19.黒い魔物
王都コーディリアの入口に黒い魔物が現れ絶対悪の象徴により討伐された。
ヒマリアが去っていった後、残ったルークス一同はこの先どうするか決め兼ねていた。
「あ、あの〜‥」
最初に声を出したのはルディだった。
「わ、私‥用事があるの忘れてて‥お話はまた今度でいいかな?」
「あ〜そうだったの?こっちは大丈夫よ。また来てね」
「あ、ありがと‥じゃあ行くね」
ルディは王都へ向きゆっくりと歩きこの場を去っていった。
「二人とも、ちょっといい?」
ルークスが反応する。
「ん?なんだ?」
「今からアタシと一緒に守護星導光のある場所まで来てほしいの」
口に手を当てながら言う。
「お散歩したいの?」
「んなわけないでしょ。ちょっと確認したいことがあるの」
「確認したいこと?まあいいけど‥近くに守護星導光がある場所って言ったら、前にヒマリアと一緒に来た時にあった場所だな」
ステラは小さく跳ねながら話す。
「それなら私も覚えているよ。あのキレイな青い石の事だよね?」
「あら、知ってるのね。じゃあ話が早いわ。早速行きましょ」
前回迷いの森から王都に来る際に見た守護星導光の所まで移動するのであった。
★
しばらくの間、街道に沿って歩いていると目的の守護星導光の姿が見える。
石垣の向こう側に草木が茂り、人の手があまり届いてないように見える。
「あったわね。ちょっと見てくるから二人はここで待ってて」
そう言うと、こちらが話す前に青い石へ調べに行く。
後から追いかけるとミルキーは何やら小難しい表情をしブツブツと呟いている。
ルークスが声を掛けようとしたが、あるものが目に入る。
「ミルキー?どうした―――てなんだこりゃ?」
目の前にある小さな守護星導光の一部が割れ黒ずんでいた。
側にいたステラは嫌がり距離をとる。
「ねぇ、ルークス‥ミルキー‥ここ、嫌な気配がするの‥離れよう?」
「ちょっとまって、あともう少し見させて」
ミルキーはレンズを右目に装着して熱心に観察する
「はぁ‥ステラ、悪いがもうちょっとだけ待っててくれないか」
「うん‥」
不安なのかルークスの腕を掴み寄せる
(‥前に来た時、あんなのあったか?)
「二人とも、気をつけて‥!嫌な気配がこっちに来る!」
ステラは後ずさりしながら近くの草木の方向に視線を流す。
「ミルキー!調べ事は後だ!構えろ!」
「仕方ないわね‥ステラ、アンタは下がってなさい」
「怪我しないでね」
ガサガサと音を立て草むらから何かが飛び出してきた。
「ガルルルルゥゥ‥」
黒い獣型の魔物が二匹姿を現す。
「こいつ‥!オリオン平地で見た魔物と同じやつか!?」
「よく見て‥あいつと違って背中の毛が尖ってないわ‥多分別の種類よ」
オリオン平地に出現した魔物とよく似ているが、あの特徴と言うべき背中の尖った毛が無く、ほんの少しこちらの方が大きく見える。
「ガウッ!!」
魔物の一匹が小さく鋭い爪を立ててルークスに目掛けて引っ掻く。
剣で守り、薙ぎ払うように飛ばす。
「煌めく宝石よ‥ストーンジェム!」
ミルキーの前に岩石を生成し、黒い魔物に向けて発射する。
二匹の魔物はそれぞれ左右に避け、挟み撃ちの形にミルキーを襲う。
「迅速迅雷!」
目に止まらぬ速さで一匹の魔物を斬り捨てる。
「グアァァァァァ‥‥」
斬られた魔物は全身に電撃が走りパタリと倒れる。
「ガウッガウッ!」
もう片方の魔物が素早く動きルークスに咬み付こうとする。
「凍てつく針よ‥アイスニードル!」
八本の氷柱が魔物に突き刺す。
「グギィィィィィィ!?」
「そこだッ!」
相手がよろめいた隙にスパッと斬り込む。
「クウゥゥゥゥン‥」
二匹が動かないことを確認すると声を掛ける。
「やったか?」
「大丈夫だと思うけど油断しないで」
テチテチと歩きステラが近付く
「ステラ怪我ないか?」
「うん、大丈夫だよ」
笑顔で返事をしたものの何処か不安気な様子だった。
「どうした?」
「‥森の方から嫌な気配がする‥」
迷いの森の方へ指をさし伝える。
(嫌な気配‥‥さっきの魔物がまだいるってか?)
