63.フリージア
「お〜!すげぇ綺麗だな〜!」
塔の内部に入り長い螺旋階段を登って行った先に展望台となる開けた場所に着く。
白を基調とし円形状となっておりシンプルな構造となっていた。
少し進むと左右に二階に上がる階段があり、そこに簡易的な屋台が複数あった。
遠くを見渡す望遠鏡が一階に3つ、二階に2つ設置されている。
休憩出来る様にオシャレな丸テーブルと丸い椅子、それにベンチもあるようだ。
「ここの展望台からサングレーザー全体を見渡す事が出来るからね。さて、彼女は……」
早速彼女を探し始めるがアクエリアスは迷うこと無く、やや右側に丸い椅子に座っていた幼い女の子に話し掛ける。
「やあフリージア。今日もここにいたんだね」
菜の花色の短い髪を振り返ると共に揺らし前髪のぱっつんが印象的な女の子がアクエリアスの事を見ると、すぐさま椅子から降りて歩き出す。
「あ、またきた……」
そう小さく呟くと彼を横切り立ち去ろうとする。
「声をかけただけなのにどうして逃げるかな?」
「フリージアさん。ただ私達は貴方の事が心配で…」
サダルメリクも声を掛けるが彼女に止める効果は無く急ぐ素振りを見せながら足早に移動する。
「ごめん。本当になにもないから。ごめん」
最後に謝り螺旋階段を下って行った。
「まって!フリージアさん!」
サダルメリクの呼びかけも不発に終える。
「行っちゃったね」
「ここ最近、ずっとこの調子なんだ。前まではもう少し話してくてたんだけど、今じゃあんな状態でね。どうしたものか」
「見た感じ明らかに避けてたのは分かるけどよ…あんなのどうやって聞き出せばいいんだ?」
話し掛けただけで、ああなってしまうと聞き出すどころか会話にもならない。
「適当に話してればいけるんじゃないかな」
こんな時に適当なことを言い出す。
「適当って…マジで言ってんのか?自慢じゃねえが俺はこういうのは得意じゃねーんだ」
ルークスはこういった話し合いが苦手とする。
「それは大丈夫だよ。彼女、多分君達に対してはそこまで口は堅くないと思うから話していればきっとどうにかなる」
どうやらさっきの適当な物言いは案外本気で考えて言っていたようだ。
そして彼の言葉通りならルークス達を頼る前提でいるようだ。
「思いっ切り投げやりじゃねーか。まあいいけどよ…あんま期待するなよ」
一応、ここまで来る間、彼に助けられているので、その借りを返す名目で動くつもりだ。
「結局協力するのね〜。まぁ別に良いけどさ。でもするにしても明日からにしてよね。今日は色々とあって疲れたし」
星導光惑星とか訳のわからない連中に襲われ疲れ果てていた。
今日はもう宿に泊まって休みたいところ。
「ミルキー疲れたの?わたしはまだまだ動けるよ」
ブンブンと拳を振るい元気アピールをする。
「アンタは動けてもアタシは無理なの。とにかく休める場所を探すわよ」
「今から宿を探すのかい?ここって意外と宿の数が少ないから苦労するよ」
「マジ?」
「ああ、そこで1つ提案があるけど、もし君達でよかったら僕達の拠点へ来てみないかい?彼女から悩みを聞き出すのは少々骨が折れるし、何より時間が掛かることに間違い無しだからね。それに美味しいご飯だって食べれるんだ…こんな良い話、他には無いと思うけど?」
確かに今のルークス達にとってはいい話だ。
しかし彼の事だ…何らかの事を企んでいるかもしれない。
ルークスはその事を気にしていると「ご飯」のワードに過剰反応したステラが目を輝かせながら話しかけてきた。
「ご飯…!ルークス、ミルキー」
だが疑り深いルークスは首を縦に振らず怪しく見ていた。
「そこまでしてくれるのは有り難い事だけどよぉ…なーんか怪しいよなー?」
「ここまで来てまだ僕を疑うのかい?前も言ったけど今回は君達と戦うことはしないよ。敵対する理由がないからね。そのかわり僕達の拠点に来るなら30万ミラは諦めてもらうよ。僕達側も無限にミラを使えるわけじゃないしね」
さすがのアクエリアスも今回ばかりは本気で困っているようだ。
「いちいち宿代を払うのも面倒だし、まぁ良いわ。じゃあアンタ達の拠点とやらにお邪魔させてもらうわね」
「信用するしかねえか…案内してくれ」
「ああ、来てくれ。拠点はこっちにある」
展望台の頂上から降り始め広場の方向に足を運ぶ。
★
「ここだよ」
あれから彼に案内されるまま豪邸としか見えない家に辿り着く。
サングレーザーの入口に入って右側の街道を歩き、その突き当りに左側に曲がり、そのまま直進した先にこの豪邸へと着いた。
他の場所と比べるとヒッソリとした場所なので中々落ち着く所でもあった。
「ほ〜…すげぇでけぇな…お前らはここに暮らしてるのか?」
