20.迷いの森
街道に沿って歩き続けて数十分‥‥
迷いの森へ到着し、息抜きに休憩を取っていた。
「気配があるか?」
「あっちの方からする」
道の外れに指をさす。
「森の奥か‥」
分かってはいたが森の探索となると、ある程度の準備が必要なのかもしれない。
「気配はどう?近い?」
「うーん‥‥近いかな?」
曖昧な答えだが、一応近いようだ。
「近いらしいけど、どうするの?このまま行く?」
「そうだな‥行ける所まで行ってみるか。危なかったら戻ればいいしな。もう少し休憩してから行こうか」
森の探索となると尚更、急いで行くべきでは無いだろう。
ルークスとミルキーは丁度いい高さの岩に座り、ステラは何か見つけたのか近くの草むらに入る。
「あんま遠くに行くなよ〜」
ステラに注意を呼びかける。
「大丈夫大丈夫!」
元気よく返ししゃがみ込む。
ミルキーは魔導書を弄りながら話し掛ける。
「調子はどう?」
「何が?」
「あの子の記憶よ‥進展あったの?」
「いいや、あれから何もねぇな‥」
「そう‥アタシの方も調べてみたけどサッパリね」
小さくため息をつき、空を見上げる
「コーディリアに行ったら何かしらのヒントがあると思ったが、まさか何もねぇとはな‥‥この辺りの住人じゃあねえって事か?」
「それは知らないけど少なくとも、あの子の情報はここには無いわね」
「どうしたもんかね‥」
この一件が片付いた後どうするべきか、そう考えるだけで頭が痛くなる。
(これ以上、王都に居ても仕方ねぇ‥か)
「るぅ〜くすぅ〜‥」
草むらから静かに姿を現し、何かを抱えながら、こちらに近づく。
「ステラか―――て、何だソレは」
彼女が抱えてきたものは、青いスライムだった。
「スライムだよ。そこの草むらで見つけたの」
「いや、そうじゃない。なんでスライムなんか」
普段であれば今すぐ倒しにかかるが、彼女は魔物と会話をすることが可能で、何よりもこの光景に慣れてしまい不思議と安心してしまう。
「この子ね‥すごく弱ってたの。だから傷を癒やして治したの。そしたらね、懐かれちゃった」
「あーそう?じゃあその辺に置いてきなさい」
ミルキーからの言葉に反撃する。
「むぅ‥どうしてそんな酷い事言うの?」
魔導書をしまいステラに視線を向ける。
「はぁ‥いい、ステラ。アタシ達はこれから黒い魔物と戦いに行くのよ?ソイツを連れてきたところで、な〜んにも出来ないじゃない。スライムなんて雑魚中の雑魚よ」
言いたい放題に言われカチンときたのか、スライムはその小さな体でビョンビョンと飛び跳ねる。
「は?何?アタシに逆らう気?いい度胸してるわね〜。そのまま蒸発させてやろうかしら?」
腰に付いた魔導書を片手に持とうとする。
「まてまてって!ちょっとは落ち着けよ」
急いで止めに入る。
「そうだな‥そのスライムは俺とステラの二人で面倒を見るのはどうだ?それならお前も別にいいんじゃあないか?」
半ば諦めたのか、投げやりに言う。
「その二人が頼りないから今こうして言ってるのよ‥‥ハァ、もういいわ‥好きにしなさい」
スライムを連れて行ける事を許されたステラは喜ぶ。
「やったね!テーベちゃん!」
スライムも喜んでいるのか、プルプルと震える。
(早速名前を付けてんだなぁ‥)
ミルキーはテーベに近づきツンツンと突く。
「それにしてもそのスライム‥やけにスベスベしてない?ほら、スライムって普通は粘液で全身ベタベタしてるでしょ?それにまん丸い見た目もしてるし」
ルークスも近づきテーベを上から覗き込む。
「言われてみれば‥‥そうだな‥俺も今まで何体か、スライムと戦ってきたが、こんな綺麗なスライム‥初めて見たな」
スライムと言えば、半透明のドロドロとした液状の見た目をしている。
しかし、このスライム‥テーベの見た目は綺麗な丸形に表面はスベスベとしたさわり心地となっている。
「なあステラ。こいつは元々こんな状態だったのか?」
テーベを触りながら答える。
「ん?そうだよ。ぷにぷにしてて可愛いでしょ?」
「‥‥やっぱりやめない?そんなよく分からないスライムを連れて行くの‥」
ミルキーが反対しだすと、すかさずステラは強く言う。
「だめ!もう連れて行くの決めたから!」
「‥‥‥」
納得のいかない顔をするが、ここでルークスが入ってくる。
「心配すんなって、もし何かあったら俺がどうにかするよ。だからさ、ここは‥な?」
「わかったわ。でも少しでもコイツの様子が怪しいと思ったら‥‥わかってるわね?」
念の為にと釘をさす。
「分かってる。その時はちゃんとやるさ」
「なんのはなし?」
「何でもないわ。さぁ、雑談は終わり。行くわよ」
先程の話から素早く切り替えこの場を仕切る
「ステラ。俺達からあまり離れるなよ」
念の為に注意を促す。
ステラは小さく頷き足を進める。
ルークス達はステラの感じる嫌な気配を頼りに、迷いの森の奥へ向かう。




