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星の願い  作者: ミケ
第四章 砂漠に眠る秘宝と星の記憶
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109.砂漠の世界

「あちぃ~」

そう言いながら手をパタパタと動かして風を送る。

ここは砂漠、その程度の風で焼け付く日差しとカラカラの乾燥の前では無意味だった。

「………」


「あちゅい〜」

港にいた時に元気だったステラも今はシナシナに枯れた草のように元気がなくなっていた。

ぬいぐるみのフリをしていたテーベもどこかしか動きが鈍く見えていた。

水分の塊であるスライムにとっては砂漠の環境は過酷である。


なるべく早く町に行こうとするが、暑さのあまり足取りが重く上手いように進まなかった。

「さっきからうるさいわね。少しは黙って歩けないわけ!?」

二人の発言に苛立ったように声を上げる。

だが、ルークスは気だるそうに答えた。

「暑いもんは暑いんだから仕方ねえだろ?なあ、ステラ」


そう聞かれてステラも便乗するように言う。

「そーだよ…テーベちゃんも干からびそうだよ~」

「暑い暑い言わないでちょうだい。アタシだって我慢してるんだから」

港から出て僅か数十分…さっそく3人は砂漠の過酷な環境にやられていた。

だが、これには理由があった。


「はぁ……。プルートの奴を撒いたのはいいけど、まさかあの時に寒冷星導光コンゲラーエーテルを落としちまうとは思わなかったぜ」

寒冷星導光コンゲラーエーテルは周囲を冷やす事に特化した星導光エーテルだ。

よく似ている物として冷蔵星導光コールドエーテルが存在するが、あれは食材の鮮度を保つ為に作られたもの。


寒冷星導光コンゲラーエーテルの場合は砂漠のように厳しい日照りや乾燥に対策を施した星導光エーテルなのである。

砂漠を渡り歩くなら必須とも言われている。

しかし、その大事なモノを港付近の何処かに落としてしまったのだ。

せっかく彼から逃げることに成功したのに、こうもなっては意味がない。


ステラが確認をとるように聞いてきた。

「それって確か周囲を冷やす星導光エーテルだよね?一個しか無かったの?」

「一個だけだ。一個さえあれば十分らしいからな。落とすなんて考えはしなかったが……」

「フリージアちゃんに悪いことしちゃった……せっかく用意までしてくれたのに…」

ステラの表情が暗くなる。


それもそのはずで、寒冷星導光コンゲラーエーテルを用意してくれたのはフリージアだったからだ。

昔は星導光エーテルが大量生産されていたため珍しくもない物だったが、十年前に終結した魔人戦争以降から星導光エーテルの作り方自体が雲のように消えてしまったのである。


その影響で現在の星導光エーテルは貴重品扱いとなっている。

今のところ数があるため表面上大きな問題にはなってないが、日が経つに連れてその数は減少に辿っている。


「いつまでも無くしたものをグチグチ言っても始まらないわ……とりあえずパーリクまで行って、そこで買いましょ」

「買うって…売ってるのか?」

星導光エーテルの数自体が少なくなってきてるから多少は値が張るけど、アタシ達にもそれなりにミラを持ってるから問題はないわ」


アクエリアスとフリージアの件でミラはたんまりと貰っていた。

しばらくはこのミラでやりくりは出来る。

「そうか。なら急いで行くか」

乾燥した地を歩きパーリクへ目指す。



     ★



あれから数分が経った。港から結構な距離を歩いてきたが、まだ町に着きそうにない。

「ステラ、大丈夫か?」

ステラの格好は出会った当初から変わらない薄着のワンピースだ。

だが、砂漠の日照りを前にしては大して意味はない。


「ふにゅー……」

「……なるべく日陰になってる所に通りながら行きましょ。幸いにもこの辺りはまだ木がそれなりにあるしね」

あたりを見渡すと何本か大きく曲がった木が不規則だが生えていた。

「すごいね……あついのに……枯れないなんて…」


木の方に視線を移していたため、ルークス達が立ち止まっていることに遅れて気づく。

「どうしたの?ふたりとも?」

「魔物だ」

ルークスは鞘から剣を引き抜き構える。


「魔物さん?」

ひょいと二人の間から顔をのぞかせる。

「グルルルル……」

そこには四足歩行の魔物が鋭い牙を見せつけて唸っていた。

「ステラ、アンタは下がってなさい。アタシとルークスでやるわ」


「………気をつけてね。あの魔物さん。凄く怒ってる感じがする…」

珍しく後ろに下がる。

ステラは基本、話の通じる魔物に対しては言葉で解決を促すが、それがなかった場合は会話の出来ない状態にある。


「ガウッ!」

ルークス達の隙を狙って飛び込んできた。

反射的に攻撃を避けて剣の柄の部分に魔物の胴体に殴り込む。

「おらっ!」

ドガッ!

鈍い音とともに宙に浮き上がる。


「吹っ飛びなさい!」

ミルキーが術を発動させて、身動きの出来ない魔物に向けて水塊を当てる。

「キャウン!?」

派手な水飛沫が上がり吹き飛ばす。


大してダメージになっていなかったのか、すぐに起き上がる。

「ガルルルル…」

「ちっ、まだやる気か?」

互いが様子を見る。

「……………」

魔物は諦めたのか背を向けて去って行った。


「ふう……普通の魔物と戦うのいつぶりだ?」

ステラと出会ってからというものの黒い魔物とばかり戦ってきた。

少しばかり懐かしくも感じていた。

隣でステラが呟く。

「さっきの魔物さん。ちょっと様子がおかしかった」


「そうか?俺には普通に見えたんだが」

「どう言えばいいのかな…とにかく変だったよ。苦しいとかつらいとか、そういうことじゃなくてもっと別のなにか…?」

「逃げた魔物の事なんて今はどうでもいいわよ。早くパーリクに行きましょ。魔物に襲われる前にこっちが先に干からびそうよ」

「それもそうだな。ステラ行くぞ」

不完全燃焼気味に小さく空返事をする。

「………うん」




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