29.星群騎士団
「伏せてッ!」
唐突に背後から女性の声が響く。
「え?」
「なに?」
急な事に反応が遅れる。
「チッ!」
それを見兼ねたプルートは、ステラとミルキーの元へ飛び込み伏せさせる。
その直後、虫型の魔物によって生み出されていた黒い魔物達の周辺に爆発を起こし土煙が舞い上がる。
声に従いルークス達も伏せて、爆発が終わった頃を見図り頭を上げる。
「ッ!‥なんなんだ?」
さっきまで彼達を囲んでいた黒い魔物達が倒されていた。
「君達、大丈夫かい?」
不意に声を掛けられ後ろに振り返る。すると星群騎士団と思わしき格好をした金髪の男がいた。
この男の部下なのか、その後ろに槍を構える朱色の髪の少女と、分厚い本を片手に持った涅色の少年がいた。
「ふんッ、騎士団の連中か」
プルートは嫌味を吐き捨てるように話す。
「いたたたた‥」
後頭部をさすりながら立ち上がる。
「大丈夫だけど‥」
テーベを拾い上げて答える。
男の後ろから見覚えのある人物が話し掛ける。
「あ!ステラちゃん!それにミルキーも!」
茶色のモフモフのショートヘアーを揺らし三人に近付く。
「ヒマリアだぁ!えへへ~」
「ヒマリアなの?何でアンタがこんな所に‥?」
様子を見ていた男は割り入る。
「おや?君達は知り合いなのかい?でも悪いね。今はあの魔物倒すことを優先しようか」
隙を見計らったルークスとヘルセはステラ達の元へ後退する。
「ヒマリアか?助かったぜ」
あの時の忠告を無視したことに呆れるが、それ以上に心配する気持ちの方が上回る。
「はぁ、君は相変わらず無茶するね。心配したんだから‥」
「悪い悪い」
悪びれた様子も無く謝る。
騎士の男は二人に指示を飛ばし彼らの前へでる。
「シノーペ、カルメ、この者達の護衛を、僕とヒマリアの二人で黒い魔物を叩く」
「ハッ!」
「了解です」
「俺も一緒に戦うぜ」
「頼もしいね。無理だと思ったらすぐに引くんだよ?」
「平和ボケした星群の手助けなど必要ない」
「そう言わず仲良く共闘と行こうじゃないか。それにあちらもやる気満々のようだし」
両腕の触手を震わせ叫ぶ。
「シャァァァァァァァ!!」
体全体に小さな虫を蠢かせる。
「うえぇ〜なにアレ〜。すっごく気持ち悪いんだけど‥」
ミルキーほどではないが、ヒマリアもかなり嫌そうな顔を見せ、後ずさりする。
「とんでもねえ見た目だよな。俺も初めて見た時はビックリしたぜ」
黒い魔物は口を開きヘドロを吐き出そうとする。
「お喋りはここまでだ。行くよ!」
「では拘束させてもらいマース」
魔物の周辺の地面から鎖をだし、魔物の体全身に縛り付け、口にも縛りヘドロを出させない様にする。
「ギギギギギ‥‥‥‥」
魔物の動きが止まりこの隙を狙ってタコ殴りする。
「おらよッ!」
剣に炎を纒わせ斬りつける。
「闇よ‥俺にチカラを!」
剣先に怪しく光らせ素早く斬り刻む。
「二人とも下がって!」
魔物の頭上に火の玉を生成し、二人が退避したタイミングで火の玉を落とす。
「ギィィィィィ!」
「これでトドメだッ!」
騎士の男が高く飛び上がり斬りかかる。
ズバッ!
