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星の願い  作者: ミケ
第三章 這い寄る星々
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69.少年の記憶

あれは今から約12年前のことだ。

この星コラプサーでは大規模の戦争が続いていた。

いつから起きた戦争か何のために戦っていたのかは今では誰も知らない。

そんな戦時中に、とある小さな村が山奥の中にポツンと存在していた。


村から少し離れた場所に黒髪の男の子が曇った夜空を見上げながら呟いていた。

「今日も暗いね…いつになったらキレイな星空が見られるんだろう…」

ぽけーっとしていると、彼の背後から誰かが話し掛けてきた。


「またこんなところにきてたの?もう遅いから帰るよ」

水玉模様のワンピースを着た女の子が怒っている雰囲気を出しながら近寄ってきた。

またか…と言い出しそうに彼女を手で追い払う。

「まだここにいるから、お姉ちゃんは先に帰ってて」

「プルートを置いて先に帰れないわよ…魔物だって出てくるし…ほら!」

ガシッと腕を掴まれて強引にプルートを引っ張り上げる。


「あっ!て、腕を引っ張んないでよ〜!」

「プルートが意地になって帰らないからでしょ?」

「う〜…だって…」

「だってじゃないよ!昨日魔物なんかと遊んで、お父さんに怒られたばっかでしょ!とにかく、もうここに来ちゃダメだからね!」

強めの口調で注意をされて、反省したのか少し俯きボソッと話す。

「うぅ〜…お姉ちゃんのいじわる……」



       ★



来た道を辿り、村まで戻っていた。

姉に引っ張られるまま玄関の扉を開けて姉は元気よく声を出した。

「ただいま〜」

姉の声に反応し、台所で料理を作っていた母が顔を出す。

「あら、おかえり。ユース、プルートはどうしたの?」


「わたしの後ろにかくれてるのよ。ほら」

そう言うとユースはササッと移動し、プルートを前へ立たせる。

「あ、ただいま…」

プルートの様子にすぐに気付いたのか、母は溜息をこぼし口を開く。

「はぁ…またあそこに行ったのね?」


的確な言葉にビクッと反応してしまう。

「う、ううん。行ってないよ」

「プルート。嘘はダメだよ。お母さん、実はね―――」

隣に見ていたユースが代わりに説明を始める。


「それでまた例の魔物と遊んできたのね…ユースは先に自分の部屋に行ってて、プルートはこっちで待ってなさい。お父さん呼んでくるから」

そう言うと母は台所の火を止めて、父を呼びに奥の部屋へと向かって行った。

「………」

そろ〜りと外へ行こうとするプルートに声を掛け、肩をがっしりと掴む。

「どこいくのプルート?」


ユースに振り向き、苦笑いを浮かべながら答える。

「見逃してよ…」

「ぜったいダメ!」



       ★



しばらくして父に呼ばれ小部屋へ連れ込まれていた。

目の前には厳格な父が立っており、プルートはその父の威圧に収縮するように縮こまり座っていた。

「お、お父さん…」

少々ビビりながらも話し掛ける。


少し間があけたあと、父の口が開く。

「プルート…お前はまた、あの場所に行ったのか?これで何回目だ」

「3回です…でもお父さん!あの魔物は―――」

「プルート!」

プルートの声をかき消すかのように荒らげ見つめる。


「……………」

再び俯き黙り込んでしまう。

「いいかプルート。魔物は人間を襲う。この村も何人の人が魔物に襲われ命を落としている。お前も知っているはずだ魔物は恐ろしい存在ということを。あの魔物ことは忘れなさい」

