65.すれ違うところだった
ルークスがレグレスに会いに行くため、広場に向かって行く同時刻……
「さて…と。そろそろ行くとしようか」
サングレーザーの宿で休みを取り、今から王都に向かおうとしていた。
「待っていろよ…今この宵闇の皇帝が――――」
気合いを入れていたプルートだが、何かに気付き言葉が詰まる。
「ん?あれは……!」
黒髪の男に焦茶色のエルフ…!間違いない。あれはルークスとミルキーの二人だ!
あの二人だということを理解すると素早く動き彼らの元に走り出し意気揚々と登場する。
「ルークスゥゥゥウ!!」
「あ?なんだ……?」
明後日の方向から大声が響き、徐に顔を上げると人影がこちらを通り過ぎ小さな風を巻き上げる。
「うわっ!?ビックリしたー!一体なんなのよ―――――ってアンタは!」
乱れた髪を直し口を開ける。
「くくく……久しぶりだな…ルークス。俺の事は覚えてるか?」
プルートの事を覚えていたのか手を構えながら話す。
「お前は…!絶対悪の………えーと…何だっけ?」
「絶対悪の象徴!プルートだッ!人の名前くらい覚えておけ!」
「あ〜そうだったそうだった。あと宵闇のなんとかって奴だろ?」
「宵闇の皇帝だ!チッ…まあいい、てっきり王都に残ったままだと思っていたが、まさかサングレーザーまで来ていたとは……泊まって正解だな。危うくすれ違うところだったぞ」
ブツブツと何かを呟く彼にルークスは広場に急ぎたいのか早口に喋る。
「で?俺達に何か用か?いま忙しいからさ、できれば後にしてほしいんだが」
そんなルークスを構わずに腕を組みながら話し始める。
「ふん…俺がわざわざここに来た理由……言わなくても分かるだろう?」
「はいはいそうねー。アタシらもう行くから一人でやっときなさい」
ミルキー達が通り過ぎようとすると、すかさず通せんぼの形で行く手を阻む。
「ちょっと待て!なぜそうなる!?」
「うっさいわね……さっきも言ったけどアタシ達は忙しいの!アンタの相手をしてるほど暇がないのよ」
「チッ…仕方ない。じゃあ早めに終わらせるから俺の質問に答えろ。あのスライムはどこにいる?」
「スライム?知らねえな」
「知らないはずが無いだろう…ちょっと待て!どこに行く!?」
少し目を離した間に通り過ぎていた。
「広場に行くのよ。じゃあ」
彼の言葉を無視し、足を止めず広場に行こうとする。
「「じゃあ」じゃねーよ!俺の質問に答えろと言ったはずだ。さっさと答えろ!」
二人の態度に段々と苛々してきたのか、声を荒げ始める。
「はあ?なに言ってんの?さっき答えたじゃない。知らないって、そういうわけだから行くわね」
「なっ…!それは答えるとは言わないだろ。いいからさっさと奴の居場所を言え」
「知らねえもんは知らねえんだ。諦めてくれ」
そう言い残しプルートを置いて広場へと向かって行った。
呆然としたプルートは思考を巡らせる。
(このまま言い合っても埒が明かねえ。どうする…?そうだ、いいこと思いついたぞ)
ある事を思い付き彼らの後をつける。
「………」
「………」
広場へ向かうルークスとミルキーの後をつけるプルート。
互いが無言になりつつも歩き続ける。
何だかんだ前へ進むと広場の噴水前にある草のアーチまで来ていた。
後ろを軽く振り返ると彼はまだついて来ていたようだ。
「いつまで付いてくるつもりだ?」
「奴を見つけ出すまでだ」
ここまで来ると意地でもテーベを見つけ出し倒そうとする意思がこちらまで伝わってくる。
「何も話さなくなったから諦めたのかと思ったんだけど…しつこいわね…」
「なに足を止めている。さっさと歩きな」
高圧的な態度にムカッとくる。
「はぁーぶん殴りたいほどマジでムカつくんだけど」
「相変わらず野蛮なエルフだな。俺は今まで魔物共を駆逐するため色んな場所に飛び回り数少ないエルフを見てきたが、お前みたいな暴力的なエルフは初めてだ」
十年前に終結した戦争の影響により、人間は他種族に嫌われる存在となった。
その為、人間が関わったどの国にも他種族は近付こうとしない。
プルートがペラペラと喋ってる間にルークスは次にどうするべきか悩んでいた。
(これじゃあステラのところに帰れねえな。どうしたもんか…)
「はいはい、暴力的なエルフで悪かったわね。どうすんの?コイツずっと付いてくつもりよ」
「まあ、とりあえずレグレスのとこに行ってから考えるか」
「む?誰かに会うのか?まあそれもいいだろう。時間稼ぎとしては丁度いい」
草のアーチの道を抜けて噴水前まで足を進めていた。
