45.守護兵器
ミルキー達がキャンサーとの熾烈な戦いが始まっている間、ルークスとソルの二人は守護兵器の元まで辿り着いていた。
目の前に守護兵器らしき物体が宙に浮いていた。
真ん中に小さな蒼白い水晶、その水晶の上下左右に1つずつリングがあり、身を守るためか外側に8つの群青色の三角形が周りに浮いていた。
「これは…?」
今まで見た事の無い物体に唖然とする。
隣にいたソルが前へ出る。
「あれが守護兵器だ」
「あれが…?何か思ってたのと違うな」
「どういったものを想像していた?」
「もっとこう…ゴツゴツしたゴーレムみたいな見た目をしてるかと」
「…今と昔はだいぶ価値観が違っていたからな。さてと…」
宙に浮いた守護兵器の水晶に向かって徐に近づく。
「お、おい…そんな近づいても大丈夫なのか?今は動かねえーけど…」
さっきまで宮殿を揺らしていたと思われる跡がある。
今は大人しくしているようだが、いつ動き出すのか分からない状況だ。
さらにソルは守護兵器に近づき触れようとする。
「…………」
ギュイーン!
ソルが蒼白い水晶に触れようとした瞬間に機械の音を出し動き出す。
ゆっくりと後退し、様子を伺う。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
地響きを起こし周りに点いていた照明がチカチカと点滅を起こし始める。
いきなりの出来事に頭が追い付かず焦るルークス。
「何だ?!何が起きてる!?」
「ふむ…どうやら私達を敵だと判断され、攻撃しようとしてるな。どうしたものか…」
「おいおい、そんな冷静に話してる場合か?!」
照明を中心に蒼白いオーブが出現する。
そのオーブが守護兵器の元に集まっていき何かの準備をしているようだ。
異様な光景に危険を察知し、後退するよう促す。
「やべーってソル!早く逃げようぜ?!」
こんな状況でもテーベは眠ったかのようにピクリとも動かない。
「その必要はない。下がっていろ」
再びソルは前にでて、仁王立ちのように腕を組み立ちはだかる。
「いやいや、さすがにコレはやべぇーって…!」
「…………」
彼の言葉を聞かず、ただひたすらに相手からの攻撃に待つ。
周りの三角形のした謎の物体が荒ぶり、守護兵器の水晶から蒼白いレーザーを発射する。
「ふんッ!」
ジジジジジジジジジジッ!
ソルは左手を前に出し見えない壁を創り身を守る。
その壁に一部が反射され、宮殿の壁を焼き払う。
「……もう十分だ。ゆっくりと休め」
守護兵器が放ったレーザーの真ん中に、何かを送り込み、その送り込まれたモノが水晶に行き着くと、瞬く間に破裂を起こし守護兵器もろとも破壊する。
飛び散る破片に気を付けながら前を向く。
「くッ!?……どうなったんだ!?」
爆風が止み、土煙が晴れて視界が戻る。
「…マジかよ…あんなやべー攻撃をどうやって…?」
さっきまでの部屋と変わり、レーザーによって壁と床に焼け切れた跡が残り、守護兵器だったものが黒ずんだガラクタ化としていた。
ソルは胸に右手を当て祈るように目を瞑り、静かにポツリと呟く。
「……安らかに眠れ…」
しかしルークスには驚きのあまりに聴こえず、ソルに尋ねる。
「あんた何者だ?あんなやべー攻撃を弾くわ、守護兵器を一撃で倒すわで、驚きしかねぇぞ?」
あのレーザー攻撃はどう考えても防げるものでは無かった。
だが、この男はソレを軽々と防ぎ、それどころか守護兵器ごと破壊したのだ。
「何者…か。そうだな…私はこの星の至る所にある遺跡を見て回る…ただの旅人だ」
「ただの旅人ねぇ…。あんな強さで「ただの旅人」なんて信じらんねえけど?」
人を疑うような目でソルを見る。
「…信用できないなら、それでいい。だが今の私はただの旅人さ…」
「相変わらずよく分かんねえ奴だな…まあ、これ以上あんたに問い詰めても無駄だという事が分かったよ」
色々と聞きたいことがあるものの、それを問い詰めた所でルークスが求める答えは返ってこないだろう。
ソルは守護兵器がいた場所まで足を運び、バラバラになった残骸を観察する。
「……」
「どうした?破片なんか見て?」
破片を拾い懐にしまう。
「いや…何でもない。さて、ここにもう用はないが、どこか見たい所はあるか?」
そう言われるがルークスには遺跡に関してあまり興味が無く、特にここに行きたい!という意欲が無かった。
「ん〜…特に無いかな」
「そうか、では少しここで待っててくれ」
「あん?まだやることがあるのか?」
ソルは守護兵器が居た場所の更に奥に立ち止まり、床に手を掛けて話す。
「ああ、守護兵器が暴れたおかげで崩落がいつ起きてもおかしくはない」
崩落という言葉に息を詰める。
「いつ起きてもって…やべぇじゃねえか。こんな所でのんびりと話してる場合じゃねえぞ」
「だから…ここの崩落を防ぐために結界を張る必要がある。君はそこで見ているといい。すぐに終わらせる」
ソルが喋り終わると同時に彼が触っていた床が仄かに光だし、瞬く間に遺跡全体が光に包み込まれる。
(周りが光って…!これは一体どうなって…!)
