15.十二星宮の一人
雷が落ちる音が鳴り尖塔全体に振動が伝わる
これによりステラだけでは無くルディも心配する。
「ルディ?待たなきゃだめ?私もう我慢できないよぅ…」
「た、確かに今のは、凄くヤバそうだよね…?」
バッとステラは立ち上がり話す
「行こう!ルディ!」
「う〜…うん!行こう!でも危ないから慎重に…ね?」
悩んだ末に三人が居る頂上へ目指す
禁断盗賊団もすでに逃げており尖塔はもぬけの殻となっている。
不安になりつつも上へと登る
★
頂上ではアクエリアスとの激戦を繰り広げ、終わったと思いきやまだ奥の手を控えていたようだ。
「はぁぁぁぁぁぁ…!」
アクエリアスの放った水が周りに集まり彼を包み込むように見えなくなり……
バァァァァンと水か弾け飛び彼の姿が現す。
「君達のチカラがここまでとはね……」
体全体に水が纏わり、甲冑の様な姿に変貌している。
高圧的な見た目をしているのか、爽やかさが消え表情も分からないため別人に感じる。
「さて、改めて言おう…僕は十二星宮の一人…水瓶座のアクエリアス…」
十二星宮の一人 鎮座の「水瓶座」
「覚えておくといい、いや…もう覚える必要は無いか…何故なら君等二人は……僕に殺されるからなッ!」
水で出来た細剣を片手に持ち地面に向かい叩きつける。
「水影・千鳥足!」
叩きつけた床から大粒の水飛沫を上げる。
その水飛沫は左右に交互しながらミルキーへ向かう。
ぺたんこ座りの彼女を抱き上げ回避する。
「ちょっと!どこ触ってんのよ!」
「今はそんな事を言ってる場合か?!」
(喋れる元気はあるが…しばらくは戦えそうには無いな…)
駆け足で走り回りながら思考を巡らせる。
「逃げ足だけは速いようだね?」
アクエリアスはその場から動かずにこちらを捉える。
「水槍・爆撃!」
手のひらに槍状を形成し、ルークスの足元へ投擲する。
物凄い速さで迫り、的確に命中する。
さすがのルークスも避けきれず当たってしまう。
着弾した所から大きな水爆を起こす。
「あぐッ!」
直撃しなかったとはいえ、爆風で二人は飛ばされる。
「ミルキー!」
「仲間の心配よりも、自分の心配をした方がいい」
「!?」
発した声が近かったため反射的に後ろを確認すると
アクエリアスが真後ろに立ち今にも斬り掛かろうとしていた。
先程の攻撃により剣を放してしまっている。
彼を守るものは何も無い
「くっ!?」
誰かが助けに来てくれる訳も無く無情にも水で形成された剣を振り下ろす。
何を考えたのかルークスは思わず手で受け止めようとする。
バシャァァァァン!!水飛沫の音が辺りに広がる。
★
彼はミルキーの言っていた事を思い出す。
「アンタは光星エネルギーを吸収して術の発動を妨げているのよ」
「普通、光星エネルギーを体に吸収したら拒絶反応を表すの」
光星エネルギーを吸収……
彼は一つの勝ち筋を見出す。
(今まで俺は、魔術が使えないと思っていた…)
ミルキーからのヒントをもとに考えがまとまる。
(使えないじゃない…使う方法が分からなかっただけ…あとミルキーはこう言ってたな…無意識にエネルギーを吸収してるって…これを意識的に出来れば…!)
★
「……!!」
アクエリアスが振るった水剣をルークスは片手で受け止めていた。
「どうした?そんなにおかしいことか?」
そのまま水剣を握り潰し、術式を瓦解させる。
「次は…こっちから行かせてもうぜ!」
握り拳を水の甲冑へ叩き込む!
ズドンッ!重い振動が伝わる…
不意にアクエリアスは薄っすらと笑う。
「残念だね…その程度の攻撃じゃあ、僕の星水鎧に傷一つつけられないよ?」
「はっ!最初から傷つけるつもりはねぇよ!」
ルークスが殴った星水鎧の一部がドロドロの液状となっていた。
「これは…!?」
すぐに異変に気づいたアクエリアスは水爆を引き起こし、その爆風を利用して後退する。
(どういうことだ?僕の星水鎧は絶対防御術だ…たかがひと殴りで破壊できるものではない…)
「何をした?」
清々しく答える。
「ただ殴っただけだが?」
剣を拾い戦闘態勢をとる。
「そうか…なら!試すまでだ!」
壊された鎧の一部を修復し魔法陣を浮かべる。
「沈黙の雨よ、愚者に悪しき罰を与えよ!サイレントレイン!」
音も無くルークスの頭上から広範囲の小粒の雨が降り注ぐ。
「雨か?」
音が無いので雨粒が当たりようやく雨と分かる。すると当たった箇所から激しい痛みに襲われる。
「っ!?痛え!」
アクエリアスは追撃することなくこちらを観察する。
(この雨、よく見れば一つ一つ小さな刃になってんのか?!でもこれなら!)
