23.親玉探し
ズドン!ズドン!
黒いゴーレム型の魔物が歩くたびに小さな地響きを起こす。
剣を再び構え斬り込もうとした瞬間
「ガ…ガガ……ガガガガガガ!」
ゴーレムから音のような声をを発する。それと同時に突風を巻き起こし黒いオーラを纏い始めた。
「っ!?なんだありぁ?なんかやべぇの出してきたぞ?!」
ルークスの疑問に隣に居たプルートが答える。
「いちいち驚くな…あれは黒い魔物だけが使う力。悪星バリアだ」
「悪星バリア?なによそれ?」
聞き慣れない言葉にミルキーが質問する。
忌々しそうにプルートは答える。
「あのバリアが張られている間、どんな攻撃も無効にする厄介な力だ…」
「はぁ?!なんだよソレ!厄介どころのレベルじゃあねーぞ?!」
厄介どころのレベルでは無い。反則級だ。
ルークスの焦りとは裏腹に余裕をもったプルートは続けて話す。
「ふッ…安心しろ。ちゃんと弱点となるものがある。黒い魔物自体がそうだが奴等は一律に魔術、武術にとてつもなく弱い。あのバリアも魔術か武術のどちらかを当てれば一撃で破壊できる」
彼の言うとおりであれば話が早い。ミルキーは念の為に聞いておく。
「じゃあ早い話、あいつらに魔術をぶち込めばいいのね?」
「そうだ。お前達は下がっていろ。俺が手本となるものをみせてやる。この宵闇の皇帝がな!」
右手を左目にあて、「くっくっくっ」と笑いながら詠唱の準備をする。
「やる気があるのは結構ですが、空振りをして余計な仕事を増やさないようにお願いしますヨ?」
水を指すようにごちゃごちゃと言ってくるヘルセを隣に詠唱を始める。
「うるさいぞ。這い寄れ影の剣よ、降り注ぐのは悲痛の刃!ベイオネットシャドゥ!」
三体の黒い魔物の影から何発もの黒い銃弾が魔物の体を貫く。
魔物達が纏わせていた黒いオーラが弾き飛び堪らずダウンする。
「ふんっ。他愛もないな。さて、そろそろトドメといこうか…獄炎に眠る大地の力…枯れ果てた土を蘇り闇夜を祓いその力…開くは絶望の――――――」
「ファイヤーボム!!」
詠唱を遮りミルキーの魔術が炸裂する。
ゴーレム型の黒い魔物達は一掃され、ゴーレムに付いていた石の塊が砕け散る。
トドメを取られたのが気に入らなかったのか、露骨に不機嫌になりつも尋ねる。
「何故邪魔をした?」
手のひらを返し呆れた風に返す。
「あんな長ったらしい詠唱なんて待ってられないわ〜」
「なに?!」
「落ち着いてくだサーイ。プルートボーイ。我々は今ここでグダグダと話している場合ではありまセーン」
ヘルセの指摘に我に返る。
「そうだったな…さて、黒い魔物を倒したわけだし、次はお前だな」
プルートはテーベに視線を移す。
「まだやろうってか?」
「当然だ。魔物を消す事が、俺達の生きる意味だからな」
今にも斬りかかる勢いに圧をかけるもののヘルセが手をかけ、一旦この場を止める。
「まちなさい。プルートボーイ。私から聞きたいことがあるので」
そう言うとステラの方に近付く。
しかし先程の不意打ちがあったためルークスが立ちはだかる。
「安心しなさーい。今はこの魔物に攻撃なんてしませんよ」
「さっきあんな事をしたヤツの言う事なんて信用できるかよ。聞きたいことがあるんならここで話な」
魔物を狩る組織…絶対悪の象徴。
テーベを守る身としては信用してはならない相手。
少しステラとの距離をあけて尋ねる。
「仕方ありませんね。そこの白髪の少女に聞きたいことがありマース。アナタはさっき、黒い魔物が姿を現す前にこう言いましたね。「嫌な気配がする」と、アナタは魔物を探し出す能力があるのデスカ?」
この質問にポカーンとする。
「ふにゅ?よくわかんない…」
代弁するようにルークスが答える。
「俺達の方もよく分かってはいないんだが、黒い魔物に対して独特な気配がするらしく、だいたいの位置が分かるらしい」
通常の魔物にも気配を感じ取ることは出来るが、黒い魔物ほど正確な位置を割り出せない。
「ふむ……では我々と協力しませんか?」
ヘルセの出てきた言葉にプルートは怒り気味に問い詰める。
「何をとぼけた事を言っている?!さっきは黒い魔物が来てたから仕方なく力を貸してたが、今はそうじゃないだろ?!」
「アナタの言い分も分かりマス。我々としては目の前に居る魔物を排除したい所デス。デスガ今は王都に脅かす黒い魔物……その統率者となる魔物を優先しなければなりまセン」
ミルキーは一つの単語に引っかかり尋ねる。
「統率者?え、ちょっとまって、さっきのヤツと王都にいたヤツって単体で動いてたわけじゃないの?」