ルークスが光に圧倒されていると、光は輝きを失い元通りになった。
ソルは立ち上がり、ルークスの元へ歩み寄る。
「さて、行こうか」
「もう終わったのか?」
「言っただろう。すぐに終わらせるとな…さあ、帰ろうか」
来た道を辿り地上へ目指し戻るのであった。
★
アルカーナ遺跡から戻り、小さな森から出て村に帰る途中、ルークスはテーベを起こそうと声をかけていた。
「おーい、起きろ〜」
ツルツルの表面に手でぺちぺちと軽く叩く。
ぷるぷる…
手で叩かれて起きたのか、小さく震えだす。
「お?起きたか?」
ぷるぷるッ!
ようやく起きたと思えば、頭から降りてすぐに大きく震えだし、粘液を飛ばす。
間一髪で避け、後ろの木に当たる。
ベチャッ!
「おわっ!?あぶな!」
「ふむ…どうやら起こされて機嫌が悪いようだな」
「え、マジで?」
ぷるぷるッ!
再び大きく震え粘液を飛ばそうとする。
急いでテーベの機嫌とりをする。
「あーちょっと待て待て、俺が悪かった!後で美味いモン食べさせるから!」
ぷるぷる…ピョンピョン!
言葉が伝わったのか、小刻みに震え小さく跳ねる。
テーベの動きを見て分析をする。
「……硬めのパンをくれたら許してくれるそうだ」
「硬めのパン?普通のじゃあ駄目なのか?」
ピョンピョン!
「……普通の柔らかいパンは好みでは無いようだな。意外とグルメな口をしてるな」
「なんか当然のようにコイツの翻訳してるけど、本当にそういってんのか?」
「まあな、動きを見れば大体の事が分かる」
(ステラと同じ事言うんだな…)
だが、ステラの場合、テーベの翻訳に自信は無かったが、ソルの場合はスラスラと翻訳をしていた。
何か違いがあるのだろうか?
