41.かつての街
守護兵器の暴走と予測し、地下深くにある遺跡の奥に足を運ぶ。
守護兵器がいると思われる宮殿の前まで来ていた。
騎士団本部と比べると、ひと回り小さく朽ち果てて、壁に所々穴が空いているが、神秘的な宮殿だ。
壁は白くレンガのように積まれている。
天辺には丸い屋根に、その屋根の先に丸い玉が置かれている。
「ここか…ん?入口はどこだ?」
辺りを見渡すが、入口となる場所が見当たらない。
「ふむ…どうやらこの辺りに崩落が起きたのだろう。瓦礫で入口を塞いでしまっている」
そう言われてもう一度よく見てみると、扉らしきモノが瓦礫の山に埋まってしまっていた。
「マジかよ…じゃあ別の所から入れる場所を探さねえと…」
とはいえ、ここから回り込んで行くには少々骨が折れそうだ。
何故なら、この扉と同様に街道にも瓦礫で塞がれて、所々に穴が空いているからだ。
「その必要は無い。丁度そこにいい感じの隙間がある」
扉付近に窓らしき隙間がある。
しかし、その隙間はとても小さく入ることが出来ない。
「どう考えても人が入れる隙間じゃないんだが…」
「こうすればいい」
ぷるぷる…?テーベは気になるのか、体を伸ばし様子を見る。
ソルが小さな隙間がある壁に向かい手を軽く触れる。
ドゴォォン!
壁を粉砕させる音を出し、隙間があった壁は綺麗に切り抜かれたように長方形の穴が出来る。
「…お前って意外と強引な奴なんだな…まぁ、通れるようになったからいいんだけど…」
「過程など必要は無い。重要なのは結果だ…それにこの程度の衝撃で壊れるほど、この遺跡はヤワじゃない」
ソルが開けた穴を通り宮殿の中へ入る。
小さな小部屋に、辺りには壺や箱が乱雑に置かれていた。
おそらくここは物置き部屋だったのだろう。
「でも今のって…魔術なのか?あんな風に綺麗に壊すなんてよ…」
今まで見てきた魔術と何ら変わりは無いが、何か違和感を感じ取る。
「れっきとした術だ。器用か不器用かは関係あるがな」
魔術と武術は誰でも使える訳ではない。
星導光のチカラがあった所で、そのチカラをコントロール出来なければ扱う事は出来ない。
しかし元々、星導光が使えないルークスにとっては、あまり理解が出来ない事だった。
「術にそういうのあんのか…ん?ここって物置き部屋か?なんか色んなモンが散らばってて汚えぞ?」
足の踏み場が無く適当に調べる。
「数百年前の物だからな。逆にこうして形が残ってるだけでも大したものだ」
辺りを探索すると、ボロボロの木製の扉を発見する。
「お?ここから行けそうだな。開けるぞ」
ドアを開けると、大広間なのか空間の広い場所に着く。
「おぉ〜。外見から凄かったが内装もすんげえ事になってんな…」
床は街道と同じに石畳が舗装されており、真ん中には大きな噴水の跡があった。
宮殿の中というよりも、もはや庭である。
どうやら正面から入って左側にある物置き部屋に、入ってきたようだ。
「この遺跡の中心とも言える存在だからな。上へと上がる階段は……ふむ…」
噴水の跡を通り抜け、大きな階段のもとに行く。
しかし階段はボロボロに朽ち果てていた。
「これ、上がれねえよな…別の場所から行くか?」
物置き部屋以外の部屋をくまなく探せば上へと続く道を見つけられるが……
「いや、遠回りをしている時間は無い。このまま行く」
「は?何言って……」
ソルは足の爪先を上げ、トン…と床に落とし音をたてる。
その瞬間にソルの足元から白色の靄が階段の形に変えて道を創り上げる。
「こんな事も出来るのか…魔術って便利だな〜」
「一見便利そうな術も決して万能では無い」
上り終えると、ソルが創り出した階段が跡形もなく消え去った。
「なあソル。守護兵器がいる場所って、この宮殿の上だよな?どれぐらい掛かりそうなんだ?」
「ふむ…今の調子だと数十分ぐらい掛かるな」
「おいおい大丈夫なのか?そんなに時間があるわけじゃあないだろ?」
のんびりとしていると、近くの森やフェーベ村、それどころか今この遺跡に居るルークス達も危険に晒される。
「確かに今のまま守護兵器を放置してると、アルカーナ遺跡だけでは無く、遺跡周辺にある森やフェーベ村にも被害が出るだろう。だがそれは長く放置した場合だ…数十分程度で崩落が起きる事は無い」
長い廊下を歩きながら聞いて行く。
「そうなのか?まあでも、早めに行った方が良いって事には変わりがねえな」
遅かれ早かれ対処しなければ、どのみち危険だという事に変わりはない。
「そうだな……そこ足場が悪いから慎重に進むといい」
床のあちこちに穴やひび割れている箇所が多く見られる。
不用意に足を踏み入れると、床が崩れ落下し、かすり傷程度では済まされないだろう。
「…これ、落ちたらヤバいやつ…だよな?」
慎重に移動して、床の穴に覗き込み今居る場所の高さを再確認する。
「試してみるか?」
「は?」
ルークスの反応にソルは柔らかく笑みを零す。
「ふ……冗談だ」
ドオォォォォォ……
上の層から鉄と鉄をぶつけた鈍い音が響いてきた。
床にも振動を起こし姿勢を低くする。
「随分と暴れてやがるな」
振動が収まり立ち上がる。
「……さっきみたいに、いつ揺れが来るか分からん。気をつけろ」
「ああ、お前もな」
穴だらけの廊下を抜けて右側の部屋へ入る。
この部屋は螺旋階段となっていて上まで続いているようだ。
階段を上がりながら尋ねる。
「そういえばソルって、遺跡の事を知ってんだよな?ここって元々はどういう場所だったか分かるのか?」
彼は静かに語り始める。
「ふむ…そうだな…少し昔話をしよう。かつて、この街に起きた出来事を…」




