07.襲撃、4対1
連れて来られたのは、広大な土の運動施設『訓練場』。
天井がドームのような作りで衝撃に強くできている。
「わしに何か用かな?」
「へっ! お前が何者か確かめる為にここに連れて来たのよ」
「普通の人間じゃ!
お前さんたちと変わらんよ」
「イイノにうまく取り入りやがって!
俺たちより地位が上なのが気に入らねぇ」
「何? 嫉妬か?
それでわしに八つ当たりって事なのじゃな」
「悪いか!
イイノの研究はキャッスル・ブレイン直々の命令。
だが長年いても俺たちは関わった事がない。
助手になればキャッスル・ブレインからイイノ並みの評価が受けられるって事よ」
「それはお前たちの実力がないからじゃないのか。
よってたかってイジメとは……
世界最高の英知を搭載したヒューマン・キャッスルが聞いて呆れる」
「い、いえ……わ、私は言われて付いてきただけです。
こんな事……するの反対なんです」
シミズはビクビクと怯える。
この先頭にいる男に脅されていると見える。
「あー、私は面白そうだから付いて来ただけでーす。
囲んじゃってごめんね」
ハヤオカは楽しそうに笑っている。
悪気はなさそうだが、あまり考えるタイプじゃなさそうじゃ。
人がイジメられるのがそんなに面白いのか。
「私は科学者として真実を知りたいだけだ。
イジメなどではない。
地位目当てはヤマタケだけだ。
そこを忘れないで欲しいね」
こいつがヒビキか。
口達者で論戦が好きそうだ。
自分に罪が及ばないように人ごとにして、わしを陥れようとしているのか。
「ケッ、俺の味方はいないのかよ。
どうせ、お前らも本性は地位目当てだろ?
こいつを病院送りにして科学技術庁に来られないようにしてやる!」
ヤマタケはこちらに向かって構えた。
どうやら戦いを仕掛けてくるらしい。
「ほう。科学者なのに腕ずくとは……
ある意味、正々堂々で評価に値するのう」
「なぁに、上から目線なんだよ!
俺の強さを見てから言えよ!
……くらえ!」
左腕を高く上げた。
「ギガント・アーム!」
腕が巨大化して行く!
「こ、これは……」
「だぁぁっ!」
ビューンッ!
頭上から巨大な腕がトンカチのごとく落ちてくる。
ドカァッ!
寸前でかわすと拳が地面を抉り、大きな穴が開いた。
「チッ、おっさんのわりに動きが速いな。
これなら、どうだ!」
「おい、キミ! その能力は『肉体変換能力』かね?」
「うるさい!
ジャイアント・ハンマー!」
今度は両腕を岩巨人の腕に変えてがっちり組み、
さらなる頭上から思いっきり振り下ろす。
ドカッ!
岩の両腕はモロに頭の上に炸裂した!
「きゃっ!」
「わお。やっちゃった!?」
見ている観客たちは頭が潰れているのでは?と逆に心配する。
「何?」
岩の両腕の下ではおっさんが左腕の側面を顔の前に出して防御している。
「ば、馬鹿な! 怪我もしていない!?
本当に……人間なのか!?」
「そう言うお前も半分人間じゃないじゃろ?
その能力、ライズじゃ!
しかも、それはオリジナル・ジェネシス『巨人』の能力!」
「オリジナル・ジェネシス?
は、何のことだよ。
俺はガキの頃から腕や脚が一瞬だけ巨大化する体質だったんだ。
それをキャッスル・ブレインに見つけられ、科学技術庁にスカウトされた。
イイノのように頭が良くて入ったんじゃねぇ。
俺の取り柄はこの力だけよ!
力ではお前に負けねぇ」
こいつはどうやら自分が身につけている破壊力だけを過信しているようだな。
それでは……
「お次は、
……ジャイアント・スイング!」
右腕を巨人に変えて、横殴りだ。
半円を描くようになぎ払って来る。
これでは避けられない。
「ちょっとは頭を使ってきたな!
……わしもちょっとだけ力を使うぞ!
ゴールド・ドラゴン・アーム!」
左腕が輝くドラゴンの腕に変わって行く!
「何だと!?」
ドキャァッ!!
巨人の右腕とドラゴンの左腕が鉢合わせになる!
振動が辺りに響き、衝撃の大きさが伝わる。
「う……うぎぃぃ!!」
堅い!
おっさんの左腕はダイヤモンドのような硬さ!
巨人の右腕でもビクともしない。
いや、逆に巨人の腕の方にカウンターでダメージが入る。
「うわぁぁぁ! い、痛い!
み、右腕が……折れたぁ!!」
「おいおい、ライズ一発しか出しとらんぞ。
そんなにひ弱な巨人とは情けない」
バタバタと痛がるヤマタケ。
「うぬぬぬ……おい、お前たちもかかれ!
イイノにバレたらやばいぞ」
「仕方ないね。ヤマタケだけにやらせちゃ悪いから。
……パンサー・レッグ!」
キザな男、ハヤオカが姿勢を低くした瞬間、両脚が『豹』に!?
こいつもオリジナル・ジェネシスか!
この能力は『獣』……
シュンッ!
「消えた!?
お得意技は高速移動による攻撃か。
……ゴールド・ドラゴン・アイ!」
やはり地上をジグザグに高速で走って目に見えないようにしているのだ。
ドラゴンの腕を鋭く前に突き出す。
ガッ!
移動してるハヤオカの首根っこを強烈な握力で掴んだ。
「あ、いっ痛ーい! 何で!?
目に見えないはずなのにー!?」
空中に浮かせて脚がジタバタと動いている。
「確かに速いが……ただそれだけじゃのー。
それっ!!」
ポイッ!