「村に戻ったら硬めのパンをあげるから、それまで待っててくれよな?」
テーベの要求通りにすると、それに納得したのかルークスの頭の上に乗り大人しくなる。
テーベが大人しくなったところで尋ねる。
「そういや、あんたはどうすんだ?ここの遺跡を調べ終わったし別の遺跡に行くのか?」
「私か?そうだな…別の遺跡を探す為に旅に出るつもりだ。君はどうする?あの子の……ステラの記憶を探すつもりか?」
「ああ、何があろうとアイツの帰るべき場所に帰すと約束したからな。けどその前に村の安全の確保からだな」
何の理由なしにフェーベ村に帰ってきた訳ではない。
「村の安全…?何か問題があったか?」
「問題というか、俺も最近知ったことなんだが、王都方面に黒い魔物と遭ってな…」
黒い魔物と聞いて考え込む。
「黒い魔物…?悪星魔物の事か?」
急に出てきた悪星魔物という聞いたことのない言葉に聞き返す。
「悪星魔物…?え〜と、何だそりゃあ?」
「君がさっき言った黒い魔物…それが悪星魔物と呼ばれる存在だ。奴らは非常に気性が荒く、人間やエルフ、他の種族に対して積極的に襲いかかる習性を持っている厄介な魔物だ」
そう説明を受けある事を思い出す。ルークスがオリオン平地に行ったとき、黒い魔物に襲われ怪我をしたスライムがいた。
どんな相手でも積極的に襲うのは厄介どころでは無い。
「マジか…そんな奴らだったのか…」
「で、君はその魔物が、この村に来ていないか心配…といったところか」
さっきの話が本当なら、何らかの対策を講じなければならない。
「まあ、そんなところだな。とにかく、何らかの対策はしとかねえと思ってな…一応参考程度で訊くけど、あんたならどうする?」
ほぼほぼ何でも知っている彼に期待を持ち訊く。
「ふむ…対策する必要は無い」
彼が期待していた言葉とは裏腹に困惑する。
「は?何でだよ?」
ソルは辺りを見渡しながら答える。
「ここにはもうすでに何者かが結界を張っていったようだ。これ程の強力な結界であれば、悪星魔物など気にするレベルでは無い」
結界…アルカーナ遺跡でソルが使ってた
「結界?さっきソルが使ってたやつか?わりぃけど俺、魔術関係はちょっと疎くてな…そもそも結界って何だ?」
「結界は主に外部から身を護る術の事だ。ふむ…君は守護星導光を知っているか?あれも結界のひとつ。魔術も身を護るものなら全て結界として一括として扱われている」
(てことはミルキーが使っていたアレも結界って事か?)
ミルキーが使用していた防御魔術ハードシェル。
あれも結界のひとつなのだろう。
ここで1つの疑問が残る。
「でもよ。コーディリアにいた連中は守護星導光の効果があんま無かったぞ?堂々と街の中まで来てたし、本当に効果があるのかよ?」
王都と迷いの森の間にある守護星導光は黒ずみ機能しているのか、怪しかったが王都では街中に侵入を許していたので、本当に効果があるのか分からなかった。
「詳しい事は話せないが、守護星導光の結界とここの結界は全くの別物だ」
別物と言われたが、そもそも魔術の結界と守護星導光の違いが分からない。
両方とも星導光のチカラを利用してる事は分かるが…
「そう言われても分かんねえよ。それとソルはさっき何者かがここに結界を張ったとか言ってたけど、ソルが遺跡でやった結界と別のやつなのか?」
「私が張った結界はあくまでもアルカーナ遺跡の崩落を防ぐために遺跡全体に補強をしただけだ。結界と一言で言っても目的も用途も多種多様だ。少なくとも、ここの結界を張った者は―――――――」
途中、ソルの言葉が止まり、少し間があけたあともう一度口を開く。
「いや…すまない。この話は忘れてくれ。私はもう行く、そろそろお別れだ」
不自然に話を切り上げて立ち去ろうとする。
多少疑いの目を向けながら声を掛ける。
「次の遺跡に行くのか?」
「ああ、そうだ…ルークス」
フェーベ村とは反対の道に歩みルークスを呼び止める。
「ん、なんだ?」
「私からは彼女の事を何も教えられない…だが、もし君に覚悟があるのなら【サングレーザー】へ目指して行くといい」
「サングレーザー?何だソレは?」
「緑溢れる国だと言われる場所だ。王都コーディリアの西街道へ行き、その先にある【マイヤー湖畔】を抜けた先にサングレーザー着く。行くかどうかは君次第だが…」
行くかどうかなんて、ルークスの中ではもうすでに決まっていた。
「そこにステラの記憶のヒントがあるってなら俺は行くぜ。まあ、あんたから聞いたほうが早いんだが…話す気がない相手から聞いても意味ねえし、とりあえず、あんたの言葉通りに行くよ」
「そうか。気を付けて行ってくるといい」
「おう…村に寄らねえのか?」
「これでも急ぎの身でな…ではまた会おう」
彼はそのまま反対の道に沿って歩いて去って行った。
「もうこんな時間だし、王都に出発するのは明日にしよう」
新たな情報を手に入れ、フェーベ村に戻るのであった。




