49.安静
「やっとここまで来たか。長かったな…」
ルークスとテーベは迷いの森と王都の間にある街道を歩いていた。
ここまでに来る途中、アルゲティとスピカの二人に襲撃されるイレギュラーが起きたが、無事にコーディリアまで来ることが出来た。
「悪いなテーベ。お前はここで待っててくれ」
ここから先は守護星導光がある為、テーベを王都の中には入ることが出来ない。
悪星魔物の仕業かどうかは不明だが、以前にも、この街道には小さな守護星導光があったのだが、今は黒ずんでおり守るチカラはもはや無いものとされている。
その証拠に今もテーベは何の変化も無しにここまで入れている。
「うーん。まだあいつが狙ってくるかもしれねえし…どこかいい隠れ場はないかな?」
先程アルゲティに襲われた事を考え、もし仮に来たとしてもそう簡単に見つかりそうに無い場所に隠れる必要がある。
「お?いい感じの所発見」
街道から少し外れ、草むらが茂ってる場所に朽ち果てた木の幹がいい感じにテーベが入れる空間があった。
「テーベ。ここに入って待っててくれ。一応こまめに様子を見てくるけど」
ルークスの言葉に従い頭から降りて、その小さな空間に入っていく。
「悪いな。さてと…俺も行くか」
テーベを隠れさせ、ルークスは一人で王都に足を運ぶ。
★
王都コーディリアに戻って来たルークス。
ミルキーの家がある中央区に向かっていると、ある違和感に気付く。
「さてまずはミルキーの家にっと……ん?」
中央区には星群騎士団の者達が武装した状態でうろついていた。
「騎士団の連中が集まってるな?何かあったのか…?」
少し進むと中央区の地面や一部の家に何かぶつけられたのか、壊された跡がみられる。
ここで何があったんだ…?
「おいおい、何なんだこりゃ…ん?あれはヒマリアか?」
呆然としながらも足を進めていると、騎士団の者達の中に見慣れた人物が近くにいた。
モフモフの茶髪の人物はこちらに気付き驚きの表情で声をかけて来る。
「ルークス!?戻ってたの?」
「今戻って来たところだ。なあ、騎士団のやつらが集まってるけど何かあったのか?」
「私も丁度君から聞こうと思ってたの。でもその前にステラちゃんの様子を見たいからルークスもついてきて」
中央区が戦った跡があり、ステラの様子を見たいの言葉に反応する。
「ステラに何かあったか?!」
「ええ、歩きながら話すわ」
ヒマリアは歩き出しルークスは後をついて行く。
中央区から直線に進む。おそらく騎士団本部に行こうとしているのだろう。
歩きながらこの惨状の出来事について話す。
「ルークスが王都から出て1日経ってぐらいかな、突然赤髪の男がステラちゃんを狙ってきて攻撃してきたの。それで私達騎士団とミルキーで応戦したんだけど、思いの外その男が強くてね…負けそうになったんだけど、そこでステラちゃんが魔術を撃ってくれたおかけでどうにかなったの」
「赤髪の男…まさか…」
ルークスは赤髪の男について覚えがある。
「そう、君がナイアドで戦ったあの赤髪の男。まったく…話してくれるって言っておきながら何も話してくれないんだから、今度こそ話してもらうわよ?」
あの日はステラを余計な事に巻き込ませないために、話さずにいたが、それがズルズルと引きずりいつの間にか話す事を忘れていた。
騎士団本部に入り白黒を基調とした大理石の床がある広間を抜け廊下に出る。
「わりぃ、完全に忘れてたわ。それとステラが魔術を使ったって本当か?」
今までステラは治癒術しか使ってこなかった。
そもそも治癒術自体、使える事がおかしいのだがステラの性格上、相手を傷つけるような性格で無い事は知っている。よほどの事があったんだろう。
「本当よ。正直私も驚いてるわ。まさかあの子にあんなチカラがあったなんて…」
全員が戦って歯が立たなかった相手にいとも簡単に吹き飛ばしてしまった。
「お前やミルキー達は大丈夫なのかよ?俺も一度は戦ってるから分かんけど、アイツ…めちゃくちゃな強さだったろ?」
階段を上り、3階まで上がる。
ルークスも一度は手合わせをしている。
あのままヒマリア達の助けがなければ殺られていた。
そう考えるだけでゾッとする。
「まあね。でも大丈夫よ。そこまで酷くやられた訳じゃないしね。それよりもステラちゃんの方が心配ね」
「アイツ…そんなに調子が悪いのか?」
再び廊下に出て歩く。
1階の廊下とは違い赤色の絨毯のようなものが敷かれている。
「さっき言ったけど、ステラちゃんが魔術を放ってあの男をふっ飛ばしたんだけど、その後に倒れちゃってね…ホントあの時はかなり焦ったわ‥」
「今は大丈夫なのかよ?」
