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星の願い  作者: ミケ
第二章 新たな道標
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46.明日に備えて

ソルと別れてフェーベ村に戻ってきたルークスとテーベは、早速村長のクラーワに報告にしに行く。

「よぉ、じーさん。帰ってきたぜ」

家の前で待っていたのか木製の椅子に座りぼけ~っとしていた。

「おぉルークスか。どうだった?遺跡とやらはあったか?」


クラーワの雰囲気からして遺跡なんて無いと思っているのだろう。

(余計なこと言って混乱させるのもアレだし、じーさんには悪いが黙っておこう)

「どうもこうも何も無かったぜ」

「まぁそーだろうな。こんな田舎に遺跡なんてあるわけ無いのにな。そういえばあの男が見当たらないんだが…」


あの男…おそらくソルの事だろう。

「ソルなら他の遺跡を見て回るって先に旅立ったぞ」

「そうなのか?せっかくなら泊まっていけば良かったのにな」

ため息を混じりながら残念そうに話す。

「アイツも事情があんだろ。俺ももう行くわ」

「こんな時間から出発するのか?」

ソルとの遺跡探索で何だかんだ夕方過ぎまで時間が経っていた。


「違えーよ。コイツのご飯の時間。さすがの俺も今日は疲れたしな…明日に出発するよ」

さすがにこの時間からの出発はよろしくない。

それにテーベとの約束がある為、今日は自宅で休み明日出発する事にした。

「まぁ、ゆっくりしていけ…急ぎすぎて体を壊したら元も子もないからな」

「言われなくても分かってるよ。また明日の朝、挨拶に来るからよ、早めに寝ろよな」



       ★



ルークスは小さな広場まで来ていた。

ぷるぷる…

テーベは小刻みに震え始める。

ソルもステラもいない為、テーベの翻訳をできる者がいない。この動きも感で当てるしかない。

「落ち着けって、ちゃんとパンを食わせてやるから…」


あるパン屋の前で足を止める。

コンコン、とノックし店に入る。

「邪魔するぜ〜」

小さな店の中に一人のエルフの女の子が白いエプロン姿で座っていた。

誰が入ってきて反応し呼びかける。


「いらっしゃい…て、ルークス!?久しぶりだね〜」

椅子から降りて桑茶くわちゃ色のショートヘアに両サイドの大きな赤いリボンがふわっと風に乗りこちらに寄る。

「よっ、イオ。元気にしてたか?」

「うん私は元気だけど…ソレって…」

イオと呼ばれた低身長の女の子は返事をするが、テーベの存在に少し後ずさりする。


「ん?…ああ、安心しな。こいつは魔物だが悪い奴じゃあ無いんだ」

ピョンピョン!

テーベ自身も安全と言いたいのか頭の上で飛び跳ねる。

「あっ、そうなの?ルークスが言うんなら安心だね。えーっと、ルークスがここに来たって事は、パンを買いに来たのかな?」


「ああ、俺はいつものやつを頼むぜ」

テーベのついでに自分の夜ご飯も買いに来ていた。

「ゴメンね。柔らかパンケーキは売り切れたの。でもクロワッサンならあるよ!…焼き立てじゃないけど…」

彼女のパンは、村の中ではダントツの人気を誇っている。

閉店間近に来ていた為、すでに殆どのパンが売り切れていた。


「マジか…ま、アレは村の中じゃあ一番人気のパンだからな…そんじゃクロワッサン3つでお願いするぜ」

「はいはーい。クロワッサン3つね…。他に何か買うの?」

「次はコイツのご飯だけど…イオって硬めのパンを作ったりしてたか?」

テーベにツンツンしながら話す。


「硬めのパン?うーん…一応あるのはあるんだけど…」

イオは何か言いたげに歯切れを悪くする。

「なんかあったか?」

「ちょっと前にね、試作品を作って試したんだけど……硬すぎてあまり良くないなーって、味は美味しかったけど…オススメはできないかな〜」

どうやら少し前にパンの試作品を作っていたようだ。

イオの感想から味は美味しいがパンの硬さに難があるのこと。


ぷるぷる!

もう我慢ができないのか、大きく震えだす。

「おいおい、人の頭の上で暴れんなよな。まぁとりあえず、それを持ってきてくれないか。ハッキリ言ってコイツの好みなんて分かんねえーし」

そもそもスライムに味覚なんてあるのか?

