15.未来への指標
研究室には見慣れないメンツが集められていた。
「私たちを何故!?」
「何々? なんか楽しみ!」
「ケッ、何でこの男と同じ場所に」
「わ、何で私まで……」
あのオリジナル・ジェネシスの能力を持っていたヒビキ、ハヤオカ、ヤマタケ、シミズの4名だ。
イイノの研究室に呼ばれたのは初めてだ。
「皆さん、わざわざ来てもらって有り難う。
今日からあなたたち4人にも実験に加わってもらいたくて呼びました」
「何だって?
今まで実験を手伝った事もなかったのに……」
いつもしかめっ面のヤマタケも目を広げて驚いている。
「イ、イイノ課長!
わ、私……嬉しいです。
初めてイイノ課長を直接お手伝いできる……」
シミズはあまりの嬉しさに泣きそうだ。
「イイノ課長の研究を見られるなんて!
すっごい興味津々!」
いつも以上に高い声を張り上げるハヤオカ。
「それで我々に何の実験をせよと?」
冷静なヒビキは浮かない顔をしている。
実験の内容が今まで知らされていなかったのが不満なのだろう。
「あなたたちを呼んだのは『オリジナル・ジェネシス』の能力の実験の為です」
「何ですと?
あの我々の謎の力の実験ですと?」
「あなたたちは何故自分に特別な力があるか今までわからなかったでしょう?」
「それはそうですが……
別にあってもなくてもよかったのです。
役に立っているわけでもなかったので……」
「私はオリジナル・ジェネシスの能力を人間の本当の幸せの為に使いたい。
その為の研究をしてきました」
「人間の?
確かに少し力は強くなるし、速く飛んだり、走ったり出来ますが……
他の人間の役に立ちますか?」
「今、この星は人間が住めない環境となっています。
ヒューマン・キャッスルの中にいれば普通に暮らせますが、
ここにいてもいずれ人間は滅亡してしまうでしょう」
「滅亡……キャッスル・ブレインがちゃんと管理しているから大丈夫じゃないですか?」
「確かに生活環境や人間の数を管理していますが、
この1000年間で人間が変わってきてしまいました。
管理される事に慣れ、自分で考える事をやめ、
他の人間を想う気持ちもなくなっています。
その影響で人間の数は1000人にまで減少しています。
人工的に人間を誕生させる事も限界に来ているのです。
繰り返し過ぎたため、成功率が著しく悪くなっているのです。
キャッスル・ブレインは遺伝子の進歩による人間の永続的な繁栄を推し進めていますが、
それも限界に来てるのでしょう」
「何ですって?
そんな事、キャッスル・ブレインは発表していないぞ」
4人もリツも初めて聞く内容である。
イイノにその状況は聞いていたが打開策がわからなかった。
「ケッ、俺は人間がどうなってもいいがな」
「人間がいなくなったら面白くなくなる」
「わ、私は人間がいなくなるのは嫌です」
皆思うところがあるようじゃ。
一人説得が難しいヤツがいるが……
「すると我々人間が進むべき道は何なんでしょうか?」
「私もずっと考えている事ですが……
一つは今の科学技術をさらに進歩させて新たな技術で人間を救う道、
もう一つは科学技術を廃して昔の人間の生活に戻る道」
「昔の人間の生活とはどんなものなのでしょうか?
私にはどう言ったものかわかりません」
「このヒューマン・キャッスルの外の世界が昔そうでした。
自然の中、大地を耕し作物を育てながら、
人間同士が信頼し合い、また愛し合いながら、子孫を残して行く。
科学技術の力は必要としない生活です」
「そ、そんな時代があったのですか!」
ヒビキもさすがに冷静な表情ではなくなってきた。
今までの常識ではないのだから。
「しかし、現在普通の人間は外に出られません。
空気も大地も汚染されているのです。
出られるのは『オリジナル・ジェネシス』の遺伝子を持つ者だけ。
過酷な環境に適応できるよう様々な遺伝子が組み合わさっているからです」
「もしや、オリジナル・ジェネシスが開発されたのはこのような状況を想定していたからですか?」
「確かに環境への適応実験でもあったでしょうが、
本来はもっと違う目的だったようです。
1000年前に想定外の事件が起きた為、
オリジナル・ジェネシスたちが後世の人間を守る為にずっと遺伝子を継承してきたのです。
その結果、あなたたちが力を持ってここで生きていると言う事です」
「ではイイノ課長はどちらの道を進むべきと考えているのでしょうか?」
「どちらの道も正解と考えています。
目指すべき道は双方とも共存する道です。
科学技術の結晶であるオリジナル・ジェネシス遺伝子がなれけば、
外の世界に出て復興させる事はできませんし、
逆に外の世界で当たり前である繋がりや愛と言った考え方も人間には必要です。
今の人間にはオリジナル・ジェネシス遺伝子の力が絶対必要です。
この力で現状を打破し、新しい人間の世界を築いて行くべきなのです」
「そうするとキャッスル・ブレインもいずれは必要となくなると?」
「はい。人間の生き方は人間が決めなければいけません。
外の世界が復興するまでは必要でしょう。
純粋な人間はこのヒューマン・キャッスルの中でないと生きられないのですから。
ですが復興後は外に出てキャッスル・ブレインに頼らない生活に戻り、
人間だけで暮らして行くのです。
時間はかかりますが……そうすれば必ず人間も増え、平和で豊かな世界になるでしょう。
その時にはオリジナル・ジェネシスの能力も必要ではなくなっていますね。
それが私の目指す未来……その為に骨身を削って研究しているのです」
イイノの崇高なる目的が明らかになった。
わしにも考えが及ばない遠い未来までも考えていたのだ。
ここ数日のイイノは人が変わったようだった。
きっとオリジナル・ジェネシスの研究の中、
人間の進むべき道を見つけたからであろう。
ここにいるわしとリツを合わせたオリジナル・ジェネシス6名も、
その遠大なる研究目的を聞き、感動しているようだ。
人間の未来を模索しながら長い旅をして来たが……
わしの人生の目的もやっと見えてきた。
ここにやって来たのもイイノに出会ったのも運命だったのだ。
人間の未来の為、オリジナル・ジェネシスは結集し復興への戦いをして行かなければならない。
10名のオリジナル・ジェネシスでこの星を復興し、
人間の為の世界を作り上げるのじゃ。
ヒビキもハヤオカもシミズも感動のあまり泣いている。
ヤマオカは……こいつはいいか。
リツも真剣な眼差しで決意しているようだ。
「私の話、わかった?」
「わかりました!」
「は、はい!」
「いい話ですね」
「……しょうがねぇな」
「じゃあ私の研究に協力してくれるわね?
では、早速これを見てくれる?」
研究室の奥にはイシュライザー・スーツが10着並んでいる。
「これは『イシュライザー・スーツ』と言って、
オリジナル・ジェネシスの能力を制御できる最後の切り札よ。
力を増大させたり、逆に抑えたりできるの。
あなたたち肉体変換能力の経験が少ない者でも熟練者並みの能力が出せます。
これがあればすぐにでも外に出て活動もできる」
「この色が違っているのは何故ですか?」
「色ごとに制御できるオリジナル・ジェネシス遺伝子が決まっているの。
あなたたちには持っている遺伝子のスーツを装着しての起動実験に協力して頂きます。
それでは自分の遺伝子の色のスーツを着て下さい」