空高く放り投げる!
「うわぁぁぁ!」
グシャーンッ
「ハヤオカまで……
今度は私が……
鷲の羽根を食らえ!」
鋭い口調の男、ヒビキか!
この男もオリジナル・ジェネシス……
能力は『鳥類』!
両腕を広げると同時に無数の鳥の羽根が鋭く尖って向かってくる!
「ゴールド・ドラゴン・アーマー!」
すかさず胴体を黄金龍の鱗で覆う。
羽根はすべて簡単に跳ね返される。
バラバラバラ……
「ああ……私の羽根が……粉々に……」
「解除!
命中率はいいが……力は無いのう」
「わ、私も……後で怖いから……
行きます……
水鉄砲!」
ドンッ! ドシッ!
気弱な女性、シミズもオリジナル・ジェネシスだった!
右腕が『テッポウウオ』に変わり、水の塊を撃ち出す!
これは『水生生物』の能力!
「ゴールド・ドラゴン・フィンガー!」
カンッ バンッ!
指がドラゴンに変化して水の弾丸をどんどんと弾き落とす。
「……はぁ、はぁ、はぁ」
「もう打ち止めじゃのう。
お前は体力が無いな」
回りを囲いこんでいた4人はドタッと全員力を無くし、尻餅をつく。
「な、何だこいつ、4人がかりでも平気だぞ!?」
「……怪物。怪物級の力だねー」
「あ、あわわ……ごめんなさい。許して……」
「この男……本当に人間か!?」
もう戦意は無い。
ライズ・パワーはまだまだ未熟なようだ。
そう長い時間戦えないし、威力はまるで無い。
「何をしているの!?」
後ろの方で声がする!
「おう、イイノか!」
後を追っかけて来たのか。
イイノが現れ、間に入った。
「イイノ課長!」「あわわ……」「チッ」
「あなたたち、まさかヴェルに何かしたんじゃないでしょうね?」
「いや、私はこの人の正体を知りたくて話を聞いていただけです」
「ああ、僕もそうだよ」
「わ、私は……ヤマタケさんに脅されて……」
「何だよ! お前ら!
そうだよ。こいつをちょっと痛めつけて出て行かせようとしたんだ」
顔をそむけてふて腐れている。
なかなか強情な男だ。
「まぁ、何て事を……
一人を大勢でいじめるなんて……
そんな卑怯なマネは許しません!
正統防衛以外の暴力行為はルールで固く禁止されています」
顔が青くなる4人。
キャッスル・ブレインへの通報を恐れているのだろう。
「まぁまぁ、イイノ。
わしはこの通り、何ともないぞ。
むしろ、こやつらの方に怪我させてしまったんじゃ。
何もなかった事にしてくれないか?」
「私も大きな問題にしたくありませんが……
今後のチームワークに響きます」
「いや、こやつらとは仲良くできそうじゃ。
こやつらも『オリジナル・ジェネシス』の継承者じゃったんだからな」
「えっ? オリジナル・ジェネシス?」
「まだ未熟じゃが、肉体変換能力を発現していた。
鍛えれば強くなりそうじゃ。
今日は訓練と言う事にして、仲直りしてくれないかのう」
4人に手を差し出した。
「あ……はい、喜んで!」
シミズがまず握手して来た。
「君は体力をつける事じゃ。
水生生物のライズは種類が多いからな。
いくつも繰り出せるようにするのじゃ」
「僕も……敵対するつもりはなかったよ。
ただ面白い事をしたかっただけなのさ」
ハヤオカがそそくさと手を握ってくる。
調子のいい男だ。
「君は力をつけた方がいいぞ。
いくら沢山のライズを放ってもパワーがないとな」
「私は君の正体を知りたかっただけなのだ」
ヒビキか。こいつは頭でわからなければ納得しないだろうな。
「わしは外の世界から来た人間じゃ。
君たちと同じ『オリジナル・ジェネシス』の後継者。
能力は『ドラゴン』じゃ!
イイノにはこの能力を研究材料にする変わりに、ここに置いてもらってるのじゃよ。
君たちもオリジナル・ジェネシスなら一緒に研究に加わるといい」
「私たちと一緒……興味深いテーマだ。
このヒューマン・キャッスルの外の世界とは……
なんと言う壮大な話なんだ。
是非、君の力と世界を探求したい」
やっと納得してくれたみたいだ。
固い握手をかわす。
「後は君だね。ヤマタケ君……」
右手を差し出して握手しようとする。
「チッ!」
バシッ!
手は弾き飛ばされた……
「俺はお前より強くなって勝負に勝ってみせる。
外の世界のヤツなんかに負けたくないね」
「相当、強情なヤツじゃのう。
いい性格じゃ。また勝負してやる。
ちゃんと怠けないで訓練するんだな。
意外とこう言うヤツの方が戦いの司令官に向いているんじゃないかな」
「ヴェルがそれでよければ私は言う事ないけど……
皆、これからちゃんと仲良くするのよ?」
「はい」「ああ」「わかった」「ケッ」
取りあえず、この場は丸く収まったな。
4人はすごすごと帰って行く。
「あの4人がオリジナル・ジェネシスの遺伝子を持っているなんて……
内緒にしてたのね」
「10人のオリジナル・ジェネシス継承者。
外の世界には4人、
虫、植物、吸血生物、ドラゴン。
そして宇宙に旅立ったこのヒューマン・キャッスルにも6人いると言う。
鳥類、水生生物、獣、そして巨人……
ヒューマン・キャッスルにはまだ2人いると言う事か……
不死生物と謎の10番目のヤツが……」




