24.遺跡
ガサガサと静かな森の中に、複数の足音が鳴り響く。
右目を隠す毛先が白色の男は少し苛立ちを見せ吐き捨てる
「黒い魔物どころか、魔物の姿すら見ないぞ?本当にこの道で合っているんだろうな?」
「どうしてそんなに急いでいるんだ?あの黒い魔物が危ねぇのは分かるけどよ、ちょっとは冷静になれよ」
「俺はな…絶対悪の象徴だぞ。魔物共を倒さなければならない。こんなところでいつまでも歩いている場合ではない!」
「ハイハイ、そーゆーのはいいからテキパキと歩きなさい」
鬱陶しそうにミルキーが適当に話す。
「チッ……ん?なんか見えてきたぞ?」
プルートは何か見つけたのか先頭に立っていたルークスを追い越し一人で先に進んでいった。
「おいおい、一人で突っ走ってんじゃねーよ」
彼の後を追いかけ、道を切り開きながら進む。
獣道から抜けるとそこには草木が開けた場所にでた。
「これは…?」
ミルキーは唖然とする。
彼らの目の前に、大きな遺跡と思わしき建物があったからだ。
テーベを頭に乗せテチテチと歩き、石で出来た壁を触る。
「なに?コレ?」
続いてミルキーも壁に近付き辺りを調べ始める。
「……これってリゲル尖塔で見たものと一緒……?」
迷いの森の奥。人の手が届いていないであろう場所にポツンと存在していた。
正面にはルークスよりも一回り大きい石の壁があり、あちこちに穴が空いている。真ん中に扉があったのか不自然に間隔をあけている。
何年も人が来ていないせいか、そこら中に雑草が生い茂っている。
石の壁は、この遺跡を囲み守る様に建てられている。
「この森にこんな建造物があるとは…驚きましたネ」
関心するヘルセを隣にプルートは石の壁を調べながら吐き捨てる。
「何かと思えば…ただの遺跡か…期待ハズレだな」
「そう言いながらめちゃくちゃ調べてんじゃあねーかー。本当は興味あるんじゃねーの?」
「ふッ…魔物が物陰に潜んでないか確かめただけだ」
「ふーん」
ステラは壁の向こうに指をさす。
「奥に続いているよ?」
壁の奥に石で出来た道が続いている。
左右には、朽ち果てた建造物が何軒か建っている。
そしてこの遺跡の中心となる場所に4本の柱があり内2本が折れた状態で残っている。
見た感じだと、そこには何かしらの建造物が建っていたのだろう。
他のものと比べるとそこだけが酷く朽ち果ててる様にみえる。
ルークス達は奥に進むとステラが何かに気付き始める。
「あれ?だれかいるの?」
遺跡の中心にいた人がステラの声に反応し、緑髪を翻しながらこちらに振り向く。
「ん?こんなところに人?」
謎の緑髪の少年が近付く
「止まれ。貴様…こんなところで何をしている?」
辺りを警戒していたプルートが細剣を引き抜き威圧をかける。
ルディとは異なる学者服を着た少年は両手を前に出し慌てて話す。
「わわっ!?ちょっとまって!僕何もしてないんだけど?!」
「そうだぜプルート?さすがにいきなり剣を突きつけるのはよくねぇと思うぞ?」
剣を下げるように注意を促す。
「…………」
(コイツから妙なものを感じたが…気のせいか?)