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
気迫と共に風を巻き起こし術を退ける。
「術が…?いや、エネルギー自体を自身に取り込んでいるのか?だが吸収したのならば拒絶反応を起こすはず…」
「へぇ〜?ミルキーのレンズみたいに分かるんだな」
さっきの見ただけでここまで分かるのか…
ルークスはダッシュし一気に距離を縮め斬撃を繰り出す。
考える間もなく咄嗟に水のシールドを展開し防ぐ。
「甘い!」
至近距離から3発の水鉄砲を撃ち込む。
バンッ!バンッ!バンッ!と全弾素手で弾きシールドもろとも破壊する。
「なッ…!?」
「俺の新技を見せてやるよ! 迅速迅雷!!」
雷撃の纏った剣に圧倒的な速さでアクエリアスを一閃斬り込み通り抜ける。
「…………」
星水鎧は水の塊、感電は免れない。
しかし、彼の思い通りにはならなかった。
「ははは…もしかして、感電を狙ったのかな?」
思わず振り向き構える。
「今の雷撃……当たった…よな?」
「残念だけど…この星水鎧に、電気は通さない」
「なん…だと!?」
「君のその軽率な判断が…死を招くのさ!」
水を槍状に形成し今度はルークスに目掛けて投擲する。
この距離からの攻撃に躱すことはできず
かといって光星エネルギーを意識して吸収することも、まだ彼は吸収するコツを掴めていないためそれが出来ない。
この状況をひっくり返す打点が無い。
死を覚悟した彼だが…
「烈火の如く焼き払え!レイジングフレイム!!」
援護射撃のように後ろから炎の弾がルークスを守る形で水槍に激突し蒸発を起こし相殺する。
「おやおや…」
ボロボロの姿のエルフがルークスの隣りに寄る。
「待たせたわね。ここからアタシも戦うわ」
「大丈夫なのか?もう少し寝たっていいんだぜ?」
魔導書を開きながら答える。
「心配ないわ。それよりもアンタの方こそ大丈夫なの?」
「これぐらい平気…と言いたい所だが、そろそろ限界だな…早めに決着つけねぇと」
「安心しなよ…すぐに終わらせてあげるよ!」
武装する前にダメージが蓄積しているのか雑に攻撃をする。
床から水飛沫を左右に上げながら近づいて来る。
「ルークス!一気に叩き込むわよ!」
「おう!」
「強固なる壁よ、我を守れ!ハードシェル!」
ミルキー自身に術を張り攻撃を防ぐ。
その間に近づき斬りつける。
不思議なことにその斬撃は星水鎧にヒットする。
「ハァ!」
ワンテンポ遅れるように薙ぎ払いをいれる。
(さっきから違和感を感じていたがコイツ…反応が鈍いな…それに攻撃も明らかに弱まってる…?)
「凍てつく針よ…アイスニードル!」
8発の氷柱がアクエリアスに直撃する…が、半分はシールドで防がれてしまう。
「チッ!」
ほんの少しの間だけ凍りついたが、すぐに溶け始め元通りに戻る。
アクエリアスが珍しく焦った様に見えた。電撃は無効にできるが、氷に対しては有効なのか?
そうルークスは考える。
もしそうだとしたら……しかしルークスが行動に移ろうとしたタイミングで相手が先に先手を打ってきた。
「烈水陣!」
アクエリアスの周りに水柱を立て水爆を起こし、近くにいたルークスを追い払い、そしてポツリと一言
「擦り潰せ……」
アクエリアスの言葉と共にルークス達を囲むかの様に巨大な半透明の水壁を出現させる。
「水塵の壁!」
出現させた水壁はジリジリとルークス達を追い詰める。
力を使い果たしたのか星水鎧は解け、座り込み勝利を確信した笑みを浮かべながら話す。
「これは僕の…最大防御術…君等はもう終わりだよ…!」
「何勝手に終わった気になってる…まだ終わってねぇだろ!?」
明らかに相手の方が弱っているのだが、不自然に余裕を出している。
「ははは…君等の言葉にこんなのがあったな…防御は最大の攻撃と……この圧倒的な防御壁を前に、君ら二人は為す術もなく終わる…」
言いたい放題に言われ、ミルキーはムッと納得のいかない表情をしレンズを掛け言い返す。
「確かにとんでもない術だわ…でもね…完璧な術なんてどこにも存在しないの、どんな術でも弱点となる穴が絶対にあるはずよ!」
「ははは!ならやってみるといいよ。足掻くだけ無駄さ!」
嘲笑いながらこちらの様子を伺う。
しかし、今もこうして話している間に着実と壁が迫ってきている。
「でもどうする!?何か策があるのか?!」
「そんなの…今から見つけるしかないでしょ!」
無詠唱でファイヤーボムを発動する。
水壁に触れ小さな爆発を起こす。無詠唱のため威力は控えめだ。
ミルキーは手当り次第に魔術を撃ち込む。
「これならどう!?」
アイスニードルを発動させ水壁にあて、その箇所を凍らせる。
ほんの少しの間、凍りついたがすぐに溶け元に戻る。
