96.十二星宮とステラ
ベリスとメルによる襲撃後、各々傷を癒やしていた。
その襲撃以来、ステラの居る拠点にプルートが数回やってきた。
最初のうちは星導光惑星の話をしていたが日にちが経つにつれて、彼らの話からテーベの話にすり替わっていた。
ルークス達が居ないことをいいことにテーベを狙ってきたので、その度にサダルメリクとフリージアの二人で追い返していた。それ以外特に何事もなく日は経っていきルークスとミルキーの退院を迎えた。
あれから1週間後……
拠点内の広いリビングにレグレスが花瓶の水を入れ替えていた。
「………」
リビングにはソファの上を占領したスピカと掃除をしているサダルメリクの姿があった。
2階から誰かが降りてきたのか足音がしてきた。
頭の上にテーベを乗せたステラだった。
「レグレス。もう大丈夫なの?」
一週間前に治した傷と痛みは、その当日に消えていたが目を覚ましたのはその2日後が経った後だった。
当初は心配をしていたが特に何事も起こらなかったため安心をしていた。
これもステラの治癒術の効果があってのこと。
「ああ、貴様には助けられたな。礼を言う」
レグレスには珍しく優しい表情を見せる。
「お礼なんていいよ。無事ならなんでもいいからね」
「貴様の方はどうだ?今も変わりはないか?」
ステラの治癒術は強力だが、治す傷の程度によっては体力の消耗が激しく変動する。
今回のレグレスの傷は、かなり酷かったためステラの体力もそのぶん消耗してしまった。
「うん!もう大丈夫だよ!ほら!」
自分が元気だという証にブンブンと手を素振りさせる。
そうしていると家に玄関の音がなった。
「あっ」
誰が来たか明白なのか急ぎ足で玄関に向かう。
相手の確認をすることなく扉を開ける。
「おっ、ステラか。体の方は大丈夫なのか?」
そこには1週間ぶりに会ったルークスとミルキーの姿だった。
「うん。元気いっぱいだよ」
満面の笑顔で返す。
テーベもいつも以上に頭の上にぴょんぴょんと飛び跳ねる。
奥からフリージアが出迎えに来てくれた。
「二人とも来てくれたんだね。さ、上がって」
★
リビングにはお洒落なテーブルと椅子、ソファがあり各々が集まって座っていた。
話はルークスから切り出す。
「それで……はなし…というのはどんなのだ?」
「……僕達とステラの事についてだ」
すっかりと傷が癒えたのか、普段通りの爽やかな彼に戻っていた。
「わたしのこと………」
「君達は……星天一族について知ってるかい?」
「星天一族……聞いたこと無いわね」
ミルキーは知らないようだ。
だが、ルークスはその事について少しだが知っていた。
「知ってる。確か光星エネルギーを作り出す能力を持った種族……だったか」
あの森の地下にあるアルカーナ遺跡…そしてソルから聞いたことだ。
知られている事が珍しいのかフリージアは少々驚いた様子だ。
「現在でも知ってる人が居たんだね…」
「君は知っているようだね。そう、星天一族は自身の生命エネルギーを消耗することにより光星エネルギーを作り出すことができる種族だ」
サダルメリクが横から飲み物を出してくれた。
アクエリアスはそのコップを手に取り、ちょっとだけ飲んで続けて話す。
「そして、僕達は…その星天一族の生き残りさ」
星天一族…その話が本当なら、今までの事にある程度は納得できる。
星天一族が持つ能力、それは光星エネルギーを生み出し多種多様な術を扱えること。
今までよく見ていなかったがアクエリアスもフリージアも魔術星導光と武術星導光を身に着けていなかった。
「えっ、じゃあ、ここにいるみんなはそうなの?」
僕達ということはと思い、アレル、サダルメリク、レグレス、スピカの四人をキョロキョロと見渡す。
「そだよ~☆」
ソファに抱きつく姿勢に軽いノリで答える。
「ステラちゃん。貴方も私達と同じ星天一族なの」
フリージアから出てきた言葉に驚く。
「わ、わたしが…星天一族…?」
動揺しているのかフリージアから視線を外さない。
「ステラが……」
この事実にルークスは意外と驚かなかった。
それにはあの術が関係していると思ったからだ。
「治癒術が…そうなのか?」
治癒術…昔から珍しいと言い伝えられている術だ。
星導光で様々なモノを創ってきた。魔術や武術…日常から使える便利なモノは出来ていた
だが、治癒術だけは意図的に創り上げることができなかった。
何度か偶発的に出来た例は少なからずともあるが、あまりにも数が少なすぎて何もわかってはいない。
「ああ、ただ同じ一族でも能力に関しては違ってくるから、一概にとは言えないけどね」
星導光でも難しいように星天一族にも珍しいという。
「ステラとお前達のことは分かった」
記憶喪失となった彼女の正体、そして彼らのこと…それは判明したが、それよりもずっと前から気がかりなことがあった。
「お前達の目的はなんだ?」
リゲル尖塔で禁断盗賊団から奪い返した電気の帯びた不思議な石。
あれは十二星宮にとっては、どのような目的で使用するのか気になっていた。
「………」
しばらくの間に沈黙があったが、次第にアクエリアスの口元が動いてきた。
「星の再生さ」
「星の…再生…?」
「君達には分からないと思うけど、今の星は…限界に近い状態なんだ」
限界…?急に何を行っているんだと彼は正直に思った。
「滅びるのか?」
少し呆れた態度を取るルークスの質問にアクエリアスは高らかに笑う。
「ははは!まさか」
冗談なのか真剣なのか分からずに居ると、彼が続けて話し出す。
「近いとは言ったけど、君達の寿命から見てみれば、まだまだ先の話だよ」
