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星の願い  作者: ミケ
第三章 這い寄る星々
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70.少年の記憶2

「今日どうしようかな…あの魔物…一日経ったし、もう居ないと思うけど…」

あのスライムに出会ってから一日が経って昼頃、縁側でぼけーっとしていると、背後から誰かが声を掛けてきた。


「なにひとりでブツブツと言ってるの?」

プルートの姉、ユースが怪訝そうな表情でこちらを見つめていた。

「あ、お姉ちゃん。別に何でもないよ。それよりも僕に何か用?」

「はいこれ」

ユースから渡されたものは小さな鎌だった。


「えっ……また草むしり…やりたくないんだけど」

「わがまま言わないの!ほら、いくよ!」

プルートの腕を掴み強引に連れて行く。

「ちょ、ちょっと引っ張らないでよ~」

ユースに流されるまま、家の周辺の雑草とりに行くのだった。


あれから時間が経ち…

「はぁ…疲れた…」

縁側えんがわに腰を下ろし、ひと休憩しているとユースが近付き声を掛けにきた。

「プルート?何勝手に休んでるの?まだ終わってないでしょ」

「だって、疲れるもんは疲れるんだもん…ちょっと休ませてよ〜」


愚痴を吐くように言うと、ユースは諦めたのか家の中へ向かう。

「はぁ、仕方ないなぁ」

「どこいくの?」

ジトーっとした目でプルートを見ながら答える。

「誰かさんがバテてるから水を取りに行くの。すぐに戻るから待っててね」


ガラガラと玄関の扉の音を立てて水を取りに行った。

「………」

(今、周りには誰もいない……ちょっとだけ…ちょっとだけなら大丈夫だよね…?)

昨日の出来事を忘れられずにいたプルートは、あのスライムの事が無性に気になりだし、ユースが水を取りに行っている隙にあの場所へ向かっていった。



        ★



念の為に道から少し外れ草むらの中にひっそりと移動しながら前へ進む。

「たしか…この辺に居たはず…」

昨日の記憶を頼りにその場所に辿っていると、あるものが目に入り身をかがめる。

「!!」

(いた!あのスライム!)


昨日見た淡いドロドロ状ピンク色のスライムがそこに居た。

(あれ?あのスライム……動いてないのかな?)

あれから一歩も動いていないのか昨日と全く同じ場所にいた。

(ゆっくりと近付けば気付かれないかな?)


そろ〜りとスライムに向かって接近を始める。

何事も無くスライムの目の前まで近付くことが出来た。

恐る恐るスライムを突くと…

「わあぁ、すごくぷるぷるしてる…」

見た目はこんなりドロドロとしているのに、触感はぷるぷるとゼリーみたいな触り心地となっていた。


「こんだけ触ってるのに動かないね…もしかして死んでるのかな?」

その瞬間スライムが突然と蠢き始めた。

「うわあ!コイツまだ生きてる…!」

油断しきっていたか、尻もちをつき間抜けな声を出してしまった。

その間にもスライムはゆっくりと動いてはいたが、こちらに襲う気配はない。


「あ、あれ?襲ってこない…?」

するとスライムは何か奇妙な動きを見せ始めた。

「え?なに…?」

いきなり変な動きをしたため困惑するプルート。

次第にその動きをよく観察してある事が頭の中をよぎる。


(もしかして…お腹…減ってるの?)

そう思ったプルートはズボンのポケットに手を入れ、板チョコを取り出す。

「…コレ…食べる?」

スライムに取り出した板チョコをポンッと乗せた。

すると、スライムに乗った板チョコが水の中に沈むかのように、どんどんとスライムの中へと入っていった。


「あ、板チョコが…スライムの中に入っていった」

消化しているのかスライムの中で板チョコがみるみると溶けていく。

板チョコを溶かし淡いピンク色のスライムが少し濁った茶色に色変わりをした。

さっきまでノロノロとしていたスライムの動きが活発化する。


「あれ?なんか元気になって――――――」

ベチャッと嫌な音と同時に自分の右足にひんやりとした何かが乗っかってきた。

「ス、スライムが引っ付いて…!まさか僕を食べようと…!」

そう喋っている間にもスライムはプルートの下半身を包み込み、次に上半身へと登り始めた。


「このッ!離せ!」

しかしスライムの力は想像していたものよりも強く、引き剥がせなかった。

「!?」

スライムがプルートの体全体を包み込む

(がはっ!?息が…出来ない…!)

抵抗するがスライムは離してくれる事もなく、プルートを消化しようとする事も無く、ただただ彼を包み込んだままじっとしていた。


「う、う〜ん……」

あれからどのくらい時間が経ったのだろうか?

「ここは…!」

体を起こし辺りを見渡す。

「僕は確か、あのスライムに食べられて…」

プルートはさっきまでの出来事の記憶を元に頭の中を整理する。


「でも痛みはないし…それにあのスライムもどこにも――――」

プニっと何かゼリーみたいな柔らかいものが腕に当たる。

そこに振り返るとさっきのスライムがそこにいた。

「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!」

思わず悲鳴を出し、不意をつかれ焦りが込み上げ上手く足を動かせないでいた。


「く、くるな!このっ!」

土を手に取りせめてながらの抵抗をする。

「……!」

しばらくスライムに土をかけているとある事に気づく。

「……あれ?」

プルートは抵抗をやめて様子を見る。


「何もしてこない…?」

ただ呆然としていたが、相手側から何もしてこないと分かると不思議と恐怖心が薄れていった。

「ねえ、キミって僕の事を襲わないの?」

そもそも魔物に人間の言葉が通じるのか分からないままスライムに問う。

するとスライムはその言葉に答えるようにピョンピョンと跳ね始めた。

「え?!僕の言葉がわかるの!?」

スライムの動きにそう捉えたプルートは、そのスライムと不思議な時間を過ごした。



       ★



スライムに敵意が無いことを知り、スライムと話し掛けていたが…

「あ、もうこんな時間だ。帰らないと…」

楽しい時間はあっという間に過ぎていき夕暮れとなっていた。

さすがに帰らないとマズイと思い、立ち上がり帰ろうとすると、スライムもついて来ようと跡をつけてきた。


「あ!キミ付いて行っちゃだめだよ。大人しくここで待っててね」 

村人は魔物を恐れている。いくらスライムとはいえ立派な魔物だ。

このまま連れて帰れば怒られること間違いなしだろう。


「また明日、お菓子持ってくるからさ」

その場で思いついた言葉でスライムに言い残し走って村の方向に走っていった。



        ★



「ただいま〜」

玄関の扉を開けると、そこにニコニコの笑顔でユースが待っていた。

「おかえり〜プルート。楽しかった?」

可愛らしい笑顔に優しく話し掛けているが、プルートは理解していた。

間違い無く殴られると。


「あ……」

プルートが適当な言い訳を考えているとユースは笑顔を崩さずに問いかける。

「何か言うことはないかな?」

「えーっと……」


人差し指でポリポリと頬をなぞりながら考える。

「………」

相変わらず笑顔のままのユースは無言で答えを待っている。

姉の謎の気迫に押され頭に考えが思い付かず、諦めたかのように笑顔で一言を放つ。

「えへっ☆」

その瞬間、プルートに怒りのゲンコツが下った。







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