見下す様な視線で答える。
「気付いてなかったのか?やれやれ、これだから素人は…」
プルートの言い方に腹が立ったのか喧嘩腰に聞く。
「はぁ?じゃあアンタらは分かってる訳?」
「これを話す前にお前達は黒い魔物について、どこまで知っている?」
「わりぃがアイツらに関しては知らねぇんだ」
何だかんだフェーベ村に居た時には全くと言っていいほど黒い魔物に関して情報が入ってこなかった。
プルートは少々驚いた表情になり質問する。
「知らないだと?冗談を言っているつもりか?」
「いやいや冗談じゃねーて、黒い魔物について知ったのは王都に来てからだ」
オリオン平地に出遭った黒い魔物がルークスにとって初めての黒い魔物だった。
ルークスの真剣な顔つきに嘘はついていない事を理解し話し始める。
「そうか…ならある程度知る必要があるな。話が長くなるからよく聞いておくがいい。そうだな、あれは今から3年前だったか、この星に黒い魔物が確認された。当時は意味の分からん能力により世界各地で混乱していたそうだ。とは言っても実際出てきた魔物は1種類だけ…そしてその種類の数は現在まで増えることも無く気にしてなかったのだが、最近奴等の動きが急激に活発化してきてな…王都で見た魔物と、ここで会ったゴーレムも何の予兆もなく湧き出やがった。それもこの王都の周辺だけ、それで俺達はこの辺りを見回っていたというわけだ」
「ふーん?で、アンタ達は何でこの森に来たの?他に怪しい場所あるでしょ?」
右手を出しカッコつけたポーズをとる。
「ふッ、それはな…この宵闇の勘…というヤツだ」
「ボスの言う事をあたかも自分が考えた風に話すのは感心しませんネ?」
ヘルセから余計な指摘が入る。
ぷるぷる?
「…そうなのか?」
ステラがわざとらしく大きな声をだして煽るように喋る。。
「カッコわる〜い」
「黙れ!」
「バカばっかりね〜」
ルークスが再び尋ねる。
「で?結局何が言いたいんだ?」
「アナタ方のチカラを貸してほしいのデース。アナタの持つその能力を上手く使いこなせば、こちらとしても手間が省けマース。それにアナタ方も何か目的があってここに来たのではありませんか?」
プルートとヘルセは黒い魔物を排除するため、ルークス達は黒い魔物の異常発生の原因を突き止めるため。
互いの利害が一致している。
ヘルセはルークスに視線を向け返答を待つ。
「どうすんの?」
ミルキーが決定権を渡す。少しの間ルークスは悩む。
仮に彼らに協力するとして、目的の魔物を倒した後その次にテーベを狙ってくるだろう。だからっと言って断わりでもすれば「コイツを始末してから行こう」となりかねない。
どのみちろくな事にはならない。
上手いこと丸く収まる方法を考える。
「るぅーくすぅー?」
しばらく沈黙が続いたせいか心配そうに顔を覗かせる。
「そんな顔をしなくても大丈夫だぜ」
ステラに笑顔を見せ回答する。
「わかった。ここは協力していこうか。但し条件がある」
「条件だと…?言ってみろ」
プルートの高圧的な態度に怯まず答える。
「簡単なモンだ。協力してる間はもちろんだが終わった後もテーベに手を出さない事だ」
「ふむ…ま、いいでしょう。今はソレで手を打ちましょう。いいデスネ?プルート?」
「チッ……今回だけだぞ。次は無いからな」
意外にもすんなりと受け入れた事に驚いたが、彼らにも何か考えがあっての事だろう。
「そういうわけだ。早速案内してもらおうか白髪」
「白髪じゃない。ステラだよ!」
ステラの気持ちを表してくれたのか、頭に乗っていたテーベがプルートにバレないように粘液を飛ばす。
「魔物を庇うヤツなど――――――」
ベチャ!
見事彼の顔にテーベの飛ばした粘液が当たった。
「………」
しばらくの間プルートは沈黙に入る。
その傍らにいたルークスは何事もなかったの様に再度尋ねる。
「ステラ。嫌な気配はどこから来るか分かるか?」
すると黒い魔物達が来た方向に指をさし答える。
「うん。あっちだよ」
「さっきの魔物が来た方向ね。さあ〜て、ちゃっちゃとやって、さっさと帰るわよ!」
行く先が決まった所にルークス達は森の奥へ足を運ぶ
「いつまでそのままでいるつもりデスカ?」
「なあ、ヘルセ。一つだけいいか?」
「なんデスカ?」
「あのスライム…消し炭にしていいか?」
「余計な火種はノンノンデスヨ?それにまだ仕事が残っていマス」
「事が終わったら、アイツを一番に刈り取ってやる…!」
一人闘争心を燃やしルークスの後を続く