ここで一つ質問をする。
「なあミルキー、その守護星導光って壊れてんのか?黒い魔物も普通に侵入してるし」
守護星導光の効果範囲内であれば魔物達は近付く事ができない。
しかし、先程の黒い魔物に関しては何事も無かったかの様に堂々と侵入していた。
「うーん‥見た感じ壊れていないと思う。でも、時間の問題かもね‥ほら、ここ見て」
ミルキーの指した場所に目を向ける。
守護星導光の先端に侵蝕する様に黒ずんでいる。
「それやっぱ関係あんのか?俺が来た時、黒ずんですらなかったぞ。それにさっきの黒い魔物がこんな近くまで来てたじゃないか、機能してるとは思えねぇが‥?」
「この星導光はまだ生きてるわ‥その証拠にここ‥光ってるでしょ」
守護星導光の中心部に綺麗な丸型の星核が蒼白く光ってる。
「これってなぁにぃ?」
ステラが興味津々に聞く。
「これは星核よ。星導光を動かす為の機関‥謂わば心臓よ。たとえ星導光の一部が破壊されても星核さえ無事なら効力は弱まるだけで、消えるわけじゃあないの」
「じゃあ今の守護星導光の効力は弱ってるってことか?」
苦々しい表情で答える。
「そうね‥それもあまり良くない状態‥このままいけば星核も壊れてここの守護星導光の効果も消えてしまうわ‥」
「それって大丈夫なの?」
ステラが心配そうに尋ねる。
「まあ最悪ここの星導光が止まっても王都に強力な守護星導光があるから然程問題ないわ。でも、ここを通る人にはかなり影響しそうね」
しばらくの間、守護星導光の黒ずんだ部分を見つめミルキーに聞く。
「これって、黒い魔物が原因か?」
「分からないけど多分そうじゃあない?そもそも黒い魔物自体分かってないし」
(‥ステラは迷いの森の方向から気配がするって言ってたな。この黒ずみが魔物の仕業だとすれば‥‥)
「ルークス?どうしたの?」
気がつくとステラがこちらを下から覗き込む姿勢で話し掛けていた。
「いや、何でもないよ。それよりもどうすんだ?これ治せるのか?」
「残念だけどアタシじゃあ、どうしようも無いわ。星導光の作り方すら不明なのに、治すなんて無理よ」
彼女がここまでハッキリと言い切るのは珍しい。
この星に存在する多くの生物は星導光を使用している。
しかしながら、その星導光や星核の作り方や何処から出てきた物か、ソレすら現時点で分かっていない。
おかしな話だ
(でもさすがにコレを放置する訳にはいかねぇよな‥‥)
ひと息入れ、わざとらしいく「あ」と言い話す。
「俺、用事あんの思い出したからさ。二人は先に帰っててくれないか?」
「むぅ?今日は用事は無いって言ってなかった?」
ステラは疑わしい目でこちらを見る。
「おいおい、俺を疑うのか?」
「うん」
「即答かよ‥」
二人のやり取りにしびれを切らしたミルキーは代弁する。
「相変わらず回りくどいわね〜。素直に「ここを通る人が心配だし、何よりもこれ以上、被害を出す訳には行かねぇ。原因は分からねぇが一番怪しいと思う黒い魔物を倒しに行く‥二人とも、協力してくれ!」って言えばいいのに」
「え?そうなの?」
「‥‥‥」
ここまで言われると隠し通せない。
彼は観念したのか「ハァ」と溜め息をだし話す。
「‥二人を戦いに巻き込ませたくはないが‥」
「あんまり私をナメないでよね!」
覚束無い動きで拳をブンブンと振るう。
「‥この子はアタシとアンタで守りながら行きましょ」
二人に流されるまま迷いの森へ出発する。