何か突っかかる表情をするもの、素直に引き下がる。
「まあいい。で、貴様は何者でここで何をしていた?」
ズレた丸いメガネをかけ直し緑髪の少年は答える。
「ええーと僕はアルゲティといいます…ちょっと捜し物をしていて…君達は?」
「プルートだ」
「俺はルークス。訳あってここに来ている」
「ミルキーよ」
「おや?私もしなければなりませんか?私はヘルセといいマース」
最後にステラが名乗ろうと前へ出たところアルゲティがあるものに反応する。
「あ!」
「え?な、なに…?」
「あ、ああごめん。君の頭に乗せてるソレ…僕が探してた子なんだ」
テーベは彼に気づいたのか、プルプルと震えだした。
「この魔物はアナタのペットか何かで?」
ヘルセの質問にアルゲティは答える。
「ペット?ち、違うよ。ちょっと理由があって話せないけど、とにかく、その子を返してほしいんだ」
「プルプルッ!」テーベの震えが次第に大きくなり、次の瞬間、アルゲティに向けて3発の粘液を飛ばし始めた。
「ひぃ〜!」
間一髪で躱し、ベチャ!と勢いよく地面に当たる。
プルプルッ!と、また震え粘液を飛ばそうとしている。
「テーベちゃん!ダメだよ。そんな事しちゃあ。めっだよ。めっ!」
プルプル……ステラに注意されて反省をしたのか大人しくなる。
攻撃してこなくなる事を確認すると安心したのかホッと一息をつく。
「た、助かった…」
その様子を見ていたプルートは尋ねる。
「スライム如きに恐れているのか?」
「そ、そう言う訳じゃあないけど…」
「でもさっきのコイツ凄かったわね」
ミルキーの言うことにルークスも同意する。
「そうだな。あんだけ粘液を飛ばすなんてな…」
「相当嫌われているようデスネ?」
頭を掻きながら困ったふうに話す。
「あはは…なんでだろうね」
プルプルッ!再びテーベが粘液を出そうとしているのか震え始める。
「ひぃ〜またくるぅ〜!」
さっきの粘液飛ばしが来ると思い頭を抱え、縮こまる。
しかし、テーベは攻撃することなくステラの頭から降り体全体?を動かし何か伝えようとする。
「テーベちゃんどうしたの?」
テーベは喋る事が出来ない為、必死に動かす。
しばらく経つと疲れたのか、それとも伝え終わったのかクネクネとした動きをやめる。
「コイツ結局何がしたかったのかわか―――――」
ベチャ!
プルートの態度に腹が立ったのか粘液を顔面に飛ばしていた。
「………消し炭にしてやっても構わんのだが?」
静かに怒り粘液を拭う。
「ホントバカばっかりね〜。で、コイツの言ってる事わかったの?」
呆れた表情になりつつステラに聞く。
「ん〜……この子が言うには、このアルゲティって人に色んな事をされて、それでイヤになって逃げてきた……かな?」
言葉を詰まらせながら話す。
「ステラにしちゃ珍しいな。いつもはハキハキと話すのに?」
「この子…他のスライムと違って…なんていうんだろう……わかりにくい…のかな?」
「アタシに聞かれても知らないわよ。まあいいわ。とにかくアンタがコイツに何かやって逃げた…でいいよね」
アルゲティに指をさしながら話をまとめる。
「えぇー!?違うよ誤解だって!?」
慌てて否定する。
「じゃあ何をしたか言えるの?」
「ええーとそれはそのボソボソ…(何だか厄介な方向に…早く033を回収しないといけないのに……)」
うまく聞き取れなかったのか苛立ちを見せる。
「は?何?言いたい事があるならハッキリと答えなさい!」
彼女の勢いに負け黙り込む。
「えっと……」
(ミルキーって言ったっけ?エルフなのに何でこんなにも強気なの?エルフって温厚な性格が多いと聞いてたんだけど……はぁ、このまま話し合いしても033を返してもらえないし、やるしかないよね…)
「怒っちゃめだよ!めっ!」
そう言いながらミルキーの頭にチョップを入れ込む。
「………ハッキリしないのが悪いのよ…」
ミルキーは不貞腐れながら近くにある丁度いい高さの石に座る。
武器を手入れしていたヘルセが不意に話し掛ける。
「どうするのデスカ?我々としてはこの後の仕事が溜まってるので早く決断を下してくれると有り難いデス」
「イヤ!渡したくない!」
そう言うとステラはテーベを持ち上げ守る様に抱きかかえる。
丸メガネを弄り困惑した雰囲気に尋ねる。
「ええっーと、返してもらえないかんじかな?」
「うん。テーベちゃんが嫌がってるから」
「不本意だが、コイツに賛同だ。貴様が魔物に対し何をしてるのか分からない以上、安易に渡す事はできない」
魔物を嫌っているプルートが珍しくステラの味方につく。
「どーいう風の吹き回しだ?お前がテーベを庇うなんてよ」
「ふん…奴が魔物共に何らかの事をしている。そんな奴に渡せば俺達に余計な仕事が増える。ただそれだけだ。」
アルゲティは諦めたのか上着のポケットからスイッチのような物を取り出す。
「どうしていつもこうなるんだろう…じゃあいいよ。力尽くでも返してもらうから!」
ハキハキと話したあと、ポチッとスイッチを押す。




