10.ある日のこと
王都コーディリアに来てから一週間ほどたったある日の昼下がりに、ミルキーの助手として彼女の知り合いの手伝いに学園区まで足を運ぶルークス達、学園内には様々な目的を持った学生らが賑わっていた。
階段を上り大きな学生寮がある‥‥いやこれは寮と言うより一軒家に近い。
「これが学生寮‥なのか?」
ルークスは驚きを隠せず学生寮を見上げながら呟く。
「そうよ?何でそんなに驚いてるの?」
彼の反応にミルキーは不思議そうな表情をする。
「いや‥まぁなんかこう‥‥俺の住んでたフェーべ村がしょぼく見える‥うん」
「フェーベ村?そんなのあったっけ?あ、着いたわよ」
「さらっと、ひでぇ事言うな‥」
何だかんだ言っているうちに知り合いが居る所まで来ていた。ミルキーは玄関用の音響星導光を鳴らし待つ。
すると扉が開き中から一人の男が顔を出す。
その男を見た瞬間、ルークスは二人を庇う様に身構える。
「お前は‥ッ!」
軍服姿をしたこの男は数日前にナイアドでキャンサーと呼ばれる者と戦い、その後に仲裁するかのように突如現れた青髪の男 名前は確か‥‥
「おや? 君は‥」
相手も予想外なのかキョトンとした顔でこちらを見る。
「お前は確か‥アクエリアス‥だったか‥‥なんでここに居る!?」
「ル、ルークス?どうしたの?」
いきなりの険悪な雰囲気に戸惑いを隠せないステラにミルキーが代わりに尋ねる。
「アンタいきなり何?コイツと知り合いなの?」
「別に‥王都に来る前にちょっとな‥お前こそ、どこで知り合ったんだ?」
「アタシも知らないわよ こんな奴」
「ははは、初対面の人に向かってこんな奴か〜」
会話に割り込み飄々とした声で話すアクエリアスに警戒をする。
いつでも反撃が出来るよう構えながら尋ねる。
「で?どうしてここに居る?」
「まぁまぁ、落ち着いてくれ 僕は別に怪しい事をしようとここに居るわけでは無いんだ 信じてくれ」
手を合わせお願いのポーズをとる こんな事されても怪しいものは怪しい‥‥
「ねぇねぇルークス? とりあえずこの人の話を聞いてみようよ この人と何があったのか私には分かんないけど‥‥だからっといって怪しいって決めつけるの‥ダメだよ?」
ステラの説得に応じアクエリアスに釘を刺す様に言う。
「‥‥‥‥仕方ねぇか‥だけど何か妙なことをしたら‥‥」
「大丈夫だよ、ホント何もしないからさ」
やり取りが終わったことを確かめ、ミルキーはアクエリアスに質問をする。
「アンタ、ルディって子知らない?この寮に住んでるはずだけど?」
「ん?まさかとは思うけど君、ミルキー・ウェイっていう天才魔術師さん?」
「は?なんでアタシの名前知ってんの?というか質問してんのこっちだけど?」
「ははは、焦らない焦らない‥そう 君の言う通り ここにルディがいる。さぁ、こんな所で立ち話をするのもアレだし中に入ってよ、彼女も君を待ってる」
アクエリアスに案内されるルークス一行‥‥そこに彼達を待っていたのは‥‥
★
寮とは思えない程、広々とした部屋に何やら怪しい器具が並んでいる。部屋全体が暗いのか昼過ぎにも関わらず薄暗く照明星導光に似た物が仄かな光を強調している。
「ルディ?君の客人がいまきたよ 暗いしカーテン開けるよ?」
「あ‥もうきたの?」
弱々しい声をだす方向からひとりの少女がこちらに寄ってくる。
紫髪の足元まで伸びたツインテールに白黒の学者服を着ており、左手に本を持っている。
緊張しているのか、おどおどとした様子で話し掛けにくる。
「あ、あの‥ミルキー?‥こ、この人達は‥?」
「ああごめん いい忘れてたわ コイツはアタシの助手よ」
「ルークス・ソーリスだ」
「私はステラ・バイナリー‥あなたは?」
「わ、私はフーバル・ディア‥です‥‥ルディって‥‥呼んでくれると‥‥助かります‥」
この流れに察したのか青髪も自己紹介を始める。
「この場を借りて僕も自己紹介をしようか 僕はアクエリアス あるものを探しに王都にきている者さ」
「あるもの‥ねぇ‥」
相変わらず怪訝そうな表情で様子を見る
「これ‥どうぞ‥」
ルディは冷蔵庫から全員分のお茶を提供する。
「ありがとね ところでルディ?今回の依頼は何かしら?」
「ああ、それに関しては僕から話そう‥今回の依頼をお願いするのは彼女ではなく僕だからね」
