36.援護
王都コーディリアの商業区にて、人々達がざわめいていた。
そこにミルキー達と元 禁断盗賊団の三人が戦っていたが、徐々に劣勢となり
何とか隙きを作り路地裏に逃げ込んだ三人は言い争っていた。
「おいミランダ!何勝手に俺達の貴重なミラを使ってんだ!」
ミランダと呼ばれた大柄の男は、不満を出す事なく淡々と話す。
「仕方ないだろう。あの状況で逃げ切るにはあれしかなかったんだ」
「お前ら、ここで言い争っている場合か?」
金髪の細身の男は、二人を制止する。
「だ、だけどよ…いくら何でもミラを全部使い切るなんてよ…」
先程の戦闘で自分達が持っていたミラを全て使い切ってしまっていた。
しかし今は、ミラの事を気にしている場合では無い。
「まぁそれは後で考えるとしてだ。こいつはなんだ?」
すると黒髪の男は得意気に話す。
「ひょひょひょ…何やら豪華なモンを着けてるから、かる〜くさらってきたぜ〜」
こんな状況にも関わらず彼女は冷静にしている。
「あなたたちは誰なの?」
大柄の男が答える。
「我はミランダ。この世で信頼できるのはミラだけだ…」
黒髪の男が不思議そうな顔をだすが、律儀に答える。
「うひょ?お前、今の状況分かってんのか? まあいい、俺はエギルだ。よく覚えておきな」
金髪の男も答え本題に入る。
「オレはネソ。さて嬢ちゃん。単刀直入に言う…お前の頭に着けるソレを渡してもらおうか」
「やだ」
即座に否定する。
「ならばチカラずくになるが?」
「だめなものはだめなの!」
髪飾りを守るように両手で当てる。
「うひょ…?ちょっとまてよ。こいつ、よく見たらいい体してんじゃん。絶対高く売れるって、早速売り払おうぜ?」
ステラの体をジロジロ見て物騒な事を言い出す。
「一束炎陣!」
目に止まらぬ速さで熱風と共に三人を突き通り、炎が纏った短剣で薙ぎ払う。
「チッ!」
「あっちちちッ!」
「なんだ!?」
「そこまでよ!」
騎士団のヒマリアが助けに来てくれたようだ。
「あ!ヒマリア〜!」
そばに来た彼女に引っ付き始める。
「す、ステラちゃん!?今は抱きついちゃだめよ」
抱きつかれて困惑するが、どこか嬉しそうにする。
「えへへ~ぷにぷに〜」
ほっぺをぷにぷにと突く。
ネソはヒマリアの服装を見て呟くように話す。
「…こいつ、騎士団の奴か…」
「や、やべえよ…どうする?」
「ミラがあればいいのだが…」
「さあ、大人しくしなさい。もし応じないなら武力行使にでるわよ?」
剣を構えたまま忠告をしていると、路地裏の入口から追いかけに来ていたシノーペが姿を現す。
「追いついたッ!」
「ゲッ!?もう来たのかよ?!」
「…どうする…ネソ?」
ミランダは淡々と尋ねる。
「どうするも何も逃げるしかねえだろ」
「逃さない!」
シノーペは牽制するように槍を突き放つ。
だがエギルは身軽に躱し反撃を入れ込む。
「オラオラオラッ!そんなんじゃあ俺達を止められねぇぞ!」
エギルのパンチがシノーペのお腹に入り、あまりの痛さに倒れ込む。
「うぐっ!」
「そこ!」
ヒマリアが素早くエギルの元に移動し、至近距離で掌から火の玉をぶつける。
「ぬわッ!」
飛ばされたエギルは堪らずにひざまつく。
準備が整ったのかネソが呼び込む。
「おいエギル!ズラかるぞ!」
呼び掛けと同時に小さな玉を地面に叩きつける。
玉からは白い煙を出し、ヒマリア達の視界を奪う。
「お、おう…」
よろめきながらも急いでネソの元へ行く。
「くっ!待て!」
何とか態勢を立て直し追いかけようと走ろうとする。
「シノーペ!落ち着いて!」
彼女の腕に掴み止める。
「で、でも…!」
彼女の手を振り払おうとするが、先程のエギルの攻撃により、思うように力が入らない。
少し時間が経ち、煙が晴れると、あの三人の姿は消えていた。
「今は君の体の安全が先よ。ステラちゃんも怪我は無い?」
「ヒマリアが来てくれたお陰で大丈夫だよ」
「良かった……。シノーペ、彼女の事お願いね」
ステラの無事に安堵し、彼女の護衛を頼み逃げ出した三人を追いかけに去っていった。
「あ、ヒマリアさん……私…!」
シノーペが何か言いかけたが、すでにヒマリアの姿が無く言いそびれる。
「………」
暗くなった彼女に声をかける。
「シノーペも、助けに来てくれてありがとね。今治すから…星の輝きよ、汝を癒やせ…!」
先程の戦闘により、傷ついた彼女のお腹や腕は痛みがひき治る。
「えっ!?傷が…!」
「痛みは大丈夫?」
治療が出来ているのか確認する。
「だ、大丈夫ですけど……」
困惑するが再度状況整理をする。
「ごめんなさい…私のせいで…私がしっかりしていればこんな事には……」
「ううん。シノーペのせいじゃないよ…余り自分を責めないでね」
「…………」
路地裏の入口から声が響く。
「二人とも大丈夫!」
「あ、ミルキー!大丈夫だよ〜」
「無事なのね…よかった〜」
「ねぇ、さっきヒマリアが凄い速さで走ってったけど、何かあったの?あの三人もいないし」
「えっとね…ヒマリアが助けに来てくれて、色々あって逃げられちゃったの。それでね、あの三人を追いかけに行っちゃったの」
「なるほどね。…アンタ、さっき思いっきり飛ばされてたけど大丈夫?」
「私の事は気にしないでください。…そんな事よりも、あの紫髪の娘は大丈夫ですか?」
「安心しなさい。ルディの方は大丈夫よ。……ミラ拾いが大変だったけど」
少し愚痴を吐くように答える。
「ご、ごめんなさい」
「別に謝らなくてもいいわよ。油断したアタシも悪かったし」
「ミルキー。この後どうするの?」
「そうね。とりあえずあの三人をボコしに行くわ。シノーペ…だっけ?アンタはコイツを連れてカルメの所に行ってきなさい。アイツ、アンタのこと心配してたわよ」
「それはだめ!一般人にこのようなことを…!」
騎士団である自分が休み、逆に騎士団でも無い彼女がこの件に関わる事は以ての外だ。
「一般人であるステラを守る事もアンタの仕事よね?それにアタシは一般人じゃなくて天才魔術師だから大丈夫よ。それじゃあ後は任せたわ」
ヒマリアの応援のため、この場をあとに去っていった。
「ミルキー……行っちゃった……」
残された二人はカルメの元へ戻り待つのであった。