「ちょっとまっててね」

奥の部屋に行き、例のパンを取りに行く。


しばらく経ちイオが戻ってきた……スゴイ見た目をしたパンを持ちながら

「はい。これだよ。名付けて【鉱石パン】!」

自信満々に命名する。

少し大きく雪のように真っ白な、それでいて半透明になっている。

所々に点々とした白い石が照明星導光ルーメンエーテルの光に反射し、キラキラとしていた。

何をどうすればこんなパンに仕上がるのか訳がわからない。


見た事の無いパンと名前に圧倒される。

「おぉ…名前からして硬そうだ…ん?何だこれ?」

ルークスが鉱石と思われる所に訊くと、イオはひとりでにペラペラと喋りだす。


「良いところに目を付けたね。これはね、水晶石すいしょうせきって言う本物の鉱石なの!えっ?鉱石が入ってるから食べれない?違う違う、これは、食べられる鉱石なの!ほら、ここ見て!この点々となってるところ。この鉱石ね、鏡みたいに反射するの!こうやって…こう!どう?綺麗でしょ?そしてこのパン、見た目で分かるけど真っ白で若干半透明な色をしてるの。どうやって作ってるかって?ふっふっふ〜それは私だけの秘密だよ。そんな事よりも見てよ〜。この半透明のパンと水晶石の雪のような点々が絶妙に合ってるんだよね。あとねあとね―――――」


「ちょっと待ったーーーっ!」

ここでストップをかける。

しかし、なぜ止められたのかに気づかず上機嫌に答える。

「ん、何?あ、わかった!ルークスもようやく私のパンに興味が出てきたんだね?しょーがないな〜♪でも気をつけてね。パンの道のりは長くて険しいよ?」


「違う…そうじゃない」

「あれ?違うの?」

二人とも黙り始める。

「………」

少し間が空きイオは気づく。

「………あ」


苦笑いを浮かべながら謝る。

「あはは〜…うん、ごめん。ちょっと熱くなりすぎたみたい」

「イオは相変わらずパンの事が好きだな〜」

「えへへ…好きでパン屋さんやってるからね。本当にこれにするの?」


「ああ、鉱石パンだっけ?それしかないんだろ?だったらそれにするよ。それいくらだ?」

「いーよ。これは試作品だから、タダであげる。ちなみにクロワッサンは3つで300ミラになりまーす」

クロワッサンを可愛らしい袋に入れて梱包する。


「300ね……ほい」

「300…丁度だね。はい、これ」

テーベが、すぐ食べる事を考え鉱石パンをそのままにして渡す。

「おう。見た目が凄えな…ほらテーベ。お前が欲しかったパンだぜ」

ピョン!

大きな鉱石パンを包むようにテーベの体が広がっていく。


イオは両手を口元に当て驚きを見せる。

「わわっ!?スゴイ食いつきだね?!」

「へぇ〜コイツの食べてるところ、あんま見る事が無かったけど、こうやって食うんだな」

包まれた鉱石パンは地味地味と水色になっていく。

「お〜!私が作った鉱石パンが消えていく…」

「溶けてる…というよりも消えるように取り込んでるのか?」


ぷるぷるッ!

あっという間に取り込んでしまった。

「早えーな。よっぽど腹が減ってたのか?いや、そもそも腹なんか減るのか?まぁいいや。助かったよイオ、ありがとな」

もし硬めのパンが無ければ今頃テーベに粘液まみれにされていたかも知れない。


しかし、イオにはその事を話していないため、なんの事か分からずポカーンとする。

「え?お礼を言われることなんてしてないけど…?」

「悪い悪い、こっちの話だ。さて、やることも終わったし帰って寝るか」

明日から王都コーディリアに戻る為、少し早いが自宅で体を休ませる事にする。


「ルークス!」

店から出ようとするルークスを呼び止める。

「何だ?」

「また、旅に出るの?」

「まあ…しばらくな」


そう、しばらくは帰ってこれない。

王都に行き、ステラと共に次の目的地サングレーザーへ行き、そこで何らかの情報が入るかもしれない。

何かあれば、フェーベ村に帰れるのはいつになる事か。

「じゃあ、またここに戻って来る時に旅の話、聞かせてね」


「ああ、ついでに土産も何か買ってくるよ。じゃあなイオ」

手を振り店から出る。

イオも彼の姿が見えなくなるまで手を振り別れを告げる。

「うん。バイバーイ!ルークス!」

イオに見送られながら家に帰り、買ったクロワッサンを食べ、明日に備えて就寝する。











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