「あんたの手伝いってなら、俺は‥帰るぞ」
それを聞き帰ろうとするルークスに一言。
「30万ミラ」
アクエリアスの懐から変わった袋を取り出す。
「は?」
「もし僕の依頼を引き受けてくれるのなら報酬の30万ミラを前払いしよう‥これでどうかな?」
「30万‥‥」
(こんだけミラがあったら照明星導光なんてへじゃねぇ‥)
「それいいわね〜 わかったわ その依頼、私達が引き受けるわ」
大量のミラに釣られ、あっさりと依頼を承諾するミルキーにルークスが止めに入る。
「おいおいちょっと待てよ いくらミラが貰えようとどんな依頼かまだ分かんねーのに勝手に引き受けてんじゃねーよ」
「うっさいわね! そもそもアンタはアタシの助手でしょ!?いちいち口応えしないの!」
嵐が吹き荒れる前に二人が制止に入る。
「‥け、喧嘩はダメ‥だよ?」
「二人とも!喧嘩は めっ!だよ!」
注意を促され黙り込む。そんな中アクエリアスは確認を込めて声をだす。
「大丈夫だよ 少し危険のある依頼だけど僕も同行するし、出来るだけ君達の安全を優先して行動するからさ‥‥さて、どうする?僕の依頼を引き受けてくれるかな?」
「‥‥仕方ねぇか‥まぁどのみち俺には選択肢がねぇし‥‥なにをやるんだ?」
渋々と喋り内容を確かめる
「君達は【禁断盗賊団】というのを知ってるかな?」
「ふぉびどんとうぞくだん?」
「あーヒマリアがボヤいてた連中ね〜 たしか変な物を盗んで実験してる奴らだったかしら?」
「そうそう で、ソイツ等に大事な物が盗られてね ソレを取り返す協力をしてほしい」
「協力はするがそいつらって盗賊団だよな?どこにいるのか知ってんのか?」
「そ、それに関しては‥‥調べ尽くしてるから‥何処にあるのか‥知ってるの」
「さすがルディね、仕事が早いわ どこにあるの?」
「王都コーディリアの‥東の少し離れた方向に‥オリオン平地の奥‥‥リゲル尖塔‥‥そこの遺跡を拠点に‥活動してるの」
この王都コーディリアの東側にオリオン平地といわれる草木が茂り自然豊かな場所、かなり広く目的も無く適当に歩いていると酷い目に会うと言われている。
その広い平地の奥にリゲル尖塔がある
しかしその尖塔周辺に目ぽしいものがほとんど無かったため調査はあまりしておらず、今では盗賊団の住処となっている。
お茶を飲みながらミルキーが口を開く
「リゲル尖塔ね‥星群騎士団に協力してもらった方がいいんじゃないの? さすがにアタシ達じゃあ手に負えないわ」
「いやそれはできない‥盗られた物がちょっと特殊でね‥特に星群騎士団の騎士団長に知らされてはマズイ」
「だけどよ 俺達だけで対処できんのか?」
「だ、大丈夫‥です‥その‥私も一緒に戦うから」
ミルキーは驚いた表情に話す
「え?ルディって戦えるの?」
その質問にアクエリアスが口を挟む
「おや?君は彼女の友達と聞いてたけど、知らなかったのかな? 彼女‥僕から見てもかなり強いよ」
「か、隠してたわけじゃないけど‥‥今まで戦うことが無かったから‥」
人を見た目で判断してはいけないってことね。
「それに別ルートで攻める この人数で突破できるルートをね‥」
「ま、作戦に関してはあんたらに任せるさ 俺はこういうのは苦手だし」
「そうよね〜 アンタ バカそうだしね〜」
ミルキーの皮肉を無視してステラに話しかける。
「ステラはどうする? 俺としてはミルキーの家で留守番してほしいんだが‥」
「どうして留守番なの?一緒に行っちゃだめなの?」
「だめだ、ステラを危険な目にあわせるわけにはいかねぇ」
「いや!みんなと一緒に行きたい!」
「そうは言ってもだな‥」
ステラのわがままに困るルークスにアクエリアスが提案する。
「別にいいんじゃないかな?僕達で君を守りながら進めばいいだけの話だし、それに危険なルートを通るわけじゃないからね」
ガバッっと磁石があるかの様に引っ付く
「あ〜もうわかった、ついてきていいから」
「え?いいの?ウソじゃないよね?」
「嘘じゃないから、でも俺達の言うことは聞くこと これが条件だ」
「わかった! えへへ~ 一緒に冒険たのしみ!」
このことを確認しルークスから離れる。
まるで遠足に出掛ける様なテンションに先が思いやられるルークスだった。