「ええ、今は安静と赤髪の男がまた来るかもしれないから、星群騎士団本部にいさせてるわ」
ヒマリアは立ち止まりこちらに茶髪を翻しながら振り向く。
「ここよ」
コンコン、木製の扉に2回ノックをする。
「入るわよ?」
念を押し部屋へ入る。
部屋の中にはベッドで座っているステラとその隣にミルキーの姿があった。
1階の客室とは違い質素な部屋となっていた。
真ん中に大きな白い絨毯が敷かれており、簡易的な木製のタンスや小さなテーブルがある。
パッと見て、病室と思わせる部屋にみえていた。
「あ、ヒマリアだ!それにルークスも!帰ってたんだ」
ステラが手を振り無事だと伝える。
「ステラ大丈夫か?どこも痛む場所はねえか?」
真っ先ステラに近寄り、声を掛ける。
「うんっ!大丈夫だよ」
不満気にジッとこちらを見る。
「アタシの心配はないわけ?」
「ミルキーも大丈夫か?心配したんだぜ?」
様子を見る限り思ったよりか元気そうだった。
「取って付けた言い方ね。まあいいわ、それよりもアンタの方はどうだったの?」
「ああ、じつは―――――」
ルークスはフェーベ村での出来事を説明した。
村で出会った不思議な男ソル、村近くにあるアルカーナ遺跡、その内部に守護兵器の事、そして村周辺に謎の結界が貼られていたこと。
現時点でルークスが知っている事を大雑把だが説明をする。
「えーと…今の話をまとめると、村の近くに遺跡があって、村の周りには謎の結界があると…で、ソルって人はステラちゃんの事を知っていて、でも何故かその事を教えてくれなくてその人からサングレーザーに行けば分かるって言われて、それでそこに行こう…てなわけよね?」
ヒマリアが辿々しくも簡潔にまとめる。
「ああ、本当は明日から行こうと思ったんだが…まあこんなんじゃあ、しばらくは動けねえと思うし、ステラの体調次第ってとこだな」
キャンサーが襲ってくることなど微塵も考えては無かった。
次からは気を付けなければ……
「私なら大丈夫だよ!」
ブンブンと空気に向かって殴り始める。
ミルキーが手を押さえ止める。
「ちょっと!無理に動かないの!」
ヒマリアがキャンサーのことについて訊く。
「…ところでルークス、あの赤髪の男の事はどこまで知ってるの?」
「知ってるって言ったって多分お前とあんまり変わらねえと思うぞ。俺が知ってる事と言えば、アイツはキャンサーて名前で、アクエリアスの仲間であって…まぁ、とにかく強えぐらいだな」
ジトーっと疑うような目で見る。
「ルークス。真面目に話して」
苦笑いを浮かべながら返す。
「真面目って…俺が知ってるのはコレだけだぞ?」
「本当なの?」
「ああ」
彼の反応からして本当にこれしか知らないだろう。
「え?ちょっと待って、これじゃあの赤髪のことが何も分からないじゃない!…はぁ、ルークスってこういう時に頼りにならないわね」
ここで何らかの情報を貰い、次にあった時に対策をしてやろうと思っていたが、これでは対策どころか1から調べなければならない。
「知らないだけでこうもめちゃくちゃに言われるとはな…」
二人が言い合っている間にミルキーは立ち部屋から出ようとする。
「…後はアンタ達に任せるわ。研究で忙しいから」
「ちょ、ミルキー!……あいつ唐突に出ていったな」
ルークスの声を無視して一目散に出ていった。
「ステラちゃんに治してもらったとは言え、ミルキーも頑張ったからね。本当は私達が対応すべきことなんだけど…」
「別にお前らの所為じゃねーよ。でもまぁ、なんでこのタイミングでアイツが来たんだ?何か目的地があったのは間違いじゃあねえと思うが…?」
ナイアドの時もアクエリアスと協力して月星石を手にしていた。
「それなんだけど…どうやらステラちゃんの頭に着けてるソレを狙ってたみたいなの」
ステラは両手で髪飾りを触れながら話す。
「うん…盗られそうになった」
「ああ?その変わった髮飾りのことか?」
月と星がある謎の髪飾り、不思議な物と前々から思ってはいたが…奴等がこれを狙う理由が見当たらない。
「でもコレを盗ったところで何に使うんだ?」
月星石のように攻撃に特化したものでは無い事は分かる。
コレを狙うということは何らかの理由があるのだろう。
これもソルから訊けばよかったと少し後悔する。
「それは知らないけど…とにかく今は無事だった事に喜びましょ?」
今はとやかく考えても仕方ない。
騎士団も含め今回の襲撃で負傷者は出たものの、死亡した者は一人も出なかった。
「そうだな。俺はしばらくここに居るから仕事に戻ったらどうだ?」
「助かるわ。じゃあ後は任せたわ」
ヒマリアは中央区で破壊された街道や建物を確認を取る為に再び中央区へ足を運ぶ。