「………」
人間の寿命は約70歳から80歳までと言われている。
それに比べてエルフや獣人族は個人差があるが約300歳前後となっている。
人間の倍以上に生きる彼ら彼女らと比べると人間の寿命は短いのだ。
このことから人間は短命種と呼ばれている。
逆にエルフや獣人族のように長生きする種族をまとめて長命種と呼ばれている。
アクエリアスの言う「君達」は恐らくだがエルフであるミルキーも含まれているため、彼の言う星の限界というものは、まだまだ先の話なんだろう。
「信じられないって顔だね?」
ルークスだけではなくミルキーもイマイチ信用出来てない様子だった。
「当たり前よ。急にそんな話されても…戸惑うだけよ」
「いいさ、それで」
ルークス達がどう捉えるか、そこまでは重視していないようだ。
「君達が信用しようがしないが、どちらでもいいさ」
ここからが重要と言いたいのか、ルークス達の視線に合わせる。
「だが、これだけは覚えておいてほしい」
「な、なんだよ…」
声のトーンが低くなり思わず身構える。
「…………」
「………」
その場にいた全員が静かになる。
すると、アクエリアスが視線を外して口を開く。
「いや……やっぱりいい。さっきのは忘れてくれ」
「何なんだそりゃ?ここまできたんだ…言ってくれよ」
「そうだね…次に君達と出会った時に伝えるよ」
「そうかよ……まあ、お前がそう言うならいいけどよ…」
何故急に伝えることを止めたのか、納得できることでは無かった。
だが、彼の雰囲気にこれ以上の追求は考えなかった。
「なあ、お前達とステラは同じ一族なんだよな」
年のためにもう一度確認をする。
アクエリアス達と同じ一族なら彼女の帰る場所も知ってると踏んだからだ。
「ってことはステラの帰る場所も知ってんのか?」
「知ってるよ」
あっさりとフリージアが答えたが、その後、言いにくそうにする。
「でも…」
その態度にミルキーが喋る。
「問題があるの?」
彼女の代わりにアクエリアスが答えだす。
「………これは君達が直接連れて行くべきだ」
ステラは記憶喪失だ。そのため彼女の帰る場所を探すには様々な人々に聞きに回らなければならない。
幸いにもアクエリアス達は彼女の事を知っている。
無論、帰る場所も
知っているにも関わらず、ルークス達が送るべきだと言うのだ。
何故そうなるのか意味が分からなかった。
「あ?なんでだよ」
「色々あるんだよ」
何かを誤魔化すように適当にあしらって、その場から立ち上がり玄関の方へ歩く。
「とにかく、彼女のことは頼んだよ」
「ちょ、ちょっと!まだ話が終わってないんだけど!」
ミルキーがアクエリアスのいる方向に体を向けて、話がまだ終わってないことを言う。
「僕達が話せることはここまでだ。メリー」
「は、はい!」
サダルメリクは慌ただしい様子でアクエリアスの傍まで駆け寄っていく。
「アクエリアス!まだ動かないほうが…!」
フリージアが彼の心配をする。
「君もよく知ってるだろう。時間がないことを……ね」
「………」
「次に君達と出会った時に……今のような関係でいられることを祈ってるよ!」
扉を開けて勢いよく走っていく。
「えーと…えーと…では皆さん!また会いましょうね!」
こうなることを知らなかったのか、サダルメリクも彼を追いかけるように出て行った。
「………」
嵐が去った後のように静かになる。
「どっか行っちゃった…」
呆然とするステラの隣にスピカが寄ってきた。
「全く相変わらずですね☆」
「結局のところ、分かったことは…」
十二星宮とその仲間…そしてステラは人間ではなく星天一族だったこと。
十二星宮の目的が星の再生だということ。
ただ、これだけじゃ情報が不足している。
「ねえ、アンタはなにか知ってるの?」
「ごめん。知っててもコレだけは言えないの」
フリージアの様子からして安易に言えないことなのだろう。
「だってさ」
「別にいいさ。アイツがああ言ってんだ…なにか考えがあるんだろ?」
彼の言葉に小さく頷く。
「………うん」
「さてと」
ルークスは徐ろに立ち上がる。
「………」
不安なのか顔を俯いてた。
「どうしたステラ?」
「わたし帰れるのかな…」
「大丈夫。絶対に帰すさ。約束したろ?」
「………うん」
ルークスの言葉を信じて少しだけ元気を取り戻す。
ようやく花の手入れが終わったのか、レグレスが話しかける。
「それで貴様らはどうするつもりだ?」
「そうだな…次はファールバウティってとこかな。ポーシャって奴に渡さねえといけねぇ物があるし、もしかしたら、そこにステラの情報もあるかもしれねぇしな」
「行き当たりばったりね…」
手を額に当てて目をつむる。
「ミルキーも来てくれるんだろ?」
「…………」
ルークスの期待とは裏腹にミルキーは目をジトッとした目で見ていた。
面倒くさいと言いたげだ。
「えっ!?きてくれないの?」
ステラが悲しい表情をしたせいか、少し早口になる。
「行くわよ。ただ、ファールバウティに行くならそれなりに下準備をしてからにしてよね」
「確か…砂漠だったか。念入りに準備はしねえとな」
砂の国と呼ばれている場所だ。
ただし、ルークスの地理の疎さは一流なので、どういった所かは想像出来ずに居た。
「じゃあ、ちょっとの間はここにいるの?」
何故か期待を込めた顔でこちらを見ていた。
特に考えずにルークスが答える。
「みんなが良いって言うなら…」
チラッとフリージア達を見る。
すると彼女達は笑顔で歓迎の意思を見せてくれた。
「追い出すことなんてしないよ。しっかり準備して行くためにも、ゆっくりしていってね」




