13.盗まれたもの
リゲル尖塔の頂上に六つの鉄塔が円を描くように等間隔に設置されている。
その真ん中に一人の男が佇んでいた。
「やはり来たか、小僧」
四、五十代ぐらいの見た目に身長は低く小太りの男が静かに喋る。
「僕がここに来た理由‥わかるよね?」
爽やかな表情だがいつもと違い圧を投げかける。
「そんなにコイツが大事か?」
男はそう言うと右手に持っていた大剣を掲げた。
大剣の見た目はそこらの物とさほど変わりはないが鍔に紫色のひし形の石が装着されている。
その石からバチバチと電撃を出し怪しく光っている。
「なんだありゃ? ずいぶんと物騒なモン持ってんな?」
「あれは月星石‥‥僕の盗まれたものだよ」
「ふ〜ん‥じゃあ早い話アイツをぶっ飛ばせばいいわけね いくわよ!」
早速詠唱を始めるミルキーにあざ笑う様に男は言い放つ。
「ガハハハ!エルフの癖に好戦的じゃねーか! いいだろう、テメェら!出撃だ!」
男が合図すると物陰から下っ端達が出てくる。
「グヘヘ‥‥」「イッヒッヒ‥‥」
ナイフや魔術星導光が埋め込まれた杖など武装した下っ端達に取り囲まれる。
「さぁテメェら! コイツ等を叩き潰してやりな! あのエルフの女は奴隷として売り払う価値がある 無傷で捕らえた者は今月の給料を十倍にしてやらァ!」
「うっひょー!てことは俺の給料は1万ミラってことだよな!やる気が出てきたぜ!」
「ミラ!ミラ!ミラ!!この世はミラが全てだァー!」
「ひゃっはー!俺様が一番だぜ〜!」
一斉に襲いかかってくる下っ端達に心底うんざりしながら術を発動させる。
「ああもう!!うっとしいわね!!」
三人を守るように大量のファイヤーボムを炸裂する
「うひょひょ〜!?」「ミラ‥ミラが全てなのに〜!」「なんだこれりゃあー?!」
爆音を響かせながら大半の下っ端達を蹴散らす。
「あいつらバカすぎるぜ!俺が手本ってのを見せてやるよ!」
すると突撃してこなかった下っ端が杖を回し魔法陣を浮かべる。
「凍れ!ソイルフローズン!」
アクエリアスの足元を中心に微弱な霧氷を発生させジワジワと体温を奪う。
「僕、寒いのが苦手なんだよね〜」
アクエリアスは水影を残しながら素早く術者の背後にまわり相手の肩を叩く。
「やぁ」
「え!?」
「水影刃!」
手刀に水を纏わせ下っ端が反撃を仕掛ける間も与えず撃退する。
ルークスも次々に来る下っ端達を一人一人確実に倒していく。
「ボス〜!コイツらめちゃくちゃつえーです〜!」
あれだけ居た下っ端達がやられ、数が減り焦ったのか急に弱腰になる。
「情けない奴らだ‥テメェら!もういい下がれ!ここからは俺がやる」
後方で様子を見ていた禁断のボスがゆっくりと歩く。
「言っとくけど‥手加減はしないよ?」
手刀に水を纏わせ相手に向ける。
「加減だと?くくくッ‥そう言ってられるのも今のうちにだァ!」
言葉の終わりと共に男が持っていた大剣から電撃が解き放たれる。
レンズ越しで見ていたミルキーは驚愕する
「な、何よ‥あれ?! あれだけの光星エネルギーをどうやって‥?」
「雷鳴よ‥迸れ‥! トニトルス!」
月星石から膨大な光星エネルギーを一点に集め強烈な雷撃を放つ
「まずい!二人ともアタシの近くに来て!強固なる壁よ、我を守れ! ハードシェル!!」
慌てて二人を呼び、急いで防御結界を展開させる。
雷撃が結界に当たりその衝撃で尖塔が大きく揺れる
「くぅぅぅうう!!」
ミルキーは頑張って踏ん張るものの結界にヒビが入り今にも割れそうな状況に陥る。
「ミルキー!大丈夫なのか?!今にも壊れそうだぞ!」
「僕も手伝うよ」
ミルキーの術式に光星エネルギーを送り込み結界を補強する。
バヂヂヂヂヂヂ!と雷鳴が周囲に轟く
何とか相手の攻撃に耐え体勢を整える。
辺りは静寂に包まれる さっきまで大勢いた下っ端達がいなくなっている。
どうやら先程の攻撃に大半は巻き込まれたようだ
六つのあった鉄塔は焼き切れ床も何カ所か穴が焼き空けている。
「ミルキー!大丈夫か?」
息切れしながら答える
「大丈夫な訳ないでしょ‥‥死ぬかと思ったわ‥‥」
禁断のボスも何か様子がおかしい‥
「チッ‥‥さすがに出力を上げ過ぎたか‥」
男の体全体にバチバチと電気が帯びている。
「ちょっと無理し過ぎじゃないかな?」
「ッ!!」
背後からの不意打ちを大剣を盾にとり防ぐ。
相手の焦った様子に薄っすらと笑みを零す。
「おや?もしかして、余裕が無いとか?」
「うるせぇ!」
大剣を大きく振り払いルークスの居る方面へ飛ばす。
飛ばされたアクエリアスは綺麗に着地し
「さて、最後の忠告だよ‥月星石を返してもらおうか?」
「返すだと?そいつは無理な相談だぜ?これほど強力なモンを手にして今更手放せるか!」
言葉と共に男の魔術が炸裂する。
しかし、アクエリアスの魔術によって簡単に防がれる。
「そうかい?じゃあ、行かせてもらうよ!」
水飛沫を上げながら禁断のボスに急接近する。
「ちょっと待ちなさい!さっきの魔術が飛んできたらどうするの!?」
「ハハハッ!大丈夫だよ!さっきの術はしばらく使えないからね!」
ミルキーの制止に耳を傾けず相手に水の影を飛ばし攻撃を仕掛ける。
「邪魔くせぇ!」
大きな大剣を時計の針の様に2回転し影を斬りつける。
「こっちだよ」
またしても背後からの攻撃に受け身をとる。
「同じ手にはかからんぞ?」
ギリギリッと大剣と水に纏った手刀の擦れる音が続く。
「ふ~ん?それはどうかな?」
「!?」
禁断のボスが気付いた頃には遅かった。
「このガキッ!いつの間に!」
アクエリアスの陽動にうまく引っ掛かり、ルークスの存在に気づかず接近を許してしまった。
「くらいな!」
ルークスは思い切って男の顎にアッパーを打ち込む。
「ごふッ!!」
図体の大きい男を殴り飛ばしカランカランと、乾いた音と共に大剣を手放す。
飛ばされた男はピクリとも動かない。どうやら最初に放った魔術が思いの外、体に大きく負担を掛けていたようだ。
「‥‥これか‥」
ルークスは、ゆっくりと歩き出し、大剣に填めていた月星石を取り出す。




