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星の願い  作者: ミケ
第三章 這い寄る星々
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55.ステラと少女

あれから夕暮れまで歩き続き、マイヤー湖畔と思われる場所まで来ていた。

舗装された道はここで途切れていて、その代わりに目の前の湖を渡れるために小さな橋が掛けられている。

「ほわぁ〜。きれ〜い」

ステラは前に行き率直な感想を言う。


「ふぅ…とりあえずマイヤー湖畔の手前まで来れたわね。もうこんな時間だし早速ヒマリアから貰った簡易結界を起動させましょ。ステラ、テーベを離れさせて」

魔族であるテーベを一旦避難させ装置の起動を促す。

「うん。テーベちゃんコッチ」

黒い魔物の影響か人の姿が無い。

だが一応念の為、道の外れに装置の起動をさせに行く。

ヒマリアから貰った簡易結界を持ち、どう起動させるのか思い出しながらいじる。


「えーと、これをこうだっけ?」

ガチャガチャ…

あの時に教えられたヒマリアの言葉はとっくに忘れ適当に触る。

テーベを避難させて、こちらに戻って来たステラが様子を見ながら話す。

「…何も起きないね」


「うん?こうか?」

ガチャガチャ…

再度装置の起動に試みるが、装置は動かず苦戦する。

「あーもうっ!何やってんのよ!ちょっと貸して!」

痺れを切らしたミルキーが装置をぶんどり手際よく動かし、簡易結界を起動させる。


起動した簡易結界は瞬く間に瓶覗色かめのぞきいろの壁が生成され、さらに寝床のためのテントや食糧品など、一夜を過ごすのに必要な物が次から次へ出てくる。

「お〜。さすがは天才魔術師様だな」

「わわっ?!なんか色んなものがでてきたよ?!」

「テントが2つに食いもんは…ありゃ?思ったよりか質素な感じだな?」


「当たり前よ。安全性を重視に作られてるんだから…逆にどんなものと想像してたの?」

「もっとこう…豪華なもんだと…」

「んなわけないでしょ。ステラ、テーベが入れるか試してみて」

簡易結界に過度な期待は今後しない方がいいだろう。

無事に結界を展開させ、次にテーベが結界内に入れるか確認をする。


「うん。連れてくるね」

ぷるぷる…

テーベを引き連れ結界の目の前に止まる。

「テーベちゃん行ける?」

ピョンピョン!

いつも通りに飛び跳ねて杞憂と思わせるぐらい、難なく入る事が出来た。

「お!普通に入れたな」


何の異変も無かったテーベをジッと見つめる。

「………」

(簡易結界は主に魔物から身を護るために作られたもの…こうも簡単に入れるなんて…コイツ、スライムの見た目をしてるけど本当はスライムじゃないとか…?)

色々と思考を巡らせるが……

「考えてもわけ分かんないわね…」

仮にテーベが魔族では無いのなら一体どういう存在なのだろうか?


