103.価値観
その後、言霊族の少女を連れてコーディリアへと戻る。
適当な宿に泊まり少女の様子を見ていた。
安物の宿なのか壁は少しだけボロく、部屋にあるのはベッドが2つと椅子と机が1つずつだけ
少女はベッドの上に寝かされていた。
その目は変わらず死んだ目つきで壁を見ていた。
「…………」
少女の様子を見ていてコルトの言葉を思い返していた。
「確かに…コイツを買う気にはならねえか…」
部屋中に通信星導光の甲高い音が鳴っていた。
「…………」
その音は止まず鳴りっぱなしだ。
「うっぜえーなー…」
連絡相手が分かる故にダルい体を動かして通信星導光へ手を伸ばす。
カチっとボタンを押したような音と同時に星導光からノイズ混じりに男の声がしてきた。
「やっとつながったか…どれだけ待たせんだよ」
「用が無いなら切るぞ」
「人の話を最後まで聞けよ…」
呆れたように言うと続けて話す。
「お前、言霊族はどうしたんだ?まさか…もう売ったなんて言わねえよな?」
どうやらあの少女について用があるらしい。
「売りたくても売れねえ状況だ」
厳密には売れると言ったほうがいい。
だがそれはフォンセにとっては小遣いにもならないもの。
そんなものは彼にとって売れるとは言えない。
「なら良かった。頭の中がミラしか無いお前に助言してやろうと思ってな」
少し小馬鹿にしたように冗談混じりに言う。
「切るぞ」
「待てって!」
少し間が空くと再び口を開く。
「1つ確認なんだが…少女…だったか?ソイツは今どういう状態だ?」
そう言われるとフォンセはジロッと少女の方に視線を向ける。
ベッドに放り込まれた状態からピクリとも動いていない。
「汚え服に汚え面をしてる」
「………具体的に言ってくれ」
「ボロボロの服に星導光惑星(連中)にやられたのか知らねえが、血痕がポツポツと……あとは、目が死んでるってことか」
彼女に付いている血は恐らく彼女自身のものではないだろう。
彼女の体に外傷と思われる傷がないからだ。
「なるほどね…では俺からの助言だ。有り難く聞けよ?」
偉そうにすると小言のようにいい始める。
「まずはソイツの体をキレイに洗うことから始めな。見た目が汚いなら話にならないからな」
奴隷にしろコレクターにしろ、ある程度キレイにするだけで価値はあがる。
「次が重要だが…ソイツの精神状態を回復させる事だ」
「精神状態?そんなもんいるのか?」
そんなの要らねえだろ……少しでもマシな値段で売れればそれでいい
「いるんだよ。コレクターは美観や中身を重視する。見た目は良くても中身が腐ってたら価値は大幅に下がる」
コレクターは見た目だけでは無く中身もよく見ているらしい。
具体的には内臓や目、脳まで範囲が広い。
特に生き人形にする場合は全身の清潔さが重要らしい。
「どのみち死ぬに越したことはないが…死体にしろ人形にしろ中身の腐り具合いで変わってくるらしい」
「…………」
フォンセには一ミリも理解出来なかったが、コレクターの世界はそういうものだと頭の隅に置いておく
「まあ、とにかく高く売りたいなら「普通」に戻すことだ。お前には出来ないと思うけどな」
「俺を何だと思ってるんだ。やる時はやる男なんだよ」
「嘘つけ。この間エルフを高く売ろうとした時もすぐに飽きてミラにしてたじゃねえか。向かねえよ、お前にはな」
「ペラペラと言いやがって……切るぞ」
「ああ、楽しみに待ってるよ」
通信星導光から音が切れる。
「………舐めやがって…」
しかし、フォンセの顔は楽しそうに笑みを浮かべていた。




