110.砂漠の世界2
港からパーリクまでに続く砂漠の道。
歩き進んでもあるのは数本の木と無限に広がる砂漠。
変わらない景色に飽きてきた頃、ルークスが口を開く。
「けっこう歩いたな……パーリクってとこはまだなのか?」
彼の発言にうんざりした表情で答える。
「アンタねぇ……一分おきにそれ聞くのやめてくんない?」
「思ったより長いからさ…気になるんだよ。今どのくらいかってな。それでどうだ?もうすぐか?」
進んでいることは確かなのだが、風景に変化がないためか、どこまで進んでいるのか分からない。
「半分くらいね」
まだ半分と聞いてやる気の無い声がする。
「はんぶん…あついよ〜」
「はいはい、暑いわね」
「外は暑いのにミルキーがいつもより冷たい」
「…………」
「むしされた…」
「アンタの相手をしてる体力が無いのよ」
「ひどい……」
傍から聞いていたルークスがあることに気づく。
「なんか……さっきと比べると元気になってないか?」
少し前まではシナシナになっていた彼女だが、今はハキハキと元気を取り戻していた。
「ん?そうかな?」
「確かに…そうね。港から出たばっかりの時はしんどそうにしてたのに……まさか、もう暑さに慣れたというの?」
ミルキーに褒められたと勘違いをしてニヤける。
「えへへ〜」
「褒めてないからね」
歩いているうちに前方に人影が見えた。
「おん?あそこに人がいるぞ」
「本当ね。ということはパーリクも近いのかしら?」
「だといいんだが…とりあえず話しかけるか。ステラ、テーベのことを見ていてくれよ」
サングレーザーと違って、ここは魔物を脅威的存在と見る場所だ。
魔物使いならともかく、そうでない彼らは迂闊にテーベのことを話すわけにはいかない。
「うん!まかせて!」
三人は男に近付いて話しかけようとしたが、こちらの気配に気付いたのか、男は振り返り喋りかけてきた。
「おや?珍しいな。砂漠で人と出会うなんて…」
男の格好を見た瞬間ルークスはこの辺りの人間ではないことに気づく。
長袖に長ズボン、全体的に緑色と白色が目立つ服装をしていた。
1つ言えることは明らかに砂漠に適した格好ではないことだ。
ルークス達にも言えることだが……
「お前もパーリクに行く身なのか?」
すると、男はこう答える。
「いいや、俺はただの冒険者さ」
冒険者と答えた男は物珍しそうにミルキーとテーベを見る。
「へー、エルフと一緒なのか…これもまた珍しい」
人間と共に行動しているエルフは数少ない。そのため初対面と会うたびにこういったことはよく聞かれる。
「そっちは……魔物…なのか?」
テーベを見て怪訝そうな表情になる。
ステラは両手をバタつかせて必死に説明しようとする。
「ち、違うよ!テーベちゃんは……その……えと…」
どう言えば良いのかその先の言葉が出てこない。
「ぬいぐるみだ」
横からルークスが言うと、ステラもそれにのって肯定する。
「そう!それ!」
勢いが凄かったのか男は戸惑いを見せる。
「お、おう…ぬいぐるみか…。最近のぬいぐるみはすげえな…まるで本物のスライムみたいだ…」
テーベが魔物だと悟られないように話題を変える。
「それよりもお前は冒険者って言ってたよな?冒険者ってなんだ?」
「冒険者のことを知らないのか?けっこう有名だとおもったんだがな…」
咳払いを挟みつつ口を開く。
「冒険者ってのは文字通り、各地を冒険する人達のことだ。人助けから魔物の討伐まで色々なことをしている」
興味があるのかステラは目を輝かせる。
「おお〜なんかすごそう!」
「だろー?特に誰かを助けた後はスッキリするもんだ。っとまぁ〜こんな感じかな」
彼女とは違いルークスは普通の反応を示す。
「ふーん、そうなのか」
「反応が薄いな…興味がないのか?」
「無いわけじゃないが…今はやることがあるからな」
ステラの情報に加えて、ある人物に黒い箱を見てもらうためにも来ている。
「そういや、あんたらはどうしてここに来たんだ?パーリクに観光か?」
「人探しだ」
「人探し?砂漠で?」
不思議に感じた男はその人物について聞く。
「その探してる奴の名前は教えてくれるか?俺なら何か知ってるかもしれないしな」
「ポーシャって名前だが…年老いた武道家……だけど、知ってるか?」
「ポーシャ?ポーシャね……どこかで聞いたことのあるような名前だが…悪い、今はなんか思い出せそうもない」
「そうか、ありがとな。そう簡単に上手くいくとは思ってもねえし」
「俺の方からもソイツの情報を集めてやるよ」
「いいのか?」
「言っただろ、冒険者は何でもするってな。ミラならいらねえぜ、俺もパーリクに帰るところだったしな。お前達もパーリクに行く途中なんだろ?ついでに案内してやるよ」
ルークス達にとってはありがたいことだ。
少なくとも土地勘のある人が案内をしてくれるだけで安心感が違う。
「お言葉に甘えて頼もうかな」
しかし、ミルキーは黙ったまま冒険者と名乗る男を警戒するように見つめていた。
「…………」