広場の噴水の周りには草のアーチの道が4方向にわかれており、ルークスが来た方向はサングレーザーの入口となり、右側には昨日サダルメリク達と一緒に話し合った花草の丘という飲食店がある。
その奥にもまだ行ったことないが、花草の丘以外に店があるのだろう。
左側には住宅地だろうか?様々な建造物が建っている。
そして前側にはフリージアと会ったクネクネとした変な形の展望台がある。
広場の4方向にわかれている間に小さな池があるが、プルートはその池にある気になるものを見つめる。
「いつ見ても綺麗な場所だ…ん?この花…枯れかけているのか?」
「何そんなに驚いてんだ。花なんていつか枯れるもんだろ」
プルートがいつもと違った顔付きになり話す。
「お前、この花の事を知らないのか?」
二人の間を割り込み覗き込む。
「これって四季蓮花よね。へぇ〜これって枯れる事があるのね」
「四季蓮花?何だそりゃ」
「四季蓮花は文字通り一年中咲いてる蓮の花よ。基本的に寒さと暑さに強く、余程の事が無い限り枯れる事が無いんだけど…」
池には四季蓮花と思わしものがプカプカと浮いている。
淡いピンク色で花の甘い蜜の匂いが漂ってくる。
その中でも1つのだけ半分黒ずんできている四季蓮花があった。
ルークスに花の知識はない。見た感じだと黒くなってきているので枯れているのだろう。
「黒くなってきてるな…枯れかけてる証拠なのか?」
しかし、ルークスの思っていたものと違う答えをプルートは返す。
「いや、これは違う…何だ…これは…?」
プルートも花の知識はあまりないが、それでも、この花の枯れ方は異常だと察知している。
「貴様達…ここで何をしている」
ルークス達の背後から重厚感のある静かな男の声に反応し振り返る。
「おん?レグレスじゃねえか。丁度よかった…お前から聞いときたい事があったんだ」
昨日の夕暮れの時にちょっとしか話してなかった金髪碧眼の男、レグレスが立っていた。
上下黒服に背中には重そうな大剣を担いでいた。
「それは構わないが……この男は誰だ」
するとプルートは少し格好つけた話し方で自己紹介をする。
「俺は絶対悪の象徴の一員…プルートだ」
「絶対悪の象徴……魔物を忌み嫌い殺害する組織か…。オレの名はレグレス…それで、オレに何か用か」
「ああ、実は人探ししててな…ポーシャっていうやつを探しているんだが…知ってるか?」
「ポーシャ……星導光を使わず体術だけで戦う年老いた人間の事か」
ダメ元で訊いて見たが、彼の言い方から何か知っている様子だった。
「知ってるのか!?詳しく教えてくれ」
「白髪頭の白髭を生やした人間だ。見ればすぐに分かる。だが、タイミングが悪かったな…今やつはサングレーザーにはいない」
「いないって…じゃあどこにいるのよ?」
「砂の国…ファールバウティにいる。少なくとも今すぐ会いに行ける距離じゃない」
ファールバウティは今いる大陸から海を渡り別大陸へ移動しなければならない。
彼の言うとおり今すぐ行ける距離ではない。
「そうか…仕方ねえか。どうするミルキー」
「なにがよ?」
「やる事が無くなちまった…コイツも居るしフリージアに会ってみるか?」
クラーワからお願いされた黒い箱はしばらくの間、調べられそうにない。
それにソルの言っていた事もいまいちなので、具体的にサングレーザーで何をやればいいのかも分からない。
自分達のやる事がなければ今はフリージアの事をやってもいいんじゃないか?そう考えたルークスは次にフリージアに会うことを決意する。
「そうね。それがいいと思うわ」
これにはミルキーも賛成する。
どの道プルートを連れて拠点に帰るわけにはいかない。
「彼女に会うのか?なら、クロイツ海岸に行くといい。今日も彼女はそこに来ている」
「クロイツ海岸?ま〜た分かんねえのかきたな…どこにあんだ?」
「サングレーザーから出て北側に進めば着く。近い場所にあるから迷う事は無いだろう」
「ありがとなレグレス。ミルキーも一緒にくるか?」
「このまま帰ったらコイツが付いてきそうだし、とりあえず行くわ」
「俺をコイツ呼ばわりとはな…ふん、まあいい…」
「オレも一緒に同行しても構わないか?」
「レグレスもか?いいぜ。お前が来てくれたら頼もしいからな」
手をパタパタを煽りながら暑苦しそうに話す。
「なーんか急に暑苦しくなったわね」
「暑い…?そこまで気温が高い訳では無いが…」
レグレスは手のひらを前へだし周りの気温を身体で感じ取る。
「そーいう意味じゃ無いわよ。こんな所で話しても何も無いし早くクロイツ海岸に行きましょ」
「帰ったらステラにしばかれそうだな」
ステラとの約束を破り、フリージアの問題を解決のため彼女に会いに行くことをし、クロイツ海岸へ向かう。




