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星の願い  作者: ミケ
序章 始まり
6/139

06.迷いの森と宵闇の皇帝

ルークス達は買い物を済ませ、ナイアドから馬車に乗り5時間、途中休憩や昼食を摂りつつ迷いの森へ向かう同時刻……


王都コーディリアにとある一室に二人が話していた。

「で? そっちはどうなんだい?」

窓を開け景色を見ながら青髪の男は尋ねる。


「え? ええっと……その……」

あまり自信のない声で話す紫髪の女の子

あどけない顔立ちをし、足元まで伸びたツインテール

白と黒のバランスのとれた学者服をゆらし、申し訳なさそうにしていると……


「その様子だと何も得られなかったみたいだね。」

「うぅ……ごめんなさい」

「謝る必要はないよ……逆によくやってくれている」

青髪の男はニッコリ笑顔をしながら女の子の頭を優しいくポンポンと撫で部屋から出ようとする。


「も、もう行くの?」

おどおどとしながら声をだす。

「ああ、仕事の時間だ……君は ゆっくりと休むといい」

彼はそう言い部屋を後にした。

  



          ★





迷いの森へ着いたルークス一行

馬車から降り御者に3000ミラを払う。

ここを通り抜けば王都コーディリアに着くわけだが…


「ここがマヨイの森?」

「迷いの森って言われているけど3年前に一本道に建設されたから道を外さない限り迷うことはないよ」

「3年前にそんなことしてたのか?」

「あれ?いってなかったっけ?」

「まあいいか。これなら思ったより早く着きそうだ」


迷いの森へ入ると静寂に包まれる……わけではなく

奥から爆発音が鳴り響き、風が吹き荒れる。


「わぁ〜〜!」

コケかけるステラにルークスがすかさず抱き止める。

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」

「それにしても何なの? 今のは?」


すると奥で誰かが魔物と戦っているようだ。

髪の上半分が黒色、毛先になるにつれ白髪にわかれている。右目を覆い尽くすぐらい前髪が長く、上下黒服の奇抜な格好をしている。  


その男の前には巨大なサソリ型の魔物の姿が見える。どうやら森を騒がしくしている原因はコレだろう。


ヒマリアは声を震わせながら口を開く

「な…なによ…アレ…あんなの見たことないわ…」

震える彼女を傍らにルークスは覚悟を決める。


「ヒマリア!ステラのことは頼んだ」

ルークスはそう言い放ち魔物のもとへ走っていく。


人の3倍ぐらいあろう大きなサソリ型の魔物と細剣を突きつける構えをしながら、互いに様子を見ていた。


「おい!あんた大丈夫か!?」

ルークスが男に駆け寄る。

「誰だ?」

「助けにきたぜ」

男は興味なさそうに言う。

「……足を引っ張るなよ…」


サソリ型の魔物が巨大な尻尾を振るう。二人はなんとかかわし反撃をいれる。

「くらえっ!」

ガキンと鈍い音が空気中に伝わる。


「かてぇな…斬れるのかコイツ」

「フ……俺が手本を見せてやろう」

男が自信に満ちた声で放つと詠唱を始める。


しかし男が詠唱中、魔物はズドンズドンと地響きしながら近づく。

「獄炎に眠る大地の力…枯れ果てた土を蘇り…闇夜をはら――――――――」

詠唱中の男に魔物が襲いかかるが、それに気付きサッと避ける。


髪を整えながら呆れたふうに言う。

「やれやれ……少しも待てないのか? それとも俺の実力がわかってヤケになったか?」

ルークスがすぐに否定する。

「いやいや、明らかにお前の詠唱が長いだけだろ」


(こうなれば俺が時間稼ぎするしか……)

ルークスは魔物に斬りつけるが魔物を傷つけるどころかこちらを無視して黒服の男に向かい始める。


「コイツ、さっきから俺ばっかり…お望み通り、すぐに焼きはらっ―――――」

声が途中で途切れる。


「うおっと?!」

男はそこらの石ころにつまずき綺麗に転倒。

魔物はすぐそばまでに接近していた。

(コイツ……明らかにあの男を狙ってやがる! さっきから斬りつけてはいるが、まるで効いてねぇ!)