「ははは、まさか。これでも仮拠点だよ。一時的なものでしかない」
これ程の大きさの家にもかかわらず仮拠点だと言うのだ。
「おじゃましまーす!」
アクエリアスの許可なしに勝手に入っていくステラ。
ステラが入っていくと続いてルークス達も入っていく。
玄関と廊下が繋がっているのか、左右に長い廊下が枝分かれしており真正面に金髪の黒服に青の細長い線が際立たせていた男が花瓶の手入れをしていた。
その男はステラ達に気付き、こちらに振り向く。
綺麗な碧眼の色をした男は呟くように聞く。
「……誰だ…」
すると後から来たサダルメリクが気さくさに声をかける。
「あ!レグレスさん。サングレーザーに来てたんですね。来るなら来ると言って欲しかったです」
レグレスと呼ばれた金髪の男は申し訳なさそうにする。
「サダルか…すまない…伝えるのを忘れていた」
「アンタ誰なのよ」
ミルキーが聞くと男は重厚感のある声で答え始めた。
「オレはレグレス。貴様達は…?」
「俺はルークス。で、こっちのエルフが――――」
「天才魔術師ミルキーよ」
「わたしはステラだよ。よろしくね」
いつも通り三人が自己紹介を終えると、レグレスはステラの名前に引っ掛かり何か妙に納得した顔で薄く笑う。
「ステラ?……ふっ、なるほどな…道理で彼が連れて来る訳だ」
「…?どういうことだ?」
レグレスの言葉の意味が分からない。一体なにを言っているんだ?
そんなルークスの考えを遮るようにアクエリアスが口を開く。
「あー別に気にしなくてもいいよ。彼はそういう人だからね。それでレグレスは何しに来たんだい?」
「アレルの様子を見に来た。あいつは今…どこにいる?」
「アレルシャさんですか?そういえば最近見てないですね。アクエリアスさんは知ってますか?」
「いや、見てないね。ふむ…」
腕を組み考え込む。
レグレスがどうやらアレルシャという人物を探しに来ていたようだ。
「ねぇねぇ。アレルシャって誰なの?」
ステラはアレルシャについて聞いてみる。
「フリージアさんの友達ですよ。普段フリージアさんと一緒にいる事が多いですけど、最近アレルシャさんの姿を見ないんです。何かあったんでしょうか?」
フリージアの友達がアレルシャ…そしてそのアレルシャの姿が最近見ない。
これは偶然なのかそのフリージアの様子もおかしい……
「話を聞いてもいまいち分かんねえけどよ…そのアレルシャって奴が原因じゃねえか?ソイツが消えてからフリージアの様子がおかしくなったとかさ」
的確に言ってみたがアクエリアスは特に驚く事なく返す。
「それも考えられる。でも彼の場合ちょっと特殊なんだ」
「なにか訳ありってわけ?」
「そうじゃない。彼は気まぐれでね。大体は一緒に居るけど、彼の気分次第で現れて消えて…そんな感じで彼の動きが読めないんだ」
「そのアレルシャって子はここにはいないの?」
ステラの問いにレグレスがすかさず答える。
「アレルはサングレーザーの何処かにいる。ここに来る途中…奴の気配がした…確実にこの辺りに居る筈だ」
「とにかく。そのアレルシャって奴を探せばいいんだな?」
「ああ…そうしてもらえると助かる」
「あれ?どこか出掛けるんですか?」
レグレスが外へ出掛けようとする。
「ついでに彼女の様子を見に行く」
「行っても無駄だと思いますよ。私達ですら話してくれませんでしたし」
「お前がどう言おうが関係ない…」
そのまま足早に出掛けていった。
「あ、ちょっとレグレスさん!…はぁ…相変わらず人の話を聞かず出て行きましたね」
「彼にも考えがあるんだろう。さてと、僕達も今日のところは休むとしようか」
「そうですね。フリージアさんの事はまた明日にしましょう」
「ふわぁ〜……ねむたい…」
大きな欠伸をだして目をこする。
右側の廊下に移動し、ちょっとした広間に出る。
「ん?アンタもう寝るの?じゃあアンタの分の夕食はアタシがキッチリもらうわね」
ミルキーの横暴な言葉にステラの眠気が一気に目が覚める。
「はっ!ご飯!ダメ!わたしがたべるから!」
「ははは、そう急がなくてもちゃんと用意するよ。向こうに食堂があるから、先に行って待ってくれるかい。僕も準備してから行くからさ」
「準備?まさかお前が料理を作ってくれるのか?想像しただけで笑えてくるんだが」
「酷い言われようだね。でも残念。僕が作るわけじゃないんだ。行ってからのお楽しみってやつだよ。ほらメリー。三人の案内を頼むよ」
「わかりました。みなさん、こちらに…」
明日からポーシャの捜索またはフリージアの様子を見に行く為、今日はゆっくりと体を休めるルークス達であった。




