよ?!」

珍しくミルキーが取り乱す。

「これが星導光惑星エーテルプラネットのやり方さ。自分達の事ならなんだってやる、奴らに血も涙もないのさ」


初めてあったときからヤバい連中ということは分かっていたが、まさかここまで…人の命を軽視する連中だとは思わなかった。

以前プルートが忠告してくれたが、あの時までは半信半疑であった。

だが、今ので確信した。

コイツらは放ってはいけない人間達だということに

「それで、どうすればいい?」

ルークスの質問にアクエリアスからは簡単な答えが返ってきた。

「頭の装置を外す」


アレルが威嚇すると同時に強烈な風がみんなを襲う。

「くっ、外すって言ったって、大人しくしてくらねえのか!?」

「無理な話だね。アレルもかなり体力を消耗してる…多少強引にやるしかなさそうだね」

「強引って…戦う気か?」

話している間にアレルが攻撃を仕掛けていた。

「ちょっと、こっち来てるわよ!」

腕を振るい凶器となった風が一直線に斬る。

「まずはアレルの体力を削る!」

アクエリアスのお得意の術により防御する。

「みんな、出来るだけ加減はしてくれよ。彼の救出が一番だからさ」



    ★



「始まったな。さて…どっちが生き残るかな?」

クロイツ海岸の目立たない岩陰に複数のモニターと機材が置かれていた。

モニターにはアレルと戦っているルークス達の姿があった。

「ユーピテルさんも着々と進めてるし…このまま何事もなく終わってくれよ」

「随分とデカい独り言だな?」

「あ?」

彼は不機嫌そうに声のする方に振り向く、そこには絶対悪の象徴プルートの姿があった。


「誰かと思えば…お前かよ…」

そのままモニターに視線を戻し作業にうつる。

「俺は今忙しいんだ、話なら後でしてくれ」

「こんなところで何をしている?」

苛立ちながら答える。

「なんでもいいだろ…」

リタースが持ち込んだ機材を見ていると、そこにルークス達が映っているモニターに目が入り思わず声を出してしまった。

「あいつら…か?」


「あ?知り合いか?」

「………」

「無視かよ」

「人なんか襲って何を企んでいやがる」

「うっぜえなぁ~、お前には関係ねえだろうが」

心無しか態度が悪くなっている。

「………」

「用がないならどっかに行っててくれ、お前みたいなクソ野郎が居ると集中できねえんだ」


何か作業はしているが、プルートの方をキョロキョロと確認をしてきて落ち着きがなかった。

「ふん……」

(相変わらず気の食わねえヤツだ、俺のことをジロジロと見やがって…)

これ以上怪しまれないように距離を離し遠くから観察する。

(だが、今のモニターに映ってたのってあいつらだよな…)


ほんの僅かだがルークス達の姿を確認できた。

具体的な場所までは分からなかったが……

(場所は……どこかの船か?)

(チッ、アイツもかなり気が立ってきてやがるな…離れたほうがいいか)

リタースに刺激を与えないように静かに去っていった。



    ★



「おりゃあ!」

強風が吹き荒れる中、ルークス達は戦っていた。

これだけ強い風が吹いているにも関わらず船はびくともしなかった。

「炸裂する炎よ…ファイヤーボム!」

アレルの足元に炎を纏ったデコイが出てきた。

これは時間差により爆発を起こし相手にダメージをあたえる魔術だ。

「……」


アレルから突風を起こしミルキーが発動させたデコイが虚しく海の向こうへと飛ばされてしまった。

「くっ!みんな、吹き飛ばされないように踏ん張って!」

さっきからステラは飛ばれないように船の壁にしがみつく事に必死だ。

彼女だけではない、これほどの強風に吹かれてしまえばルークス達もいつものチカラを上手く発揮できずにいた。

「くくく……きぎ…」

アレルが苦しそうに唸り始めた。

彼が何かしらの言葉を発した後に来るのは攻撃だ。


「やべえ…いま来られたら避けれねぇぞ!?」

「ぎあー!」

アレルが叫ぶと刃となった風がこちらに飛んできた。

「水影・裂衝!」

床に叩きつけて3本の水の衝撃波を打ち出す。

そのうちの2本は風と相殺を起こし、残りの1本がアレルの顔面にヒットする。

「ぐは」

バシャッと水が弾け飛び彼を吹き飛ばす。


その瞬間、風が急速に弱まり相手に大きな隙ができた。

「風が止んだ!今なら」

ミルキーは素早く魔導書を開き詠唱を始める。

「地を縛り上げるは鈍重の檻…グラビティパルト!」

アレルを中心に床に黒い円形を滲み出し、空中に黒い半透明な線を規則もなく張り巡らせる。

「あ……が……」

体が見えない何かに縛られ重くのしかかる。

「今よ!」

「ごめん!アレル!」

絶好のチャンスを見逃さずフリージアはアレルの頭の装置を手を水にまとわりつかせて破壊する。














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