79.目的
ルークス達と話を終えた後、サングレーザーの街中に歩いていた。
少し強い風が吹き黒服を靡かせる。
(星導光惑星め…一体何を企んでやがる…?あんな連中を狙って何になるっていうんだ?)
広場に着くとプルートはあるものに目が入る。
そこにあったのは黒く枯れ果てた四季連花の姿があった。
(いつ見ても異常な枯れ方をしているな…星導光惑星の話だと数週間前から居るようだし、これも奴らの仕業なのか…?)
(四季連花…基本枯れることのない丈夫な花だが、空気汚染に対してはかなり弱い。あいつらは何かしらの汚染物質をばら撒いているのか?)
しばらくの間、枯れ果てた花を見つめていると、あることを思い出す。
(そういや俺がここに戻ってきた時にサングレーザー付近にリタースの野郎が居たな…あいつ、あんな所で何をしていやがった…?)
チッと軽く舌打ちをして足を動かす。
「あまり関わりたくは無いがアイツから色々と聞き出さないといけねえな」
顔を曇らせながら前に彼と出会った場所へと向かい始めた。
★
クラフト峡谷から少し離れた場所にある小さな小屋から男の声がした。
「はぁ〜酷い目に遭ったな…」
そう呟き小さな窓から外の景色を眺めていた。
小屋の中は何もなく閑散としている。
「何が「酷い目遭ったな」よ。貴方が失敗してくれたおかげで日輪冠を手に入れるチャンスを逃したじゃないの。どうしてくれるの?」
派手なドレスを身繕いしながら文句を言う。
すかさずリタースは反論しながら指をさす。
「いやいや、ちょっと待ってくれよ。俺だってさ、あの短時間であれほどのトラップを仕掛けてくるとは思わなかったんだよ。というかユーピテルさんも油断しまくってたじゃないすか…人のこと言えるんすか?」
「なに?私に楯突くつもり?そもそも貴方がちゃんとしてたら、こんな事にはならなかったのよ」
「えー…」
明らかに不満そうな声を出す。
暫く考えた後、彼女が口を動かし立ち上がる。
「……過ぎた事を言っても仕方ないわね。行くわよ」
「どこに?」
「マースデン海峡に決まってるでしょ」
ある場所を指定されて苦笑いを浮かべる。
「えっと…まさかアレをもう使う気…なんすか?まだ試運転の段階で実行のレベルにも到達してないのに――――――」
彼はなにか言いたそうにするが、そんなのをお構い無しに遮る。
「そんなもの私がどうにかしてやるわ」
「どうにかって……マジで言ってるんすか?やめておいた方が――――」
癪に障ったのか、少し怒声の混じった声を出す。
「私を誰だと思ってるの?こんなことで躓いてたら七星人の名が折れるわ」
「いやまぁ…それはそうなんすけど…でもユーピテルさんって七星人の中でも最近入って来た新人のほうっすよね?別にそこまで――――」
ギロリと無言で男を睨む。
恐怖なのか面倒いだけなのか反抗せず素直に返す。
「あ、いや…何でもないです…」
★
プルートが去ってから一日が過ぎた。
かくじが休憩をとり、体力を回復させていた。
「………」
小さな物置小屋の中に一人の少女がいたり
菜の花色の短髪をゆっくりと揺らし、窓から外の様子を見ていた。
明るい青空のワンピースを着ていたが、それとは真逆に彼女の顔は暗くなっていた。
しばらく様子を見ていると彼女の背後から灰色の軍服の格好をした男が話しかけてきた。
「…少しは落ち着いたらどうかな?」
彼女は振り向かず俯き答える。
「うぅ…ごめん」
「君が不安になる気持ちは解かる。けど、こういう時だからこそ落ち着いて行動しなければならない」
「………」
彼女の隣に近付き、一緒に外の景色を見る。
「大丈夫さ。彼を助けられる…そのために僕達が居るんだ。君は何も心配をする必要はないよ」
少し黙った後、顔を上げて綺麗な青空を見上げる。
「……ごめん…ちょっと後ろ向きになってた」
アクエリアスに視線を合わせて、微かに微笑みを返す。
「励ましてくれてありがとね」
入口の扉が開き空色のメイド服の少女が入って来た。
「あ、二人ともこんなところに居たんですね。皆さん出発の準備が整いましたよ」
