40.アルカーナ遺跡
森の泉の下に大きな地下空間があり、ルークスとソルの二人は、その場所を探索をしていた。
長く白色の階段をビチャビチャと鳴らしながら一段一段上がっていく。
テーベは寝ているのか、ルークスの頭の上でじっとしている。
「あ〜靴の中がびしょびしょ…気持ちわりぃな…」
階段を上がる前に、水浸しの床に立っていた為、靴の中に水が侵入し、不快感に襲われる。
「なんであんたは、こんなところに遺跡がある事を知ってんだ?普通分かんねえぞ…あの泉の下にこんなのがあるなんて…」
実際、フェーベ村出身のルークスは何ひとつ知らなかった。
それどころか、森の奥まで足を踏み入れた事自体なかったのだ。
「…………」
彼は黙り込む。
「それも教えてくれねえのか?まあいいけどよ…」
彼にも何らかの事情があると考え、追究せずに奥にある巨大な建造物を見つめる。
「それにしても本当に遺跡か?城見てえにしか見えねーげど…」
王都コーディリアにある騎士団本部の大きさよりも、ひと回り小さいが、それでも圧倒的な大きさだ。
水面の色に合わせるように、周りの壁は白と青色に統一されている。
「アルカーナ遺跡…太古昔に人々が暮らしてたと言われている」
「暮らす…?こんな場所でか?」
こんな地下深くに暮らすとは、何かと不便そうである。
「元々ここはこんな地下にあったものではない。今となってはあの時の面影はあの宮殿ぐらいだけだ…」
ルークスが城だと思っていた建物を宮殿と言い、その宮殿を見ながら何処か懐かしさを感じる表情をしていた。
「当事者みたいな言い方だな…?そのアルカーナ遺跡ってやつはかなり前のモンだろ?」
宮殿もそうだが、周りもボロく遺跡と言われているぐらいに長い年月が経っているのだろう。
「私は世界中にある遺跡について調べ回っている。多少知識があるだけだ…気にする必要は無い」
「そういうモンなのか?……やっと上り終わったな…無駄に長い階段だったな」
いくら知識を取り入れた所で、あんな風に言えるのか?そう思いながら、ようやくこの長い階段を上り終える。
階段の先に街道のような石畳に舗装された道に、上る前から見えていた丸く蒼白い照明が等間隔に設置されている。
「本当に人が住んでたみてえな感じたな…」
遺跡にも関わらず小さな街を歩いているみたいだ。
「なんか変なモンがそこら辺に落ちてるな…これも遺跡と関係があるのか?」
朽ち果てた家や道端にガラクタの何かが散らばっている。
そのガラクタをソルが拾い上げる。
「ふむ……」
そのガラクタは何かの破片にも見えた。
「何か分かるか?見た目は何かの星導光に似てるけど…」
「…ただのガラクタだ。星導光などでは無い」
「そうなのか?すんげえ星導光に見えるんだが」
星導光に似た破片に見えたが、どうやら違ったようだ。
ソルは拾い上げた破片を元の場所に置き、蒼白く光っている照明を見る。
「………」
何か考えている素振りにルークスが声を掛ける。
「どうした?」
「いや、アレが気になってな」
先程ソルが見ていた照明に指を示す。
「あー、あの照明星導光みたいなやつか。あれがどうかしたのか?」
見た目は、そこら辺にある照明星導光とは違い、丸い球体に半透明のガラス状が囲っている。
「あの照明…本来ならば消えているはずだが…生き残りがエネルギーを送っているのか?いや、それはあり得ない…まさか守護兵器が…?」
ブツブツと独り言をする。
「なに一人で話してんだ?俺にも分かるように言ってくれ。そもそも守護兵器って何なんだ?」
生き残りの言葉に引っ掛かったが、それよりもガーディアンと言う単語に気になってしまう。
「守護兵器…この街……遺跡を守るために造られた兵器…それが守護兵器というものだ」
「じゃあその守護兵器とアレが何の関係があるんだ?」
遺跡を守るものと言ったが、それとこの照明に何の関係があるのだろう?
「守護兵器は光星エネルギーを動力として稼働する。守るものとはいえ、ただ、戦いのためだけの兵器ではない。時に街全体の動力として稼働する事もあった」
「街全体…?」
遺跡の事を街と言う。余計に分からなくなってきた。
ソルは蒼白く仄かに光っている照明に再び指を示し話す。
「君はアレをみて照明星導光と言ったな。その考えはあながち間違いでは無い。あの照明も光星エネルギーを動力として稼働する…あの照明だけでは無い。この遺跡にある物全て光星エネルギーを必要とする機械だ」
話の途中、ルークスはある事を思い出していた。
リゲル尖塔、迷いの森にあった遺跡のこと…ぱっと見ても意味の分からない物体だと思っていたが、アレも何らかの重要な物だったかもしれない。
「でもよ、光星エネルギーがいるってことは、結局同じじゃあないのか?星導光も光星エネルギーを必要としてるし…」
「星導光の場合は、星のエネルギーを無理矢理、光星エネルギーに変換しているに過ぎない。それに、ここらにある物は星導光によって生み出された光星エネルギーでは動くことはない。何故なら、そのエネルギーは――――――」
ドオォォォォォォォォン!
何か大事な事を言う寸前に大きな地響きが起こった。
「うわっ!?なんだ!?」
咄嗟にしゃがみ込み安全を確認する。
いきなり頭を下げたため、頭に乗っていたテーベが落ちる。
ソルは何ひとつ変わることなく、冷静に事の分析をする。
「………この地響き、上の方からだな…」
テーベを頭に乗せ、立ち上がる。
「上の方…?まさかフェーベ村になにか!?」
さっきの地響きは尋常ではないレベルだった。
まさか、黒い魔物が……!
「落ち着け…さすがに地上からのものではない。さっきの地響きからすると…あの宮殿の中からだな」
ソルの言葉に少し落ち着きを取り戻す。
「宮殿?おいおい、こんなところに何か潜んでいやがるのか?」
「守護兵器の可能性が高いな。さっきも言ったが、守護兵器はかつて街であったこの遺跡を守る為に造られたものだ。もし奴が今も動いているなら、あの宮殿の頂上にいるだろう」
頂上…今いる場所から見ても分かる。
かなり高い所にいるようだ。
「もし居たとしてもだ…行く必要があるのか?どう考えても危険だと思うが…」
このまま放置しても危ないのはこの遺跡だけ、村がある地上までは影響が無いと思うが…
「このまま守護兵器を無視する訳にはいかない。本来守るべきものを地響きを起こし遺跡そのものに危険を晒している。おそらくだが、奴は暴走を起こしている。長年メンテナンスがされ無かったお陰で、奴自身に歪みが生じたのだろう」
彼が危険と判断するなら、村にも悪影響があるのだろう。
「どのみち危険…てことか、なら俺も一緒に行くぜ」
「さっきまで迷っては無かったか?」
「このまま放置したらやべーだろ?危険だろうがやるしかねえよ」
近くにある自身の故郷を守る為に戦うことを選ぶ。
「……入口はこっちだ。付いて来るといい」
朽ち果てた街の中を歩き守護兵器のいる宮殿へと向かう。




