44.覚悟
星群騎士団とキャンサーとの熾烈な戦いに、苦戦を繰り広げられる。
シノーペが絶体絶命の時に颯爽と援護に来たヒマリアとミルキーによって、なんとかダメージを与える事に成功する。
「あう…」
フラフラと立ち上がり家から出てくる。
視界に入ったミルキーが傍まで寄り添う。
「ステラ!?その怪我大丈夫なの!?」
キャンサーに蹴られ痛々しい跡が物語っている。
「ミルキ〜…いたいよぉ〜…」
自分自身で治癒術を使えないほど、今は体を動かす事が出来ずにいた。
ミルキーはステラの体を軽くペタペタ触れる。
「……大事には至らなかったみたいね。アンタはそこでじっとしてなさい。後はアタシらで解決するわ」
痛々しい跡があるが、無理せず動かなければ特に心配する事ないと判断をした。
「だ、大丈夫なの…」
先程の星群騎士団との戦いを物陰から見守っていたが、今まで見てきた敵の中で、かなり強い相手にミルキー達の心配をする。
「アタシを誰だと思ってんの?天才魔術師よ!すぐに終わらしてやるわ」
ステラから離れ敵の元へ走り出す。
一方ヒマリアは騎士兵達の元へ行き、応急処置をしていた。
「派手にやられたみたいね。シノーペ大丈夫?」
申し訳無さそうに話す。
「は、はい。私は何とか…でも他の皆が…カルメは大丈夫でしょうか!?」
「大丈夫、気を失ってるだけよ」
(…あの赤髪の男ってナイアドにいた奴よね…なんでこんなところに…?)
全員の応急処置を終えると、いきなり轟音が響く。
ドガァァァァァン!!
「!?」
ミルキーが放った岩石が粉々に砕け散る。
「あァ…いてえ……いてえなァ…ククク…」
不敵な笑みを浮かべながら歩き出す。
さすがのミルキーも予想外なのか驚きを隠せない様子。
「あいつ…まだ倒れてないの!?」
「アハハハハハハハッ!いいぞッ!もっとだ!もっと俺を楽しませてくれェ!!」
そう言うと腰にかけていた楕円形の武器をようやく手に取り、最も近くにいたヒマリアをターゲットに高速で近づき斬りかかる。
「ぐっ!」
防御をしたにも関わらず、たった一撃の攻撃にゴッソリと体力が奪われる。
「ヒャハハハハハハッ!!」
再び斬りつける事はせずに力押しに通そうとする。
(なんて力強いの!?)
このままでは斬られるのが目に見えている。
「はぁーッ!」
自身に喝を入れるように叫び、短剣に炎を纏わせ至近距離で炎を飛ばす。
キャンサーは炎の渦に閉じ込められ、身動きが出来なくなった……と思ったが…
「ハハハハハハッ!なんだなんだ何なんだァ!そんな攻撃でなァ!倒せるわけねェーだろォ!!」
気迫で炎の渦を弾き、突き攻撃を放つ。
意表を突かれ隙だらけになったヒマリアに襲う。
「くッ!?」
ガンッ!
半透明の六角形が壁となりヒマリアを守る。
「させない!」
ミルキーが魔術を発動させて彼女を守っていたようだ。
しかし、何故か嬉しそうに笑う。
「クククハハハハハハハッ!」
もう一度斬りつけ六角形の壁はガラスのように砕け散る。
その勢いを残したまま、蹴り飛ばす。
「あうッ!」
「弱い弱い弱い弱いッ!弱すぎるッ!!この程度かァ!?」
ヒマリアがやられ、焦りが込み上げる中、何とか最善を尽くし術式を組み込む。
「荒れ果てる水流よ…アクアブラスト!」
4つの水塊がキャンサーと、その周りに当て突風を引き起こし水浸しにする。
「ンだァ?」
しかし、キャンサーは何かあったのかと言わんばかりに喋る。
「凍てつく針よ…アイスニードル!」
8本の氷柱を生み出し発射する。
「あァ!?」
1本1本当たる度に全身をたちまち凍らせる。
アクアブラストにより凍らしやすくなっていた。
全身が氷漬けになりピクリとも動かなくなる。
「さすがにこれで終わりでしょ」
しかし、その願いは届かないものとなる。
氷漬けにされたキャンサーからピキピキと割れる音が鳴る。
バリィン!
「はぁ!?」
何事もなかったかのように凍結から脱しペラペラと話し始める。
「ククク…少しは考えたようだが詰めが甘いんだよ。水で全身を濡らし、そこから氷漬けにし行動不能にさせる。悪くねぇ作戦だ…だが俺相手に、こんな小細工は通用しねェ…」
「何なのコイツ…!」
「さァ〜てェ…今度はこっちの番だぜェ〜!」
ミルキーが動揺している事をお構いなしに距離を詰める。
「強固なる壁よ――――」
急いで詠唱をするが…
「遅えェんだよ!!」
詠唱中など関係なしに殴り地面に叩きつける。
「がはッ!?」
「ククク…今楽にしてやる」
ミルキーの首を跳ね飛ばそうとする。
「はぁーーッ!」
炎を纏わせた短剣を振り回し攻撃する。
「なんだァ?またお前かァ?」
ヒマリアは睨みつけさらに攻撃を続ける。
「これ以上好きにさせないッ!」
「いいぜいいぜェ!まずお前から斬り刻んでやるよォ!」
ターゲットをヒマリアに変更し乱雑に斬りつける。
「ぐっ!」
斬られる度に後退していく。
「オラオラオラオラッ!」
しかし、相手の猛攻が止まることなく絶え間なく斬りつけられる。
「ッ!?」
とうとう武器を弾かれ無防備になる。
「ヒャハハハハハッ!」
「ヒマリアさん!」
カルメの声が響き火の玉が飛んできた。
軽々と素手で弾き鬱陶しそうに睨みつける。
「チッ!うぜェーんだよォ!」
掌に濃縮された光星エネルギーの塊をカルメに投げる。
「カルメッ!」
シノーペが突っ込みカルメを押し倒し射線上から外す。
外れた濃縮エネルギーは壁に激突し、派手に爆発を起こす。
「ハハハハハハッ!もう一発、プレゼントだァ!!」
回避が出来なくなった二人に追撃を入れようとする。
「旋風拳!」
ヒマリアから放たれた拳と突風により不意を突かれる。
「おわァァァァ!?」
風力が強くさすがのキャンサーも吹き飛ばされ距離を空ける。
「チッ。小賢しい真似を…!」
ステラが叫ぶ。
「もう止めてッ!」
声がする方向に振り向く。
「あァ?」
ステラは覚束無い足取りで、家から出てくる。
「ンだァ…?ようやくやる気になったかァ?」
「これ以上……みんなを傷つけるなら……私がゆるさない」
静かな怒りにより一層キャンサーのやる気を出させる。
「ククク…上等だァ…前々からテメーとはガチでやり合いたかったしなァ…」
腰を低い態勢になり、楕円形の武器を構える。
それに対し彼女は一言。
「………彗星」
ステラの前に白黒の魔法陣が現れ、そこから蒼白い彗星を出現させる。
「!!」
彗星が出たと思えば、すでにキャンサーの体にめり込んでいた。
恐ろしく速い攻撃にかろうじて防御をするが、そのまま宙に浮かび飛ばされる。
「ごッ!?」
キャンサーは青空に飛ばされ彼方へと消え去った。