彼女に振り向き返す。
「そうなのかい?僕達も向かうから少し待っててくれるかな?」
「分かりました。皆さんに伝えときますね」
ニッコリと笑い軽く手を振ると扉を閉めて出ていった。
「さて、行こうか」
フリージアは小さく頷く。
「うん」
★
オレンジ色が特徴の厚服をパタパタと手を動かしながら、少女は岩に背を預けて待っていた。
小鳥のさえずりや自然の香りに包まれる。
しばらく時間が経つとサングレーザーから二人の姿が見えてきた。
二人だと分かると、すぐに駆け寄り話しかける。
「やっと来ましたね~どこをほっつき歩いていたんですか~?」
「すまない。まさかこんなにも早く準備が出来るとは思ってなかったからさ」
本来の予定時刻より集まっていた。
茶色の革手袋を付けた手を軽く動かしながら、フリージアの様子を見る。
「それよりもそっちの準備は大丈夫なのか?予定より早いからさ」
みんなを見渡しながら、少し申し訳無さそうに答える。
「うん。私ならもう大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「そう言うなって、お前が大丈夫ならそれでいいんだ。で、これからアイツらを追い掛けるんだろ?確かこの前、追跡用の術式がどうのこうのって言ってたよな?今のところ大丈夫なのか?」
フリージアは両手を前へ出すと、青みのかかった半透明の術式が浮かんできた。
「うん…まだアイツら気づいてないみたいだよ」
「へぇー?意外とバレないんですね~☆わざとなのか間抜けなのか…どっちでしょう?」
ふわふわの帽子を弾ませて確認をする。
「それで今、あの人達は何処に?」
術式を弄りながら探し出す。
「ちょっと待ってね……うん?ここって…」
フリージアが目を細めて戸惑い始める。
彼女の反応にミルキーが心配そうに口を開く。
「どうしたの?何かマズイ場所でも行ってるの?」
あっ…と口を漏らし首を横に振る。
「ううん…そうじゃ無いけど。どうやらあの二人は今マースデン海峡に行ってるね」
「マースデンかいきょう?それってどこにあるの?」
ステラの疑問にアクエリアスが喋る。
「ペルミア大陸とマーフスティ大陸の間にある海峡だよ」
「ペルミア…?マーフスティ…?悪い何言ってるか全然さっぱりなんだが…?」
初めて発音した口振りにミルキーは溜息をこぼす。
「アンタ…地理に疎いって言ってたけど、そういうレベルじゃないわよ」
人を心底バカにしたような目つきで彼を見る。
「うるせえな…他に出掛けることが無かったんだから仕方ねえだろ」
半ば開き直っている彼に続きステラはしょんぼりする。
「私も何言ってるのかわかんない」
「アンタは記憶喪失だから仕方ないわよ。まあいいわ、簡単に言うと、アタシ達がいるここはペルミア大陸でファールバウティのある場所がマーフスティ大陸って言うのよ」
簡易的な説明に関心する。
「ほ〜ん、よく知ってるな」
「いやこれ常識だから知らないアンタがおかしいだけ」
「そこまで言うことねえだろ」
二人をよそにレグレスが思考を巡らせる。
「マースデン海峡か。だがあそこには特別何かあるわけでは無いが…?」
「ふむ…彼らにとって何か重要なものがあるか、それとも僕達を誘い出すためにわざと向かっているのか…どちらにせよ、そこに行かないと分からないね」
未だにフリージアの追跡術式がマースデン海峡に止まったままである。
本当に気付いていないだけだろうか?
しかし、ここで立ち止まるわけには行かない。
アレルを救出すりためにも、罠であろうが今は突っ走るしか無い。
ルークスは覚悟を決め口に出す。
「罠でも何でも今はそこに行くしかねえんだ。俺は行くぜ」
彼の言葉にステラも「おー」と手を上げて話す。
「アレルを助けるために私も行くよ!」
「そう言ってもらえると助かるよ。スピカ、準備の方をお願いしてもいいかな?」
手をひらひらと動かし元気よく答える。
「はいは〜い☆すぐに持ってきますね~☆」