ミルキーの様子に不審と思ったステラが近づき話し掛ける。

「どうしたの?」

「ううん。何でもないわ。それよりもご飯にしましょ。コイツも無事入れたことだし」

「そうだな。準備するか」

「うん!」

ぷるぷる…

三人が夕食の準備を進めてしばらく経ち……


地べたにシートを敷き、すでに調理された料理を皿に盛り付ける。

「質素な感じだと思ったけど、案外といけるな」

見た目は普通だが味はルークスが想像した以上の美味しさだった。

「もぐもぐ」

相変わらずステラは黙々と食べる。

「王都の店と比べるとだいぶ味が落ちるけど、なかなかね」

ぷるぷる…

テーベも野菜を中心に取り込み始める。


ここでルークスはステラにある事を聞く。

「なぁステラ。そういえばあの時、お前はどこ行ってたんだ?」

今日ステラが一時的にどっかに行っていたことを尋ねる。

「それアタシも気になってたの。呼び掛けた時に道の外れから出てきたし、いったいどこに行ってたの?」

街道から外れた場所…右側にある森から出てきていた。森に何かあっただろうか。


この問いにステラは答える。

「ほんはほほほはっへはほ」

「口のあるもの全部飲み込んでから話しなさい」

ミルキーに注意され、食べ物を飲み込んでからもう一度話す。

「女の子と会ってたの」

「女の子?」

「うん。ルークスとミルキーが話してる途中に気になるものを見つけてね。それで草むらの方に行ったんだけど……」



         ★



数時間前……マイヤー湖畔へ向かっている途中、ルークスとミルキーがサングレーザーについて話し合っている時、ステラは草むらから一瞬だけ眩しい光が放ったのを目撃した。

「ん?なんだろ?」

無性に気になったステラは、光が放った森へ入る。

ガサガサ…草木を掻き分けながら進むと、落ち着いた少女の話し声が聞こえてきた。


「はぁ…コイツも駄目か…こんなちっぽけなガラクタじゃあマトモな物なんて創れやしないよ…」

何かブツブツと声は聞こえるが上手く聞き取ることが出来ない。

「…?だれかいるの?」

少女に気付かれないように小声で話す。

ピョンピョン!

「て、テーベちゃん?」


急にテーベはステラの頭から降りて何か訴え始める。

ブルブルブルッ!!

今までかつてないほどの荒ぶりに困惑する。

「わわっ!テーベちゃん!どうしたの!?」

思わず声を上げてしまい奥にいる少女に気付かれてしまった。

「うん?誰かいるの?」


「あ…」

ピョンピョン!

間に合わないと思ったのか、テーベはステラを置いて逃げてしまった。

「まって!テーベちゃん!」

テーベの後を追いかけようとしたが、背後から不意に話し掛けられる。

「……おや?迷子の子かな?」


長い白髪を翻し後ろを振り向くと肩まで伸ばした臙脂色えんじいろの髪をした少女が立っていた。

土色のショートパンツに上着は緑色の植物を連想させるような格好をしており、その上を羽織るように科学者の白衣のような服を着ている。

頭に植木鉢に似た帽子を深く被っている。

ショートパンツの部分に何やら実験道具みたいな物をガチャガチャと音を鳴らしながらぶら下げている。


見た目はまだ幼い少女なのだろうか、ステラよりも身長は少しだけ低い。

「えっと…あなたはだれ?」

ステラの問いに少女はニッコリ笑い答える。

「ボクかい?ボクはシャーリィ。キミは?」

「わたしはステラ。ステラ・バイナリーだよ」


彼女の名前を聞き、シャーリィの表情が驚いた風に変わる。

「ん?ステラ・バイナリー?キミが………ふぅ〜ん。偶然って本当にあるもんだね」

しかし、今のステラにとってシャーリィの表情や言葉はどうでも良かった。

何故なら、彼女の左手に持っている物騒なモノに目がいって集中できないからだ。


「え、ええっと…シャーリィ?その手に持ってるものって……」

ステラに言われシャーリィはその物騒なモノを持ち上げる。

少女の身長と同じくらいの刀に、その剣先から赤黒い液体がしたたっていた。

不気味だ…とにかく、この刀には安易に触れてはならない…そうステラは感じ取っていた。


「ああこれか。別にキミが気にする事じゃないよ。それよりさ、ボクと一緒について来る気は無い?もしついて来てくれるならお菓子をあげるよ?」

刀を地面に突き刺し、白衣のポケットをあさりあるモノを取り出す。

これは…四角いチョコレートか?