「シャァァァァァァ‥‥‥‥‥」
限界を迎えたのかズドンと倒れ込む。
倒れた黒い魔物は灰のように細かな粒となり消えていった。
呆気なく終わりポカーンっとする。
「あれ?意外と早く終わったね」
騎士の男は剣を収め補足する様に話す。
「彼らがここまで弱らせたおかげだよ。さて、色々と聞きたいことがあるけど、ここは危険だ。まずは王都に帰ろうか」
「待ってください隊長!ここに魔物が‥!」
朱色の髪の少女シノーペが槍を構えテーベに槍先を向ける。
「あわわわっ!ダメ!ダメだよ!」
急いでテーベを抱きかかえ守る。
隊長と呼ばれた騎士の男が止めに入る。
「シノーペ、武器を下げるんだ。この魔物はこの者達の仲間だ」
「えっ?そ、そうなんですか?」
確認をとり、小さく頷く。
「うん」
しょんぼりとしながら謝る。
「す‥すみません。敵だと思ったので‥」
カルメと呼ばれた涅色の少年は分厚い本についたホコリをはたきながら注意する。
「周りをよく見てからやってよね」
「か、カルメのくせにぃ‥!」
「言い合いはいいから、さぁ帰るよ。僕について来て」
隊長の言われるがままに付いて行く。
しかし、プルートとヘルセは止まり口を開く。
「悪いが俺達はここでお別れだ」
ヒマリアが両手を腰に当て尋ねる。
「また魔物を倒しに行くつもり?」
人差し指を振り答える。
「ノウノウ‥さすがの我々も、こんな状態で戦おうと思いません。ボスの命令で一旦【ネメシス】に戻らなければならないので、ではワタシ達はこれで」
「まて」
「どうしました。プルートボーイ?」
プルートはおもむろに近付き誘いの言葉を放つ。
「ルークス。俺達と一緒に来る気はないか?お前ほどの実力があれば、問題なく魔物共を蹴散らせる」
即座に否定する。
「悪いが他を当たってくれ、俺にはやる事があるんでね」
誘いを断られ素直に引き下がり、最後にステラに向かって話す。
「そうか。あとステラと言ったか?次に会ったときに、そのスライムを狩らせてもらう。じゃあな」
二人は足早に去っていく。
「行ってしまったか‥彼らにも話を聞こうと思ってたが‥まあいいか。僕達も戻ろうか」
★
隊長が示す道に進んで行く。
ルークス達を守るように後方側に二人の騎士を配置し、真ん中にヒマリアがつく。
「そういやその服‥お前って星群騎士団のヤツか?」
後方にいる二人はヒマリアと同じ騎士服を着用しているが、前にいる騎士の男はヒマリア達が着ているものよりも特殊な見た目をしている。
「そういえば自己紹介がまだだったね。僕は星群騎士団護衛部隊隊長フォボス・カリストだ。で、こっちにいる彼はカルメ。そして彼女がシノーペだ」
紹介された二人は歩きながら小さく会釈する。
ヒマリアは笑みをこぼしながら訊く。
「私は言わなくても分かるよね?」
「ああ、俺はルークス。フェーベ村から来た」
「私はステラだよ。この子がテーベちゃん」
テーベを持ち上げ紹介する。
「アタシはミルキーよ」
その名前にカルメが反応しジロジロ見る。
「ミルキー?‥焦げ茶色の髪に‥エルフ‥まさか君って、あの問題児と騒がれてるミルキー・ウェイ?」
問題児と言われ気分を悪くしたのか喧嘩腰に聞き返す。
「あ?だったら何?」
ミルキーの圧に気圧され、ボソボソ声で返す。
「あ、いや‥別に何でもない‥です」
ステラが不思議な表情になりながら訊く。
「ミルキー‥有名人?」
溜息を混じり素っ気なく答える。
「はぁ、コイツらが勝手に騒いでるだけよ」
ジトーっと見ながらお願いする。
「でもミルキー、実験はほどほどにね?‥後始末が大変だし」
「わ、わかってるわよ!」
なんだかんだ会話をしている内に迷いの森から出る。
行き先はあれ程時間が掛かったにもかかわらず、あっさりと森から出ることが出来た。
「あれ?もう出口か。こんなに短かったっけ?」
「最短ルートを通って来たからね。今日は疲れただろうし話は明日にしようか」
明日の事について尋ねる。
「そうしてくれると助かる。明日どこに行けばいいんだ?」
「そうだね‥朝の内に騎士団の本部前に来てもらっていいかな?場所は分かるかい。中央区に入ってただひたすら真っすぐに行けばすぐ分かると思うけど‥」
ルークスも一度は目にしている。
というよりも遠くから見ても城のような大きい建物が真ん中にあり、かなり目立つデザインをしている。
「大丈夫だぜ。あの城みてぇなでっかい建物だろ?」
「そうそう。さて、僕達はまだやる事があるから先に帰って疲れを癒やすといい」
「そうさせてもらうぜ」
言葉に甘えルークス達は先に帰ることにした。




