28.甲殻線虫フォエトル②
「キシャァァァァァァァ!」
体全体に小さな細長い虫を蠢かせながら、口から黒緑のヘドロを発射する。
「おっと、当たるかよ!」
軽々と避け、剣に炎を纏わせ横一閃に薙ぎ払うと共に炎を魔物の顔面に飛ばす。
「キジャァァァァ!」
見事に命中するが、それに怯まず触手をぶん回す様に叩きつける。
ジグザグとステップを踏み、敵の攻撃を躱す。
「ふんッ!」
プルートが接近し、剣先に黒く光らせ素早く斬りつける。
「これはどうデスカ?」
プルートが斬りつけるタイミングを合わせ、鎌状に変形させ、草を刈り取る動きで斬る。
斬られた箇所から小さな虫がボロボロと剥がれ落ちる。
「ギジィィィィィ!」
三人を追い払う様に、辺りにヘドロを撒き散らす。
ヘドロに気を付けながら距離を取る。
「おいおい、俺達の攻撃ちゃんと効いてるのか?」
「効いてるハズだ。殻に引き篭もっていた時と違って手応えはある。このまま攻め落とすぞ!」
攻撃を仕掛けようとした瞬間
「ギィィィジィィャャヤァァァァァァア!!」
森一帯に魔物の叫び声で埋め尽くされる。
あまりの五月蝿さに思わず両手で耳をふさぐ
「う、うるせぇ‥!なんつー声だすんだよ?!」
「不快な鳴き声デスネェ‥」
木々に隠れていたステラは、何か異変に気付く。
「‥‥アレ?」
ステラに抱きつく形にいたミルキーは、恐る恐る聞く。
「ど、どうしたのよ?」
「あ、ミルキー‥なんかね。よくわからないけど、ここにイヤな気配が集まってきてるの‥ど、どうしよぅ‥」
「マ‥マジなの?」
「うん‥」
ルークス達に知らせるため、普段より大きな声で伝える。あの魔物の姿を見たくないので、背を向けて話す。
「アンタ達!よく聞いて!ここに黒い魔物が集まってきてるわ!注意して!」
「マジかよ‥なんでこんな時に‥!」
「まさか、さっきの叫びで呼びやがったのか?」
こちらの事を待っててはくれず魔物は次の攻撃を仕掛ける。
「キシャァァァァァ!」
触手を伸ばし、ムチの様に振るう。
プルートは後方に下がり避ける。
「チッ‥面倒だな」
「プルートボーイ下がってなサイ」
「何だヘルセ。俺が邪魔だって言いたいのか?」
「ノーウ、ノーウ‥さっきの術でアナタの体力は著しく落ちていマス。そこで集まってきてる黒い魔物の迎撃をお願いしマス。ここはワタシとルークスボーイで対処しマース」
殻を閉じていた時、最後に放った術は、プルートにとって最高火力の魔術であった。それ故に術者の負担も大きく掛かっていた。
「‥‥わかった。ここはお前達に任せる」
早速ミルキーとステラの元へ走っていく。
「こっちも早く終わらせないとな」
草むらからガサガサと音を出し姿を現す。
「ザザザ‥‥ザザリ‥ザ‥」
ついさっきまで見た黒いゴーレムがここに集まってきていたようだ。
「コイツって、この森にいた黒いゴーレム?!」
「闇の剣よ‥悪を滅殺せよ!ナイトブレイド!」
黒いゴーレムの足元から巨大な剣を突き出し真っ二つにする。
「こんな雑魚に手こずってる場合では無い。お前もそんな所に隠れてないで手伝え」
応援に駆けつけたプルートが嫌味の様に振る舞う。
「うるさいわね‥でもゴーレムが相手ならやってやるわ」
魔導書を開き魔法陣を展開させる。
「烈火の如く焼き払え!レイジングフレイム!」
ゴーレムに狙い火の玉が直撃する。
「シヤァァァッ!」
触手を前方に突き刺す。当たらないよう慎重に躱す。
「おっと」
敵がルークスに向いている間、ヘルセは術式を展開し詠唱を始める。
「血の雨はいかがデスカ?」
赤黒く朽ちた剣を形成し、魔物の体を中心に6連撃の斬撃を、全方位から斬り刻む。
「ギイィィィィ‥‥!」
堪らず魔物は両腕の触手を立て、倒れないように体を支える。
「喰らいなッ!」
この隙を逃さずルークスは剣に電撃を纏い一直線に突っ込み斬り捨てる。
魔物の体に電撃を受け、バチバチと鳴らす。
「ギギ‥キシャァァァァ!!」
触手を使い薙ぎ払う。咄嗟に剣を盾にとり後退する。
「くッ!‥しつけーな。まだ倒れねえのか?」
相手の様子を見る限り、あともう少しと言ったところ
「そこらにいる魔物と同じに見てはいけませんヨ」
ドッカーン!
こちらではミルキーの魔術が炸裂していた。
「どっからでも掛かってきなさい!」
「ミルキー!アッチだよ!」
ステラが示した方向に魔術を放つ。
「炸裂する炎よ‥ファイヤーボム!」
炎が纏った四角形のデコイを生成する。
黒いゴーレムが術の範囲内に入るタイミングで爆発を起こす。
「これで最後だよ!」
再び黒い魔物の居場所を示すと、プルートが細剣の剣先に怪しく光らせながら突っ込んで行くと。
「消えろ‥!」
目に止まらぬ速さで、ゴーレムを斬り刻む。
「ふぅ‥これで全部か?」
念の為、ステラに確認する。
「うん。ここにやって来たイヤな気配はもう無いよ」
ゴオォォォォォォォ!!
話し終わるとルークスのいた方向から鈍い地響きが起きる。
急な出来事に驚き、テーベもステラの頭から落っこちる。
「なに?!」
ルークスとヘルセが相手をしていた黒い虫型の魔物は、両腕を地面に叩きつける。
「シヤァァァァァァァア!!」
叩きつけたまま左右5本の触手を無差別に地面や木に刺し始める。
その内の一本がミルキーを狙い接近する。
「いやぁぁぁぁぁ!」
反射的に頭を下げ、近付いてきた触手が真上を通り、その先にある木に刺さる。
「ミルキー大丈夫!?」
「全然大丈夫じゃない‥」
涙目になりながら息を荒げる。
刺した触手をゆっくりと引き抜く
触手に刺された木と地面の周辺が黒く変色していき、木には何やら獣の様な形に、地面には刺された箇所の一部が抉り取られ、その取られた土はゴーレムの様に積み重ねられる。
「こ、これは‥!」
触手に刺された木は、コーディリアの前にいた黒い獣になり、地面はこの森にいた黒いゴーレムの姿になっていた。
「やはりコイツが王都周辺に黒い魔物を生み出していたのか‥ボスの情報通りだな」
生み出された十体の黒い魔物達は動き始める。
「これってマズいよな‥?」
「マズイも何も‥死なないためにも死ぬ気で戦うまでデス」
幸いにもステラ達のいる場所には黒いゴーレムが一体だけで、彼女達を庇いながら戦う必要がない。
だが、ルークスとヘルセは魔物に囲まれ、九体の魔物と親玉である虫型の黒い魔物をどうにかしなければならない。
この状況を打破できるものは‥
そんな事を考えている内に後方から誰かの声が響いた。
「伏せてッ!」
その瞬間、辺りに爆発音に満たされ土煙が舞い上がった。