「お菓子…!あ、でも、知らない人についちゃダメってルークスが言ってたんだった」

危うくお菓子に釣られるところを間一髪でルークスの言葉を思い出し、思いとどまる。


そんな賢い彼女にある事を指摘する。

「知らない人?アハハっ!キミはひとつ勘違いしてるよ」

「勘違い?」

「うん。だってキミとボクはもう、友達なんだから」

どうやら二人はもうすでに友達になっていたようだ。

あまり実感がないステラは繰り返し聞く。

「友達なの?」


「そーだよー。互いに自己紹介して、そんでもって〜お喋りする。これってもう立派な友達の証拠だよ。だからボクは知らない人じゃなくてキミの友達。友達についてくる事はいい事なんだから…ね?一緒に来てくれるよね?」

懇切丁寧にそれっぽく説明されて納得してしまう。

「そう言われるとそうかも…うん!シャーリィについてく!」


順調に話が進み機嫌よくなる。

「うんうん。いい子だね〜。じゃあ早速――――――」

「ステラー!いたら返事してくれー!」

シャーリィの言葉を遮り街道からルークスの呼び掛けが響く。

「あ!ルークスだ!」

ルークスの声がする方向に振り向く。

「チッ…この気配……人間か?」

さっきまで落ち着いたシャーリィの声が嘘のように怖い声色でボソッと話す。


「シャーリィ?」

不審に思ったステラは再度振り向き確認をする。

すると何事も無かったかのように優しく答える。

「何でもないよ。そんな事よりキミの友達が探しに来てくれたみたいだよ?早く行っておいで」

「シャーリィも一緒に行こうよ」

せっかく出来た友達、ルークス達に紹介したいと思い誘ってみる。


「アハハ。嬉しい誘いだけど、ボクは少しここでやる事があるから…また今度ね」

「え〜、でも…」

「でもじゃないよ。うーん…そうだね〜、じゃあ次に会った時、キミの友達と一緒に楽しく遊ぼう。それでいいかな?」

彼女との約束にステラは満面の笑みで交わす。

「うん!絶対だよ!」


「うん。約束…行っておいで」

「じゃあまたね!シャーリィ!」

ステラは元いた場所に帰っていく。

「またね〜♪」

シャーリィは彼女の姿が見えなくなるまで手を振り見送った。

「あの方向……サングレーザーに行くのかな?一応アクエリアスに連絡しておくか」

そう言うと白衣のポケットから奇妙な玉を取り出し、上空へと飛ばしていった。



        ★



そして時は戻り簡易結界の中で食事をとりながらその話をしていた。

「それでね。シャーリィとお友達になったの」

ステラの話を一通り聞いてきたが、シャーリィという少女、どう考えてもヤバい奴と感じていた。

「なんかソイツ危なくないか?サラッとお前をさらおうとしてるし…」


ルークスの物言いにステラは怒る。

「シャーリィは私の友達だよ!悪口禁止!」

「友達って…いいステラ。初対面の人に自己紹介して軽くお喋りするだけで友達とは言わないの」

ミルキーまでルークスと同じ事を言ってきたが、ステラはめげずにシャーリィを庇う。

「むぅ…ミルキーまでそんなこと言うの?シャーリィはいい子だよ!」


少し興奮してきた彼女に落ち着くように促す。

「分かったから落ち着け。とりあえず今後とも、ひとりで勝手な行動は止めるようにな」

念の為、一応釘を差しておく。

「うぅ〜…分かった…」

「しかし、シャーリィ…ねぇ…」

ルークスは手を頭に当てて考える。


「ふにゅ?どうしたの?」

「いや、そのシャーリィって名前、どこかで聞いたような気がしたんだが………うーん……気の所為か?」

思い出そうとするがミルキーの声でかき消される。

「なーにブツブツ言ってんのよ?さっさと手伝いなさい」

食事は終わりミルキーひとりで片付けをしていた。

「あ、ああ悪い。やるよ」


「私も手伝う〜!」

ステラも手伝おうと近づくが…

「アンタはそこでジッとしてなさい」

「え〜?なんで〜?」

「アンタが手を加えたら余計に時間が掛かるから、そこで大人しくしてて」

ステラ自身、悪気はないのだが、彼女が何かやろうとすると大抵は失敗しやらかしてしまう。

そのため、ステラを手伝わせるわけにいかなかった。

「う〜…じゃあテーベちゃんと遊んでくるね…」

トボトボと歩きテーベの元へ行っていった。









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