試行錯誤に魔術を放ち効果があるのか無いのかイマイチよく分からないルークスは確認のため口を開く。
「さっきから適当に術を発動してるけど効果あんのか?!このままじゃ――――」
「黙ってて!」
これまでの表情が一変し、圧のかかった言葉で黙らせる。
………………………。
しばらく沈黙が続き、滝のように流れる音に満たされる。
そして、その静けさな空気を打ち破りミルキーは質問する。
「ルークス…アタシが寝てる間にアイツと闘ってたのよね?どう対処してたの?」
「そいつはな…光星エネルギーを吸収して術の一部…というか破壊?みたいなことをしてたんだ」
歯切れの悪い回答に解釈をする。
「はっきりしないわね〜。それともアンタ自身理解してないってことかしら?まあいいわ、今ので大体分かったから…要は術に使われる光星エネルギーの一部を奪い取って術式を瓦解させた…ってところね」
「よく分かんねぇーが悠長に話してる場合か?」
この状況にも関わらずレンズ越しに冷静な声で話す
「落ち着きなさい。こういう時こそ余裕を持たないとダメなのよ」
ひと呼吸を入れ続けて話す。
「ルークスよく聞きなさい!時間が無いから簡潔に言うわ!今からアタシが水壁の一部を凍らせる。その間にアンタはその凍った部分の光星エネルギーを全部吸い取るのよ!いい!?」
質問の余地を許さず、すぐに詠唱を始める
(今はミルキーの言う事に頼るしかねぇか…)
「凍てつく針よ…アイスニードル!」
8発の氷柱を生成し、一発ずつ放たれる。
水壁にあたり、そのあたった箇所からパキパキと音を鳴らし表面を凍らせる。
「今よ!!」
ミルキーの合図に目と先まで迫った水壁を押すように両手で触れ光星エネルギーを吸収する。
(くっ!?なんて量のエネルギーだ!一部だけって言ってたけど、その一部があまりにも多すぎる…吸収しきれんのか?!これ)
「も、もう無理…」
ミルキーは術の使い過ぎたため、疲労が溜まり座り込んでしまう。
「ミルキー!?くそっ!このままじゃ……!」
氷柱攻撃が途切れたため凍った部分が溶け始める。
もしこのまま吸収しきれずに凍った部分が溶けきると水壁に含む小さな刃が二人を斬り刻み、ミンチにされてしまう。
最悪な結末が脳裏をよぎる……
(こんなところで殺されてたまるかっ!)
自分自身に活を入れ声を上げる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ほぼほぼ溶け元に戻った水壁の刃が襲う。
ジャリジャリと嫌な音を立て手に激痛が走る。
しかし、ルークスは止まらない、ここで逃げてしまえば自分だけではなく後ろに居るミルキーにも……それに
(あいつを一人にできねぇ)
「頑張るね〜。時に諦めることも一つの選択肢だよ?」
水壁の向こうから何か言ってる。
「黙りやがれ!俺は諦めねぇ!」
ルークスは集中しエネルギーを吸い取る。
すると水壁全体の水の勢いが弱まり術式に異変が起こる
「まさかッ!?」
座っていたアクエリアスはフラフラと立ち上がり戦闘態勢をとる。
「うおぉぉりぃやぁぁ!!」
掛け声とともに水壁が崩れ、相手に突っ走り剣をとり振り下ろす。
「遅い!」
斬撃を躱し手刀に水を纏わせ反撃する。
「水影刃!」
首を刈り取るように横一閃に薙ぎ払う。
ルークスは反射的にしゃがみ込み回避する。
「その判断が、君の敗因さ!」
そのまま真っ二つにする勢いに振り下ろす。
ガシッ、と手刀を掴まれる。
「なッ!?」
水壁を突破された時と同様、驚きを隠せない様子。
手刀を防いだのは剣ではなく、素手で直接掴み防いでいたのだ。
すでに手は血に染まってこの攻撃によりさらに血を吹き出す。
激痛に苛まれながら渾身の一撃を込め放つ。
「こいつで終わりだ!」
満身創痍のアクエリアスにこの雷撃を躱すことができない。
「迅速迅雷!」
斬らずに電撃を擦りつけ通り抜ける。
あとに続き雷撃が相手の体全体に走る。
「うぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
雷撃と悲鳴で辺りを覆い尽くす。
しばらく経ちアクエリアスは堪らず床に膝をつき倒れる。
「や、やったの?」
また立ち上がってくるのかと警戒をしながら近づく。
「さすがに…もう立ち上がれねえだろ!…うぐっ…!」
ポタポタと血が滴り座り込む。
「ちょっと大丈夫?!」
何らかの処置をしなければ……考える間もなく誰かの声が響く。
「ルークス!ミルキー!」
頂上を目指していた二人、ステラとルディの姿が見えすぐに駆け寄る。
「アンタ…なんで?!でもそんな事はいいわ。ステラ悪いけどコイツの傷を治して頂戴」
ステラは、すかさず二人の治療を始める
しかし、この僅かな時間はそう長く続かなかった。