「で、でも…あのスライムは…!」

「お前の言うスライムも、いつ襲ってくるか…プルート、お前は今日から村の外の外出を禁ずる」


「え?それって村の外に出ちゃダメってこと…?」

「そうだ。さて、話は終わりだ。プルートは自分の部屋に戻って少しは頭を冷やしてきなさい。お前がどれだけ危険な事をしているか…しっかりと考えなさい」

父はそう言い放ち部屋から出ていった。

「は、はい…」

プルートも何も言い返せずに、ただ返事を返す事しか出来なかった。



       ★



父に怒られ自分の部屋に戻っていたプルートは、ベットの上に寝転がりながら呟く。

「どうしてみんな分かってくれないんだろう…あのスライムは悪いスライムじゃあ無いのに…」


今から1ヶ月前…プルートがスライムに会った日、この日は村から少し離れた場所に来ていた。

本来であれば村の外に出掛けることは魔物が出てくる危険であり、大人でもあまり出掛けることは無かった。


しかし、プルートは魔物の脅威はおろか、魔物の姿すら見た事が無かった。

常に周りの人達に魔物は危険だと言い、村の外に出してはくれなかった。

だが、それが裏目に出て外の世界や魔物の事に興味が湧いて出てきてしまっていた。


そんな好奇心から行動に出て、夜な夜な村人たちの目を盗み上手いこと村の外に出ていた。

「……だれもいないな…」

何回目かはもう数えていないが、やはり村の外に出る時は緊張をするものだ。


「よしよし、村の外に出れた。あとはあの場所に行くだけだ」

山奥にある村からさらに上へ登り、過去に誰かが通っていたのか小さな道ができていた。

道なりに進んで行くと、小さく開けた場所に辿り着く。


「今日も晴れてたし、きっと星空もキレイにみられるぞ」

ずっと村の中で過ごしてきたプルートにとって、キレイな星空を見られる事がなによりも楽しみだった。

「よいしょっと……」

ゴツゴツとした岩の上へとよじ登り、いつもの場所へと座り込む。


「ふぅ~…着いた着いた」

この場所からは山から離れた大きな街が見えていた。

街全体はライトで照らされていた。

こことは違って向こうは楽しそうだな……そんな事を思いながら夜空を見上げる。

「星空はこんなにキレイなのにどうして僕達がこんなに苦労してるんだろ……」


「戦争のせいなのかな……はぁ……」

小さく溜息をこぼすと、草むらからガサガサと誰かが動く音を耳にする。

「だ、だれ!?」

音のする方向に視線を向けて辺りを見渡す。

ここは村から離れた場所、村人も魔物に恐れて滅多に来ない場所だ。


「ま、まさか魔物!?」

こんな所に来るのは自分くらいだと思い、真っ先に魔物の仕業だと想像し身構える。

すると、音の鳴る草むらからゆっくりと何かが這い出てきた。

「あ、あれって…!」

その何かの体全体はドロドロと粘液状になっていた。

淡いピンク色に中央部分にコアらしきものがプカプカと浮いていた。


「ひぃぃぃぃぃ!!ま、魔物だぁぁぁぁあ!!」

目の前の魔物の姿に頭の中が真っ白になりパニックになる。

「どどどどどどうしよ!?はやく逃げなきゃ!」

来た道を走り出そうとした瞬間に魔物が来た道へとズルズルと移動をする。

「あ…ああ…!帰り道に魔物がいて帰れない…!」

こちらに気付いていないのか魔物は道のど真ん中に居座っていた。


ここでプルートは一旦深呼吸をして自分を落ち着かせる。

草むらに隠れ魔物の様子を伺う。

「あ、あれって…ス…スライムだよね…」

(たしか魔物の中でもチカラの持たない魔物だって本に書いてあった。全力で走れば逃げ切れるかな…)

ここの道は急斜面となっており、無理に遠回りしようとすると山奥で迷ったり、最悪足を踏み外して崖から落ちてしまうかもしれない。


幸いにも目の前にいるスライムは、かなり遅く今でも全く動かずにじっとしていた。

「し、心臓がバクバクしてきた…おちつけ…ぼく……走り出せば行けるはずだから…!」

ほんの僅かスライムが道の端に移動をした瞬間に、プルートは自身に喝を入れるように言い聞かせ走り出す。

「っ!今だッ!」


素早くスライムを横切る。自分でも信じられないくらい早く走り、無我夢中に村の入口まで戻っていた。

「はぁはぁはぁ……ここまでこれば…大丈夫……」

必死に走っていたのかしばらくの間、上手く呼吸が出来ずにいたが時間が経つにつれ落ち着きを取り戻し、後ろを振り返り、魔物が付いてきていないか確認をする。

「よし、来てないな」


特に何も無かったのでホッと安心した。

「は〜…まさか、あの裏道に魔物が出てくるなんて…」

普段から村人から魔物が出てくると聞いてはいたが、まさか本当に出会ってしまうとは思ってもいなかった。

「……走って疲れたし今日はもう帰ろう」

そう言うとプルートは、ゆっくりと自分の家へと帰っていた。











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