11.オリオン平地
「ここがオリオン平地か?」
ルークスの目の前に広がる草木が芽生える大地に驚きを隠せない様子。
見通しがよく特になにもないが魔物の姿がチラッと見えるぐらいだろう。
盗賊団や魔物と戦うため30万ミラはミルキーの家に置いていった。
「何体か魔物がいるな…いちいち相手にしてたら日が暮れるな」
「大丈夫だよルークス、ここにいる魔物さん達からは敵意を感じないから」
「そういえばステラは魔物の言葉が分かるよね?だったら出来るだけ無視できるやつは無視して先に進んだ方がいいわね そっちのほうが安全だし」
ミルキーの言葉に一同は賛成する。
道なりに歩いていると草むらから三匹の小柄なスライムが飛び出してきた。
このスライムを見てアクエリアスは何か違和感を感じとる。
「おや?ずいぶんと元気の無いスライムだね?」
スライムに近づくと威嚇行動なのかピョンピョンと跳ねる。
「大丈夫だよ 私達は貴方達の敵じゃないから」
そう言うとステラは近づき詠唱を始める。
「星の輝きよ汝を癒やせ」
治癒されたのかさっきまで動きの悪かったスライムはステラの周りを元気よく跳ねる。
(これが彼女の力……か)
「こ、これが…治癒術…」
見た目はさほど変わってはいないが一応治っているらしい。
いつの間にかレンズを頭に装着し右目にくるように治癒術を見ていたミルキーが話す。
「今のが治癒術ね…魔術星導光を無しに術を発動するなんて……」
(ルークスと同じ光星エネルギーを持っているっていうの?)
頭を悩ませるミルキーを側にステラはスライムに会話を試みる。
「スライムちゃん? さっき何があったの?」
ピチピチと音を出しながら跳ねる。
スライムとステラが会話?をしている間にルークスは疑問を投げつける。
「なぁミルキー 前から思ってたんだが、そのレンズって何なんだ? 実験の時もそれで見てたよな?」
すると小さな胸を張り自慢気に答える。
「ああこれね〜。これはね光星エネルギー視覚化器よ! アタシが作ったの 凄いでしょ!」
「………なんか、そのまんまだな…」
「へえ~?それってどういうやつなんだい?」
アクエリアスが興味深そうに食いつく。
「まぁ名前の通りなんだけど…光星エネルギーって見えないでしょ? だから見えるようにしたの、このレンズでね」
「具体的にどこまで見えるんだい?」
「そうね…術を使う時とか星導光を使ってる時かしら」
「ふ〜ん?じゃあ生物の内部までは見えないかな?」
「さすがに内部までは見れないわ…なんでそこまで聞くの? アンタも調べものがあったりとか?」
「ああ別に無いよ。ただ確認したかっただけだよ、ははは…」
雑談をしてる内にステラがこちらに戻ってくる。
どうやらスライムとの会話?が終わったようだ。
「ス、ステラ…ちゃん…スライムは…なんて言ってたの?」
「ん〜なんかね? 黒くてよくわからない魔物に襲われたって言ってたの」
この内容にアクエリアスが尋ねる。
いつも飄々としている彼の表情がガラリと変わり真剣な眼差しで見る。
「黒い魔物…ソイツに妙なオーラ…みたいのを纏ってなかったかい?」
「え?そこまでは知らないよ?あの子達も逃げることに精一杯だったから…」
「そうか……すまないちょっと寄り道をさせてほしい」
この流れから大体察しがつく
「黒い魔物だな?」
「ああ…コイツを放っといたら後々面倒なことになる」
「ステラ?その魔物はどこにいるのかわかる?」
「あの子達の話から このオリオン平地の真ん中あたりにいるってきいたよ」
「ま、真ん中…どのみち通る道だし…リゲル尖塔に行くついでに…その魔物…退治しよう」
そうと決まれば、さっそくその場所を目指して足を歩き始める。
★
しばらく歩いていると黒い魔物らしき獣がすぐに見つかった。
元々見通しの良く辺りにいる魔物は草木の色に馴染んでいるが、この黒い魔物は明らかに浮いた存在だったためすぐに見つけることができた。
「あれか?」
ルークスはその魔物に指をさし確認をする
「間違いない…あの魔物だよ」
「なんか見た目が凄く禍々しいよね…」
全身真っ黒な犬のような見た目をしており、背中からは尖った毛が大量にはえている。
ステラはルークスの後ろにしがみつく
「ステラ? どうした?」
「あの魔物……とてもイヤな感じがする……」
魔物に対して恐怖心がないぐらい接してきた彼女だが、あの黒い魔物に対しては怯えた様子でいる。
「ルディ その子を頼んだよ あの魔物は僕達3人で対処する」
「う、うん……ケガ…しないでね ステラちゃん…こっちにきて」
ルディはステラを連れて魔物から距離をとる。
「全部で3匹ね…アタシの魔術でまとめて吹き飛ばしてやるわ!」
黒い魔物は気付きこちらに向かって走り出す。
「荒れ果てる水流よ…アクアブラスト!」
ミルキーのまわりに4つの水塊を発生させ、そのまま正面からくる黒い影魔物に向けて飛ばす。
黒い魔物に命中した瞬間、水塊は弾け飛び水飛沫を上げながら一瞬だけ暴風が吹き黒い魔物を巻き上げ地面へ叩きつける。
「ギァオオォォ!!」
黒い魔物達は体勢を立て直そうとするが、このスキを見逃さず二人は斬りかかる。
「オラァ!」
「水影・斬!」
ルークスは自身から最も近い魔物を斬りつけ、アクエリアスは水によってできた影を飛ばし2匹の黒い魔物を一蹴する。
「ギャアアアァァァ……!!」
「やったか!?」
倒れた黒い魔物に警戒しながら近づき観察をする。
「…大丈夫 もう動かないよ」
ミルキーも近づき魔物の背中を触ろうとするとルディが焦った様に腕を掴み引き離す
「だめ!触っちゃ!」
いつものおどおどとした喋りから一転する
「え?な、なに…?」
「ミルキーが研究体質なのは前から知ってるけど、だからといって不用意に触っちゃだめ!」
「ご、ごめん…」
ミルキーも いつもよりか しおらしくなっている。
「なぁ?ちょっと悪いがいいか?」
ルークスの問い掛けにハッとしてこちらに振り向く。
「な…なんですか?」
「そいつに毒があんのか?すげぇ怒ってたし…」
「べ、別に怒ってなんか…その…」
いつも通りに戻った彼女の代わりにアクエリアスが答える
「あるよ…毒と言っても今なら治療薬があるし、そこまで問題になることじゃないけどね。これよりも大きいサイズの場合、話は別だけど」
今回は小型の魔物だったが、これよりもデカイやつがいる事を考えるとゾッとする。
「もう大丈夫?」
ヒョイとルディの後ろから様子を伺う。
「大丈夫よ」
安全を確保しルークスの側に駆け寄る。
「さて、寄り道もした事だし そろそろ行こうか」
アクエリアスの言葉と共に再び歩き始めるルークス一行
リゲル尖塔へ目指しオリオン平地を後にする。