「まって」

少女の声が響く

「ステラちゃん!」

直ぐにヒマリアが守りにいく。ルークスも彼女に続きステラの前へ立つ。


「………」

ステラが魔物に向かって歩きだす。

「ステラちゃん!その魔物は危ないわ!近づいちゃだめ!」

「まてヒマリア!」

ヒマリアの肩を掴む

「何!? 今は待ってる場合じゃないでしょ!」


「ここは…あいつを信じて待ってくれないか?」

二人が話し合っている間、ステラは魔物の目の前まで近づき声を掛ける。

「じゃまをしてごめんね……どうしてこの人をねらうのか聞かせてほしいの……」

魔物は不自然なほどに動きを止める。


……しばらく無言が続くと、魔物が鋏をシャキシャキと鳴らし始める。

「………うん」

不思議な光景だ……まるでステラと魔物が会話をしているのかと錯覚を覚えるくらい自然な流れだ。


この世界で魔族と人間は敵対関係であり、会話なんてありえないこと、出会えば即殺し合いが始まる。

当然魔族の中にも温厚な性格をしている魔族もいる。

だが、そんな魔族ですら何かのキッカケで襲いかかる。


「わかった……ごめんね……いたかったよね……今治すから」

魔物は足に出来た傷を差し出す。

ステラを中心に小さな魔法陣が浮かぶ

「星の輝きよなんじを癒やせ」

魔物の傷があっというまに消えていった。


魔物は満足したのか、そのまま森の奥へ去っていった。

するとステラは黒服の男に近づき、珍しく怒った表情で言い放つ。

「ねえあなた!どうしてあの子にひどいことをしたの!」

「は?」

男は間抜けな声をだす。


「ちょっとまてよステラ……何が何だかこっちはサッパリだ……説明してくれねぇか?」

ルークスの声に少し落ち着きを取り戻したステラは口を開く。


「ごめんね……ちょっと理不尽だと思ったからつい……」

「理不尽?」

「うん…あの子はね……普段この森のおくに静かに暮らしてたらしいけど、最近へんな人達がきて住処を荒らされて森の入口あたりまで逃げてたらしいの」

ヒマリアが小さく呟く

「人間……」


ステラは続けて話す。

「そこでね。休憩してるところにこの人に攻撃されて凄く傷ついたの……でもあの子は疲れてたから相手にしなかった……でもこの人は何度も何度も攻撃して……それで……」

「それでこいつに襲いかかった……ってわけか」


黒服の男は反論する。

「おかしな事を言う……そもそも相手は魔物だ。この世界にて魔物は絶対悪だ…消えるべき存在! この宵闇よいやみのこう――――――――」


会話を遮るように口を挟む

「ちょっと!それ言い過ぎじゃない!?」

「もういい……私さきにいく」

ステラはこの場を逃げるように足早に先に進んでいく。

「ステラちゃん!まって!」

ヒマリアも彼女の安全のため追いかけて行った。


ルークスは男に一言

「次からは気をつけるんだな、宵闇よいやみのなんとかさん」

ステラを追いかけ走って行った。


一人残された黒服の男は

宵闇よいやみの皇帝だ! まぁいい所詮はそこらの人間だ……俺の考えが理解できん凡人………やれやれ、これだから俺みたいな天才は……」

大きな独り言をし森を後にする。



        

        ★




迷いの森を抜け、少し先に進み二人の元に走る。

こちらに気付いたステラは頭を下げ謝る。

「ごめんなさい……私その……」

「謝るんじゃねーよ、別に気にしてねぇしな」


「ねぇルークス、この子一体何者なの? 魔物と会話したり、治癒術?みたいに傷を治せるし……」

「正直今のところ、何もわかってないんだ」


ヒマリアは考え込むように頭を傾げる

「……治癒術……ね」

(あの子なら、何か知ってるかも)


「二人とも、ちょっといい?」

「ん?なんだよヒマリア」

ステラを見つめながら話す

「ステラちゃんの治癒術?は私達では分からないけど、私の知り合いに魔術に詳しい子がいるから、その子に聞けば術のことは分かるかもしれないわ」


「わたしのことが、わかるの?」

「まあ確実にって訳では無いけど、でも聞かないよりかはマシだと思うよ」


「なるほどな、で そいつはどこにいるんだ?」

「私達が目指してる所、王都コーディリアよ! 着いたらすぐに連れてくるからね」


ルークス達は周りの安全を確認し、テントを張り野宿をする。

次の日に備え早めに眠りにつく。







         


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